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5、主人公、侍女を紹介される。

 私には国王様が害虫に見えています。サアヤちゃん、負けるな!

 サアヤちゃんが恋愛をする気がないのは、捻くれた作者のせいですね、きっと。

 また国王様が勝手に暴走していますが、その方が書きやすいことに気づきました。どうすればいいのでしょうか……?

 そしてようやく新キャラが登場します!

「今サアヤがいるこの部屋は、サアヤのために用意した部屋なんだ」

「えっ!? この部屋がですか!?」


 わたしは思わず、部屋を見渡してしまいました。

 先ほどまで寝ていた、まるでお姫様が寝るようなベッドが部屋の端っこにあります。部屋全体は青を基調としていて、所々、金で精緻な細工が施されていました。


 また、三階くらいの高さなのか、大きな窓からは、良い景色が見ることができそうです。そこには、遮光のためのレースのカーテンがあり、窓際の台には色とりどりの薔薇の花が、花瓶に飾られていました。周囲にはその花々の香り立つような匂いが漂っています。


 わたしはこの部屋を、重厚感がありつつも、ハイセンスで、女性向けの繊細なお部屋だと思いました。


 ここに住めるって……どこのお嬢さまですか!?

 あっ、そういえば国王様の婚約者になったのでした……。すっかり忘れていました! っていうか婚約者はさっさとやめたいですね。


 と、おもむろに国王様がテーブルの上に載っていた呼び鈴を手に取り、鳴らします。

 辺り一面に涼やかな音が響き渡った途端、


 ――ガッシャーン!!!


 勢いよく窓ガラスを突き破って現れたのは……メイドさんですか!? 窓ガラスを割って入ってくるメイドさんとか、一体どんな映画ですか!?

 そして気がついた時には、そのメイドさんはなぜかわたしの目の前に跪いていました。しゅ、瞬間移動ですか!?


 しかもメイドさんは黒いボーリングの玉を右手に持っています。もしや窓ガラスを割った凶器は、それですか!?

 あれっ!? ボーリングの玉がいつの間にか消えています! 体のどこにそんなスペースがあるのですか!? もしや猫型ロボットなのですか!?


「は~い、どうもです、国王様っ!」


 ふ、不審者です!! 完全に怪しい人です!

 なのに国王様は全く動じた様子もなく、その不審なメイドさんに向かって口を開きました。


「やはりゼアか。首尾はどうだ?」

「上々ですよ~ん」


 ゼアと呼ばれたメイドさんの口調は、全く見た目と釣り合わないものでした。


 そのメイドさんの藍色の髪は、黒の髪留めでまとめられ、ヘッドセットをつけています。

 メイドさんは見た目だけなら、かなり大人っぽい美人な人です。メイドさんの細く切れ長な灰青の瞳は、色気を感じさせます。けれど無邪気な子供のような笑顔を浮かべているので、違和感がすごいです。


 そしてその女性らしいしなやかな肢体は、黒と白のクラシカルなメイド服では隠しきれていません。口を開けなければ、かなり色っぽい人だと思います。

 思わず自分の胸と見比べてしまいました。はぁぁ……。どうせ色気も胸も、あまりありませんよーだ!!! うぇーん!


 あれっ、先ほどのボーリングの玉はもしかして。……とりあえず考えない方がいいみたいです。


 ……でも先ほどのボーリングの玉のこと、窓から割って入ってきたことを考えると、どう見ても普通のメイドさんではなさそうですが……。何だか嫌な予感がします。


「サアヤ、ここにいる間も旅の間も、サアヤの世話をしてくれる侍女が、彼女だよ」


 国王様がそう言うと、メイドさん――いえ、侍女さんがその場で立ち上がり、メイド服の裾を掴みながら、お辞儀をしました。


「初めまして、サアヤ様! アタシこそがテーヌ侯爵家の三女、ゼア・テーヌでーす。アタシのことは、ゼアと呼んでくださいねー。よろしくお願いしまーす」


 侍女さんことゼアさんは、ニコニコと笑っています。けれどあの異常な光景を見てしまった上に、見た目と口調がちぐはぐ過ぎます。唖然(あぜん)としてしまいました。


「では、僕も仕事があるから、そろそろお暇させてもらおうかな。ゼア、後のことはよろしく頼むよ」


 国王様がそう言って、この場を去ろうとします。あのっ、ちょっと待って下さい! 得体のしれない人と二人きりは勘弁して下さい!! っていうか、ちゃんと説明を……。


「もっちろんでーす。どーんとまかせちゃってくださいなー」


 ゼ、ゼアさん、勝手にOKを出さないでください!


「こ、国王様! ちょっと待って下さい」


 わたしは後ろ姿の国王様を手招きしながら声をかけました。


「だからフランシスだってば! 何、サアヤ」


 かなりの至近距離まで国王様が近づいてきました。今回は内緒話をしたかったので、ちょうどいいのですけどね。わたしは小声で国王様に話しかけました。


「訳が分からないので、ゼアさんについての説明をして欲しいのですが」


 正直、どう見ても普通な人には見えないので、本人からは話を聞きたくなかったのです。そう言うと、国王様がかなり嫌そうな顔をしました。


「彼女の生い立ちとか特殊だし、説明してもいいか分からないから、本人に聞いてくれる? それに説明するの、めんどくさい……」


 また国王様がめんどくさいって言いだしました!! もう堪忍袋の緒が切れました。


「本当にそんなので、よく国王様をやれますね!」


 怒りに任せて言葉を言ってしまいました。すると国王様も後ろめたそうに、表情を暗くしながら話しだしました。


「本音を言えば、僕だってなりたくなかったんだよ。でも気づいたら僕しか、先王の王子が残ってなかったから……」


 ……ようやく疑問の一つが解消されました。


「……あ、あの」


 震える声でわたしは国王様に話しかけました。


「うん?」

「すみません、事情も知らずに勝手なことを言ってしまって……。しかもかなりつらそうな内容ですし」


 目を伏せながら国王様に話しかけましたが、なぜか国王様はあっけらからんに話しだします。あれっ、なんだか嫌な予感がしますね。


「全然つらい内容じゃないよ? かつてね、僕を含めて王子は五人いたんだよ」

「えっ? どうして過去形なのですか?」


 不思議に思って国王様に尋ねると、こんな答えが返ってきました。


「実は一番上の兄は女好きで、手を出したらいけない人に手を出して国外追放になったんだ。二番目の兄は不正を行っちゃって、今は修道院にいるよ。でもって三番目の兄は暴力事件を起こしちゃって、牢屋行き」


 この国、ろくでもない王子ばっかりじゃないですか! どうなっているのですか!?


「そして僕の一つ下の弟は体が弱くて、とても国王にはなれそうもなくてね。そんな訳で、ただの消去法で国王になっちゃっただけ」


 消去法で国王とか、今まで聞いたことがないのですけど!?


「まぁでもそんな不祥事、他国はおろか国民すら知らない訳だ。そんな訳で……」


 ま、まさか……。


「王妃決定だね!」

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ――外堀、完全に埋められました!!


 新キャラ、ゼアもかなり癖がありそうなキャラクターです。

 国王様が言っていたように、彼女の経歴は特殊だったりします。

 次話でその話ができるといいのですが……。


 基本的にこの話は変人じゃないと、話が進まないようです……。


2013/08/22 誤字訂正・若干加筆

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