2、主人公、国王様に利用される。
前回は展開を早めた上に流れを若干変更したので、流れの変更があります。あと、前よりだいぶ糖度が上がっています。国王様、フレンドリーになりすぎですし、好き勝手しすぎです。
「はっ、ここは!?」
わたしは天蓋つきのベッドの上で目を覚ましました。
寝ている間に肌触りがすごくよい、白い寝巻に着替えさせられたみたいです。ナイトドレス、とかいう類のものでしょうか?
ベッドはクイーンサイズなのでしょうか? めちゃくちゃ大きいです!! しかもふっかふか。
青と白を基調としており、レースがふんだんに使われた、とても可愛いデザインです。ベット本体は所々に金で精緻なデザインがあしらわれています。
これ、いくらするんでしょうか?
恐ろしくなってきました……。
「あっ、やっと気がついたね。君、三時間くらい寝てたよ」
わたしが反射的に声のした方を振り返ると、なぜか国王様が立っていました。
わたしは寝巻姿だったことを思い出し、急いで近くにあった赤いガウンを着こみ、前を合わせます。
「あれ……口調が」
不意に気になったので国王様に尋ねると、こんな答えが返って来ました。
「ああ、あの口調は王様の時だけだよ。今はプライベートだから、この口調なんだ。あんな堅苦しい言葉づかいじゃ、話しづらいでしょ?」
――目からイケメンビーム!!
この人といると心臓が持ちそうにありません!
わたしはとりあえずベットから起きて、近くにあったルームシューズを履いてから立ち上がりました。
周囲を見渡すと、部屋自体も青と白を基調としたものすごく広くて高そうな部屋ですね。視線を国王様に戻すと、国王様はわたしの顔をみつめていました。
「……それにしてもよく寝てたなぁ」
国王様は意地悪そうな笑みを浮かべて笑います。
「わ、悪いですか!」
むっとして、思わず私の口からそんな言葉が漏れ出しました。わたしがはっとして口元を押さえると、王様はそれを見て噴き出します。
「いや……むしろうらやましいよ」
眦に涙を浮かべつつ、お腹をかかえて国王様は笑います。……失礼な人ですね!!
「どこか痛い所はない?」
「ないみたいです」
今の所、特に痛いと感じる部分はありませんね。
「それならよかった。ところで君の名前を教えて欲しいんだけど……教えてくれるかな?」
あっ、そういえば名乗っていませんでしたね。国王様相手に、明らかに失礼ですね。
「わたしは……シノハラ サアヤと申します」
いつも通りに名乗ると、国王様に不思議な顔をされました。
あれっ、今の言葉に何かおかしな点があったでしょうか?
「シノハラ? 変わった名前だね」
あっ! そういうことですか!
「あっ、いえ! シノハラは名字で、名前がサアヤです」
あたふたしながら説明を加えると、国王様はまた笑みを浮かべました。
「そうなんだ! じゃあサアヤと呼ばせてもらおうかな。僕のことはフランシスって呼び捨てにしてね」
国王様に爆弾を落とされました。
「ええっ!? 国王様を呼び捨てにするとか……無理です!!」
わたしがそう言うと、国王様が拗ねた顔をしました。
「ええ~ケチ」
国王様は子どもなんですか!? 子どもなんですね!?
「ケチとかそういう問題じゃありません! わたしが不敬罪で処刑されたらどうしてくれるのですかっ!」
わたしがそう言うと、国王様はわたしの体を抱きよせて、わたしの耳元で低い声で囁きました。
「二人きりの時だけでいいから……ダメ?」
わたしはその声を聞いて、腰が抜けかけましたが、とっさに国王様が体を支えてくれました。そして、近くにあった長ソファーに私を座らせて、なぜか国王様はそんなわたしの真横に座ります。目の前には立派な樫の木で作られた、テーブルまであります。
どうして隣に座るのですか!? 反対側のソファーに座って下さいよ!!
現実逃避をするために、ソファーを観察します。重厚な青いビロード張りのソファーもベットと同じようにすごくふかふかで、体が深く沈みこんでしまいます。このソファーもベットと同じく、所々に金で細かい意匠が施されていました。
「ところでサアヤは、今は僕の婚約者になっているからね?」
「えぇ~ご冗談を言わないで下さいよ、国王様」
この時、わたしはそれをタチの悪い冗談だとしか思えませんでした。
まさかそんなことを本当にしているとは、思えなかったのです。
「フランシスだってば。そもそも君、倒れた後の記憶がないでしょ?」
国王様にそう言われて思い返してみますが、もちろん意識がなかったので、全く記憶がありません。
「そういえばあの後、何があったのですか?」
わたしはそれを訊ねてから、なんだか嫌な予感がしてきました。ま、まさか!?
「実はね、倒れかけた君をお姫様だっこして、あそこにいた人たちの前で婚約者にするって言っちゃった!」
「……」
えっ? 今この男、なんて言いましたか?
聞 こ え な い。
というか聞かなかったことにして下さい!
でもそんなことにできるはずもなく。
国王様はソファーから立ち上がりました。そしてテーブルとソファーの間で、わたしの目の前に跪きました。国王様は流れるような動作でわたしの左手を取り、そこに口づけを落としました。
「そんな訳で、婚約者になってください」
非日常的な空間という意味では、シチュエーションは完璧です。それに見た目は王子ですよ。ええっ、もちろん惚れそうなぐらいカッコいいですよ。でも……でも……。
「そんなもん、なれるわけがないでしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
――もう、頭が痛いです。
国王様のせいで全く話が進みませんね。
サアヤ側からしたら、恋愛の方はむしろマイナスの方に振り切れています。あ~あ、やらかしたな国王様。
2013/08/22 誤字訂正、若干加筆