表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

伊勢の踊り子

作者: 柿原 凛

 重たいまぶたをそっと開くと、そこは伊勢海(異世界)であった。。

 なぜここが伊勢海だと分かったのか。それは、目の前に可愛らしいグロテスクな大きいエビがいるからだ。

 こんなに大きな海老は伊勢海老に違いない。端的に言うとそういうことだ。

 そして、こちらをじっと見つめている。伊勢海老が。俺の目に穴が空くほど。こちらをじっと見つめている。

 これはきっと恋である。

 いや、間違いなく恋だ。でなければこんなに赤面しているはずがない。

 しかし俺は人間。人間と伊勢海老の恋なんて聞いたことがない。

 だが俺は愛す。全力で愛してみせる。食べちゃいたいほど好きだ。

 俺はそっと抱き寄せ、柔らかく包み込んだ。そしてぎゅっと抱きしめた。捻り上げるほど抱きしめた。

 殻がビキビキ鳴りながら剥がれていく。中から、それはそれは綺麗な、綺麗という言葉が似合う真っ白なお肌をのぞかせた。

 軟な皮を剥ぎ、ついついその光り輝くお肌に甘噛みした。

 するとどうだろう、口の中でじゅわぁっと甘みが押し寄せてきたとともにすっと身が溶けた。

 ああ僕の愛しの伊勢海老よ、いずこへ行ってしまわれたのだ。

 そのしなやかな身のこなしはまるで踊り子のようだった。

 殻だけを残して、愛しの伊勢海老は姿を消した。

 俺を包む潮の香とさざなみの心地良いリズムが、耳の中でただただ寂しく響いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界と伊勢海をかけているのですか! 比喩が面白いですね。 [一言] 地元民ですが、伊勢の海を伊勢海と呼んだ事がないので少し違和感を感じたのですが……、 へー、伊勢湾って伊勢海とも言うんで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ