魔法少女は今日も悪の組織の戦闘員からエナジードレインします。
サキュバス魔法少女。正義の味方でもやっぱりサキュバス
私はサキュア・ホワイト。
最近までどこにでもいる普通の女の子だったんだけど、ある時突然にニンゲン界の悪の組織が魔界に攻め込んできて、クラスメイトで親友のサキュア・ブラックと一緒に魔法少女として覚醒したんだ。
今は学生をしながら悪の組織の悪だくみを止める活動をしてるの。
「ホワイトちゃん、最近は組織の侵攻が激しいですわね」
「そうね、ブラック。よっぽど私達の世界が魅力的なんだろうね」
「大変だ! また悪の組織が街を襲ってきたぞ!」
放課後、カフェのテラスで私達がぼやいていると、大勢の人が走って逃げていく。
私は少しため息をつくと立ち上がった。
「全く、懲りないわね! 休憩する暇もないじゃない! いくわよブラック!」
「はい!」
☆
「あ~疲れましたわ、無事悪の組織は撃退できたし、戦闘員の捕虜もたくさん生け捕りにできましたわね」
「自分達の世界が退廃したからって魔界に侵攻してくるなんて。そういう発想だから自分達の世界をダメにしちゃうのよ」
「素直に助けてって頼んでくるなら、どうにかなったように思うんですが……」
「あんな野蛮な奴らにそんな発想はないわよ。それに助けたら助けたでいつ恩を仇で返されるかわかったもんじゃないわ。その意味では敵として攻めてきてくれてありがたいくらいよ」
「まあまあ、そんなこと言わないで。 さあ、今日も使ったエナジーを補給しに行きましょう」
「そうね、そのためにいっぱい生け捕りにしたんだもんね」
私達魔法少女は、覚醒した対価として大量のエネルギーをニンゲンから補給する必要がある。
だから、いつも悪の組織の戦闘員を捕まえて直接吸い取ってるってわけ。
捕まえた捕虜は、政府が用意してくれた捕虜収容所で管理して、いつでもエナジードレインできるようにしてある。
「さーて、戦闘員く~ん、搾り殺される覚悟はできてるかな~?」
私は施設の一角にある捕虜収容所を覗きこむと、鉄格子の向こうの身ぐるみを剥がれた捕虜たちが隅っこに片寄って震えてるのが見えた。
「ひ、ひいいいっ! た、助けて……!」
「泣いちゃってますわね。ホワイトちゃん、あまり怖がらせてはかわいそうですわ」
「え? こいつらニンゲンだよ。ニンゲンみたいな悪い奴のなにがかわいそうなの?」
「戦闘員はあちら側でも使い捨てにされる運命なんですから、少しは同情してあげてもいいと思います。それにニンゲンみんなが悪いってわけでもないんじゃないでしょうか?」
ブラックは魔法少女になる前から優等生タイプで誰にでも優しく気配りのできる子だ。
彼女は親友でそういう他人想いなところは好きだが、ときどき教科書通りのことを言ってくるのは少し苦手だ。
「はいはい、優等生のご高説はしかと承りましたよ。どうせ最後には搾り殺すのは一緒なのに……。ねえ? あんたはどう思う?」
私は檻から適当に引きずり出した捕虜に聞いてみる。
「ひっ……、こ、殺さないで……」
「そう言われてもねえ、私達だってエネルギー吸い取らないと活動できないし、諦めなさい。あんたらニンゲンが攻めてくるから悪いのよ? さてそれじゃあいただきま~す」
正直な話、私だってかわいそうだと思わないではない。
でも、これも魔法少女として活動し、世界を守るために必要なことだ。
それに、ニンゲンを直接搾り取るエナジードレインは信じられないほどの快楽をもたらしてくれる。
一度経験してしまうとやみつきになり、ニンゲンがかわいそうなんて感情はどこかに吹き飛んでしまう。
エナジードレインは私達魔法少女だけに許された特権だ。
100年前、ニンゲンを捕獲してエナジードレインすることは法律で禁止されたからだ。
禁止された理由は学校で習った気もするが、適当に聞いてたのでよく覚えてない。
でも、実際やってみるとわかる。
これが一般市民に許されると絶対に今の秩序は崩壊する。
エナジードレインは快楽のために魔界を破滅に追い込むんだ。
そう、だからこれを体験していいのは私達魔法少女だけ……。
戦闘員は最初は抵抗するが、ドレイン用ベッドに引き倒し、私がのしかかるとすぐに抵抗が弱くなり、情けなく絶望的なうめき声を上げる。
私が体を揺さぶると体の下で命が溶けていくのがわかる。
同時に私が満たされていく感覚が全身を駆け巡る。
美味しい。
口で飲むわけじゃないから味覚が刺激されるわけではない。
味もないし、匂いもない。
でもわかる。
これは『美味しい』のだと、私の中の私が語りかけてくる。
飲み込むときの快楽は、暑いときに飲む冷たいジュースののど越しによく似ている。
だがその快楽はジュースの比じゃない。
「ああ、美味しい……。アンタだって『美味しい』でしょ?」
サキュバスは本来はニンゲンを搾り殺すために存在するらしい。
サキュバスの目的はニンゲンを搾り殺すこと、ニンゲンの目的は私達に搾り殺されること。
だから、私達も彼らも『美味しい』のだ。
今うめいているこの戦闘員だって、表情こそ苦痛に歪んでいるが、瞳の奥底は悦びに彩られている。
私達は捕食し、捕食されるWin-Winの関係にあるんだ。
「社会を手に入れた私達は、その代償としてこの『美味しさ』を忘れてたんだね、ブラック」
魔法少女だけがその甘美な世界に触れることができる。
「ホワイトちゃん、それは少し違いますよ。先人達はこれが社会を滅ぼす危険な行為だとよく理解していました。だからこそ自戒のために、これを禁忌として封印したんです」
「あれ、そうだっけ?」
「もう……、授業をちゃんと聞いてないから……。私達もあまり調子に乗らず、正義の志と理性をしっかり持って搾らないといけませんよ。そう、これは魔法少女の高貴な義務なんですから……」
ブラックは私を諭しつつも、弱々しく命乞いする戦闘員の上で体を弾ませる。
優しく、獲物を気遣いながら……。
その恍惚とした表情は暗い高揚感で満たされていた。
表情を歪めブラックを見上げる戦闘員の目から光が失われていく。
その様子を見ているだけで私も幸福感で満たされていく。
敵の侵攻が激しくなれば覚醒するサキュバスがもっとたくさん現れると言われている。
世間ではそれを、我々の優れた防衛反応によるものだと言っている。
でも私の考えは違う。
私達は危機を目前にして覚醒したのではなく、お預けをされていた獲物を目の当たりにして本能に目覚めただけなのではないか。
もし魔法少女の覚醒が続くのなら、いっそ逆にニンゲン界へ侵攻してしまったらどうだろう。
今後増える可能性のある魔法少女のエナジー源を確保するためにはちょうどいいと思う。
時々知らない間に実験台の名目で捕虜の数が減っていることがある。
興味本位につまみ食いする政府関係者がいるのだと思う。
みんな私達が美味しそうにエナジードレインしているのを見て本能が目覚め始めてるんだ。
正義の私達がニンゲン界に侵攻したって、暴力で統治するようなことは決してない。
むしろ退廃したあちらの世界を私達の科学技術で立て直せるかもしれないし、再びダメにならないようニンゲンに代わってサキュバスがしっかり管理してあげればいい。
そして、その対価として若いニンゲンにエナジーを差し出させるのがいいと思う。
種族・世界を越えたWin-Winの関係が実現できる。
ふと目を落とすと、戦闘員はいつの間にか冷たく干からびていた。
「あ〜美味しかったぁ、おかわり」
私は、干からびた戦闘員を足蹴りにしてベッドから蹴落とすと檻に目をやった。
エナジードレインの一部始終を見て青ざめた檻の中の一人と目が合う。
「さあ、次はあんたの番よ。他の人達も心配しなくてもいいよ。どうせすぐ順番は回ってくるからね……」
目の合った戦闘員は、表情こそ絶望的だが、呼吸は浅く顔が紅潮している。
期待をにじませているのがはっきりとわかった。
これが本来あるべきサキュバスとニンゲンの関係なのだ。
檻の中のニンゲンはサキュバスに搾られるために生まれてきたのだ。
2つの世界で幸福が実現する日は近い。




