死刑機コヅカバラ
モチーフよりも優秀な人型ロボットが、誰からも疎ましく思われることなく活躍できるようになったのは刑場だった。
場所は日本の某所。
コヅカバラと呼ばれる死刑機は、左手で死刑囚を力強く握り、刑場に向かって歩いていた。
人の頭に該当する部分にはカメラとスピーカーが付いており、スピーカーからは穏やかな曲が流れていた。
頭を袋で覆われて、両足にワイヤーを巻かれた死刑囚は黙っていた。
刑場に到着すると、コヅカバラは死刑囚を優しく降ろして袋を取った。
コンクリートの刑場にはコヅカバラと死刑囚の他に、至るところに処刑を記録するカメラが設置されていた。
死刑囚は前日の内に、処刑の流れを聞いている。
コヅカバラのランプが緑色から黄色へと切り替わる。
執行前に死刑囚が言葉を遺す最期の機会だった。
「…」
コヅカバラは言葉を発しない。
死刑とはここまで不気味なものなのかと、死刑囚は恐れた。
「お、俺は──」
懺悔か呪詛か、何か言いかけたその時だった。
コヅカバラのランプが赤色に。これは死刑執行を表す合図である。
ここに来るまでのように、コヅカバラは左手で死刑囚を掴む。力はそれまでの倍近くあり、持ち上げる動作の間に骨や臓器を潰していた。
「うべぇ!」
死刑囚は子どもを殺した。鈍器で頭を殴り潰した。それならば、それ相応の罰を受けるべきだ。
コヅカバラは右手の人差し指を立て、まずは一発と死刑囚の頭を突いた。
死刑囚は脳震盪を起こした。
二発目、死刑囚の頭蓋骨が割れ、頭の穴という穴から血をはじめとした体液が噴出した。
「がは」
そして三発目、コヅカバラが力強く突くと、死刑囚の首が千切れて、頭がコンクリートの壁に激突した。
「大渡和木死刑囚への執行が完了しました」
コヅカバラは複数台あるカメラの内、最もレンズが大きな物に報告すると、頭部が失くなった死刑囚の体を放り投げた。
死刑を執行するロボットは死刑囚と会話をしない。
社会の屑に言葉を交わす必要はない。孤独の中で、絶望に近い感情を抱かせて死なせてやろうという、被害者や遺族への配慮でもあった。
「コヅカバラ。被害者遺族から追加の依頼だ。そいつの頭を1番カメラの前で握り潰せ」
「承りました」
コヅカバラの胸元から、何者かの指示が流れる。
言われるがまま、遠くに飛ばした頭部を回収。1番カメラと呼ばれた、投げた体が横たわる場所までやって来て、死刑囚の頭部を近付けた。
「そうだその位置だ。やれ」
コヅカバラは男の頭部を握り潰した。
「よくやったコヅカバラ。遺族は大変お喜びだ」
「絶対悪を裁く。それが私に与えられた役割です」
「そうだ、人を殺すことはいけないことだ。だから機械に押し付けた…人間ってのは愚かだなぁ」
「申し訳ありません。情報不足により言葉の意味が理解できません」
「気にするな。次は1時間後、準備室に戻れ」
「承りました。次回もよろしくお願いいたします」
コヅカバラが部屋から出ていった。
カメラが停止すると、壁に紛れたコンクリートの扉が開いた。
そこから入ってきた人間は死体の回収や清掃を行った。
成人に限り、死刑機によって執り行われた死刑の映像を特設のサイトで閲覧できる。それを見て、悪を許さんと強く正義を滾らせるか、こうはなりたくないと身の程を弁えるかは自由だ。




