不死身の再生力を持った俺は泥試合に持ち込んで勝負に勝ちます
こんにちは、こんばんは
こちらは前日譚みたいなものです
後ほど連載が始まります。是非併せて読んでくれると嬉しいな
俺の名前は九条カイト。どこにでもいる高校生だ。見た目は普通、身体能力も平々凡々ってところだ。実践向けの魔法は大して使えないから戦闘力は学校の中だと中の上くらいしかないだろう。
だが俺には他の人とははっきりと違うところがある。
魔力、俺が持つ魔力は同級生や先輩たちのそれとはまるで違う。大抵が炎や氷などの四大属性を持つ中で、俺だけは本当に異質だ。
不死身の再生力、それが俺の持つ天から与えられた力だ。剣で切られても、体を燃やされても、それまで体にあった傷は一瞬のうちに再生する。痛覚は普通にあるのが欠点だが、どれだけ消耗しても再生するのが強みだろう。というか無敵といっていい。
というわけで今日は俺が高校生になる日、入学式の日だ。
中学生の時は不死身の力を上手く使いこなせず最底辺の烙印を押されていたが、今の俺は違う。卒業間近にして泥試合の単語を覚えたんだ。どんなに強い相手だろうと精神力で押し切ってやる。
王立第七魔法学院。名前に王立とあるが、これはあくまで敬称みたいなものだ。この国に王様はいないから、大方魔法の王様とかが作った学院、という意味が込められているのだろう。
それにしてもさっきからビリビリとした気配を感じる。緊張、といったところか。まあ無理もない。中学生の時みたいに最底辺の烙印を押されたらとんでもないことになるって噂を何度も聞いている。母さんに迷惑かけるわけにはいかないし、頑張っていきたい。
「悲鳴……!」
遠くから悲鳴と爆音が聞こえる。急いで窓から身を乗り出して目を凝らした。音の方向からはもくもくと煙があがっている。黒い煙が無数の家を飲み込み、硫黄のような臭いが鼻を刺す。
「ふっふっふっ……我が力に屈しろ人間ども!」
魔族。それは人間よりも強い上位存在だ。魔力も、身体能力も、ありとあらゆる点において人類のそれを上回る。
その存在が今、目の前で暴れていた。
「貴様ら愚民どもはこのシェルナ様の奴隷となるのだ!」
シェルナと名乗る魔族は女だ。サラサラの銀髪、黒の仮面で顔を隠し、手には鞭がある。背中からは魔族特有の禍々しい翼が生えている。見た感じ、最低でも中位レベルはありそうだ。
「紅の薔薇!」
さっき建物を焼き払った魔法はきっとこれだ。凄まじい火力で並大抵の生物なら骨の髄まで燃やし尽くされるだろう。正直、ここで体力を使うのは得策ではない。自分から首を突っ込んでおいてなんだが、都市からすぐ警備隊が飛んできて殲滅してくれるはずだ。
わざわざ俺が出る幕ではない。
「ままあああ!」
「くっ……」
子供、しかもシェルナが気づいたようだ。手から炎の魔法陣を出して構えている。
「まだ生き残りがいたか。ガキには興味が無い」
間に合え。
「死ね」
間に合ってくれ。
「!」
全く、俺はなんて馬鹿なんだ。
「人間、貴様は私と戦う気か?」
「通学しなくちゃいけないんでね」
「私を奈落教団の幹部と知っての発言か?」
「奈落教団?初耳だね。ちっぽけな組織で幹部を名乗って、貴族気分にでも浸ってるつもりか?」
よし、子供は逃げたようだな。俺はどう逃げるかだが……逆鱗に触れるどころか鱗を一枚一枚剥がしてしまったようだな。めちゃくちゃに怒っている。
「人間のくせに舐めた口を──」
熱い!体が燃えるように熱い!というか燃えてる!死のうにも死ねないからずっと燃えて焦げてる!
「ふっ、所詮人間か」
俺は膝から崩れ落ちた。全身が焼け焦げて炭になり、体に悪そうな煙をもうもうと吹き出しながら膝をついた。
「おい……待てよ……」
俺はなんとか立ち上がり、全回復の状態で殴り掛かる。
シェルナは驚いた様子で俺の顔を見る。歯を食いしばるとほとんどゼロ距離でさっきの光弾を放った。
今度は体に大穴が空いた。犬がジャンプして通り抜けられるくらいの大きさの風穴が胴体に空く。もはや痛みなんてなかったし、寧ろ体が軽くなったから俊敏に動けそうだ。
「まさか、お前も魔族か!」
「違う!俺はただの男子高校生だ!」
男女平等パンチ。とは名ばかりの普通のパンチだが、奇襲性能もあってか効果は結構ある。魔族は大抵が魔力頼りで、素の耐久力はそれほどでもないとよく聞く。体が硬いとはよく言われるが、それは魔力を纏っているからであって、こういった不意打ちの時には効くはずだ。常時魔力を纏うなんて流石の魔族だろうと易々と出来る芸当じゃない。
「くっ、私に攻撃を加えたか……しかし所詮その程度か。二度同じ手は喰らわんぞ」
「魔力で全身を覆うのか?」
「短期決戦で殺してやる。私を殴ったやつなんて数年ぶりだから、出来ればいたぶってやりたかったが生憎立て込んでいる。天使の抱擁!」
黒い翼が赤い炎を纏いながら俺の体を掴んでくる。体が炭化して動きが鈍くなっていく。
「ぐわあああ!」
何度経験しても痛みには慣れない。叫び声は途中で切れた。喉まで焼かれてもはや機能しなくなったのだ。
「私の天使の抱擁を喰らってもまだ生きているか……貴様、その生命力は一体なんなんだ?」
「いいぜ……冥土の土産に教えてやるよ。俺の魔力は不死身の再生力。お前がいくら攻撃しようと俺は再生する。無限にだ」
シェルナが拳を突き刺そうと突進してくる。
「無限に再生するなら吸収してやるわ!」
「ぐ……はっ」
土手っ腹に突き刺さり、どんどん体力を吸収されていく。全身の節々から血液を抜かれているような感覚だ。体が段々とやせ細っていく。
「なにっ……!」
「俺の再生力は……それはもう恐ろしいものよ。刺さった矢ごと再生しちまうくらいにはな。だから毎回毎回痛えんだよ!」
俺の体内に埋まった手首を掴むと、手刀を何度も振り下ろす。例え鉄だったとしても一億回叩けば素手でも壊せる。奴が手を抜こうとすれば体内でズタズタになった肉が絡みついてもっと抜けなくなる。
「その……奈落教団ってのは強いのか?もっと楽しませてくれるんだろうな?」
「離せ!この化け物めが!」
気にせず手刀を振り下ろす。大体百回くらい振り下ろしたところで急に相手の腕が柔らかくなった。全身を覆う魔力が解除されたんだ。
「魔力が──くそっ、離せってんだよ!」
「死ねえええ!!」
骨は砕け、内出血でうっすら青くなった腕を叩き切った。生身が鉄に勝った瞬間だ。
「この、化け物が!私がお前に何をしたっていうんだ!」
「別にお前の家族に手を出したわけでも、家を破壊したわけでもない!過去に会ったことなんてないし、不快なことがあったら謝る!だから逃がしてくれ!」
「お前が俺に何をしたか……って?」
傷が塞がり、腕を完全に取り込んだ。こっちの腕もボロボロだったが既に再生は終わったようだ。
「────何も」
シェルナの顔から血の気が引いていく。元々具合の悪そうな顔だったが。
「入学初日だってのに時間取らせやがって……今のうちに神にでも祈っとくんだな、その……奈落教団の教祖とかいうやつにな」
「あ、あ、アゼル様アアア!!」
2時間後……。
「なんて激闘の跡なんだ……血が洪水みたいに溢れてやがる」
「あそこだ!魔族がいたぞ!」
俺の服はほとんど布切れになるまで小さくなったので荷馬車の上にかかっているあの布で全身を覆った。丁度人もいなかったので簡単に頂戴することが出来たのだ。おまけにリンゴを二つほどもらってきたが、まあ魔族の討伐報酬としてこれくらいは許してもらおう。
激闘だったのに人が来ないのはなぜか、そういえば今日は入学式だから大抵の警備はそっちに回されてるんだった。杜撰な警備体制だな。学院以外はどうでもいいってか。
「君、大丈夫か?」
「俺ですか?ちょっと服が無くなったので……」
「そうか!ならこれを着るといい。万が一に備えて予備の服を持ち歩いているんだ」
「いやどんな備えだよ」
この制服、王立第七魔法学院のものと同じだ。目の前の彼らもそこに在籍しているのだろうか。
「魔法学院の先輩ですか?」
「三年の白鷺トウマだ!君は新入生か?」
「はい、九条カイトです」
じゃ!




