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8話:あ、あれーーーーーー!?

 




「ただいま戻りましたー!」


「ぜぇっ……ぜぇっ……」


 にこにこ笑顔のサラと死に体のクロムが帰ってきた。

 振り回されたんだろうなぁ……


「おー、おかえり」


「おかえりなさい」


 俺達ダメな大人は2人でまだまだ飲んでいた。


「はい!ちゃんと薬草集められました!」


 ずいっ、と薬草を前に突き出された。

 この子あれだ。マンガとかで見る幼い頃は野山駆け回る系のヒロインだな。これがあれになるとはなぁ……としみじみ頷く。

 お前はあんな風になるんじゃないぞ、とまた頭を撫でる。主犯元々の俺だけど。


「なんですか?」


「初クエスト達成おめでとう」


「!! ……はい!」


「あの、大丈夫ですか?」


「な、なんとか……」


 俺がサラと話している間に、アマネはぐったりしたクロムが哀れだったのか声を掛けていた。

 情けねぇなぁ。


「初達成祝いに飯奢ってやっから、好きなもん頼みな」


「いいんですか?」


「いいんだ。素直に祝われろ」


「やったぁ! クロム、行こ!」


「ワ──!」


 泣きそうな顔で襟首を掴まれて引き摺られていった。


「懐かしいな」


「主様にもああいった時期が?」


「そりゃあ、俺だって人だからな。未熟だった時期くらいある。お前だってあるだろ?」


「冒険者として転々とし始めたのは最近なものですから。私はあまり。ですが、修行時代を思い出しますね」


「へぇ、修行っつーと竹を毎日飛び越えたりとか?」


「……もう聞きませんからね。まあ、概ねそんな感じです」


 これについちゃちょこっと聞いた事ある程度だけどな。忍者とか、現代基準で考えりゃ身体能力オバケだし。


「ただいま戻りましたっ!」


 パタパタと楽しげな足音を響かせてサラが帰ってきた。……大丈夫か?クロム、死んでない?

 嬉しそうに俺の隣に座ると、クロムがアマネの隣に座った。


「なんだか冒険者みたいですねっ」


「おいおい、ちゃんと冒険者だろ?」


「あっ……そ、そうでした……」


 まだ冒険者である認識が薄いのかそんな事を言う。なるほど、職業体験に来た中学生みたいなもんか。俺も昔行った時にはテンション上がってた覚えがある。


「飯おまち〜」


 ライムがやってきて料理をずらりと並べる。


「わぁっ!」


「ほら、食え食え。遠慮すんな」


「そうそう、遠慮したって腹は膨れないっすからね〜」


 ひらひらと手を振ってライムが戻って行った。


「いただきますっ」


「腹減ったー……いただきまーす」


 2人して鶏の唐揚げ。つってもこの世界基準の唐揚げだが、それに齧り付くとパリッ、とした音がした。

 しばらくもぐもぐと口を動かして飲み込めば、2人が互いに目を見合せた。


「美味しいっ!」


「美味いっ!」


 口いっぱいに頬張りながら食事を進める。


「お前らな……昨日何食ったんだよ」


「んっく、あはは……お金が勿体無いと思って、2人でパンだけ……」


「あんまり無駄遣いもできないもんな」


「なーるほど……たくさん食えよ」


「「はーい!」」


 一心不乱に食べる2人を微笑ましげに見ていると、リック達がやってきた。


「ゼニスさん、アマネ」


「よう、リック。随分と大荷物だな」


「ああ、それはまた後で。まずはアマネ。パーティ結成おめでとう。ゼニスさんと組めるなんて正直羨ましいよ」


「あ、ありがとうございます……」


「それにドレイクとタイラントスパイダーを討伐したらしいな」


「あ、いえ、タイラントスパイダーは寧ろ足を引っ張ったと言いますか……」


「そ、そうなのか?んんっ、けど、ドレイクは討伐出来たんだろ?十分凄いさ」


「悔しいけど、私たちがまだ勝てないものね……」


「俺の盾じゃ到底防げないからな……」


「今更欲しいって言っても返してやんねぇかんな。こいつは俺のもんだ」


「あ、主様……!」


 あれ、なんでそんな妙に感激してんの……?


「あ、それは別に構いませんよ。寧ろ元パーティであった事を誇ってますから」


 あ、あれーーーーー!?

 お、おかしい。俺の想像では悔しさに手を握りしめると思ったんだが? BSPぼくがさきにパーティをくんでいたのにじゃないのか!?


「俺達は自分達の未熟さが身に染みました。だから、これから遠征に行って鍛え直そうと思います」


「そ、そうか……いいんじゃないか?」


 想定と違う……お、俺の計画は、素晴らしい計画が……もしかして俺って──NTRの才能ないのか!? くそぅ! そんなもん知りたくなかった! いや、NTR嫌いだから良いといえばいいんだが、それはそれとしてやってみたさはあったからこんな事をした訳で──


「それじゃ、俺達はこれで。次にあった時は強くなった姿を見せますね! 君達も頑張ってね!」


「じゃあねー」


「さらばだ」


「お達者で!」


「頑張ってくださーい!」


「頑張りまーす!」


 ──いやいや、まだだ。きっとまだどこかに計画を、いやさ、プランを考える余地はこれからいくらでもあるんだからなんとでもなるはずだって


「主様主様」


「ん……ん? なんだ?」


「もう行きましたよ?」


「あ、あー……まあ、あいつらなら上手くやるさ。元仲間だったんなら信じてやりな」


「そうですね。私も負けないように研鑽を積まなければ……!」


 他のみんなが気持ちを新たにしている所で、俺だけはどこか釈然としない気持ちを抱えていた。





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