5話:ちゃんとエロゲ要素あるんだよな……
「このっ、離せ!!」
アマネが逃げようと必死にもがくが糸が離れず、寧ろ余計に絡まるだけだった。
ふーむ、しかしあれだな。やっぱこの世界エロゲだわ。
「ほーう……」
アマネの今の姿は大の字で巣に貼り付けられた上でなぜか忍装束の裾がめくれ上がっていた。
アマネの忍装束はアニメやマンガでよく見るような下を履いてないように見えるやつだった、それがめくれているという事はつまり──
「白、か」
下着が見えるということだ。褌には見えないから普通の下着かな?
しかし、黒の方が良いんじゃないか? 深い意味はないが、隠密性を上げるならそっちの方が良いと思っただけだ。だ・ん・じ・て! 黒の方が似合っててエロいと思った訳では無いんだぞ!!
「み、見てないで助けてくださぁーい!!」
「はっ!!」
おっと、急いで助けなきゃな。
だってあの蜘蛛、タイラントスパイダーの唾液は──
「と、溶けてるぅ! 溶けてます〜!?」
「安心しろ! 服だけだ!」
「安心できませーん!?」
そう、服だけ溶かすなんともエロゲに都合の良い唾液なんだ。
ゲーム内で出てきた時は防御力を下げてきていたんだが、まさか服や鎧を溶かす事で防御力を下げていたとはな……
とはいえあいつもドレイクと同じ3等級。1等級の俺からすれば問題なく狩れる
「シャッ!」
タイラントスパイダーがアマネを捕まえた時と同じく糸を吐き出す。
対処する為に普通に剣で振り払えば粘着性のある糸が絡みついて面倒な事になる。ならどうするかっていうと、まず剣に炎を纏わせます。後は振るだけの簡単なお仕事。
糸を斬り裂くと、そこから炎が伝搬してタイラントスパイダーへと向かっていく。しかし、炎が迫る事に気付いて糸を切った。
「う〜ん、早く助けないと産みつけられるんだがなぁ……」
「……え? 今産みつけられるって言いました!? 言いましたよね!?」
「まあまあ、落ち着けって。忍なる者、常に落ち着いてなければって言うだろ?」
「あの、極東ってあんまり知られてない上に忍って裏方で表に出ないんですけど、忍が何たる者がよくわかっているんですね……」
「……余計な詮索される前にいっちょここらで軽く壊れてもらうのも手か」
「あ!? 待って! ごめんなさい! たすけてくださーい!」
「やれやれ……」
随分とポンコツだな。原作でアマネが出たのはは今より時間軸としては先とはいえ、ポンコツ過ぎないか? いや、まあ、未来でそれだけの事があったのは知ってるけどさ。
彼女になにがあったかは単純明快だ。何度も騙されて擦り切れた所をクロムに出会い、そしてNTRれた。
いや、うん、文章にするとマジでこんなもんよ。エロゲなんてそんなもん。まあ、NTRっつーか、ぶっ壊されて可愛い可愛い愛玩人形にさせられたってのが正しいか。
クロムに出会った時点で抜き身の刃のようだった少女が昔はこんなにポンコツだとは思わなかった。
ゲームで描写されていない所をこの目にすると、この世界で生きているんだって実感を覚えて感慨深いものがあるな。
ジーンと目を瞑って浸る。
「なにやってるんですか!? 私がどうなっても知りませんよ!? 本当に助けてくださいってば〜! 仕えます! 仕えますから〜!」
「今感傷に浸ってんだから静かにしててくれる?」
「嘘でしょ? これが私の主様……?」
「ハァ〜……」
しょうがねぇ助けるかぁ。
バチッ、と身体に雷を宿し、刃に炎を灯らせた。
その次の瞬間にはアマネは俺の腕の中にいた。
「へ……? あれ……?」
素材の質が低くなるからなるべくモンスターをボロボロにしたくないんだがなぁ
今度は雷を刃に纏わせると、手首を軽く振って畳まれていた刃を伸ばした。
「ふんっ」
下から斬り上げると雷が刃の形となって突き進み──タイラントスパイダーを両断した。
「ま、こんなもんだろ」
パッと見ても断面とその周辺以外には傷はなさそうだ。アマネを降ろしてサイドバックからタオルを取り出して被せる。
「ほら、これで隠しとけ。もうばっちり出てっから」
「わぷっ!? あ、ありがとうございます……って見たんですか!?」
「見ないなんて男じゃねぇだろ」
そう言いつつビーコンをタイラントスパイダーにぶっ刺した。
「帰るぞ」
「むー……」
「なんだ、まだ怒ってんのか。初心なもんだな。」
「殿方に大事な所を見せたことなんてありませんっ!!」
「へいへい、わかったわかった。でもまあ、いいだろ。ほら俺主様だし」
「ぐむっ……」
「撤回は聞かないかんなー。……あ、服どうするんだ?でろっでろだけど、予備とかあんのか?」
「……ありません。けど、あのタイラントスパイダーの糸を頂ければ修繕出来ると思います」
「好きに持ってけ。後、街に戻ったら服買ってやる。ずっとそのままにしとく訳にもいかねぇ」
「あ、いえ、それくらいは自分で買います」
「主様が言ったんだから言うこと聞いとけ。主様命令な」
「あ……は、はい!」
くっくっくっ!イレギュラーがありはしたが、帰ってからのあいつらの顔が早く見てぇもんだ。逃した魚はでかかったって事を教えてやんよ。
そう思いつつ悪そうなキメ顔をしながら街へと戻った。