4話:はじめての共同作業
「忘れてた。アマネは等級はいくつなんだ?」
そういえばと聞き忘れていたと尋ねてみる。
ゲームでは時間が過ぎていたからか2等級だったが今はそれよりも低いのか?
「3等級です」
やっぱりちょっと低いんだな。
それならこれが良いだろうとクエストボードから紙を1枚取る。
「ドレイクでどうだ?」
ドレイクは羽の生えてないドラゴンみたいなものだ。一応炎を吐いてくるがそれも大したもんじゃない。
等級も3等級程度だし、いけるだろ。
森へと入り、ドレイクの目撃情報があった場所へ向かう。
木の幹が削れているのを見るに、ここを通ったみたいだ。あいつらは硬い鱗が生えているからな。でかい図体で森の中を歩けば木に触れて削れる。
「足跡もありますね」
「ああ、これを追っていくか」
完全にトカゲの足と同じ形してるし、やっぱトカゲがファンタジーパワーで巨大化しただけか?
「! 少々お待ちを、足音が聞こえます」
「足音? ……お、マジだ」
アマネに止められて耳を澄ませば確かに聞こえてくる、ズシリズシリと地面を踏みしめる音。
距離が離れているし、喋りながらなのによく聞こえるな。
「アマネ、好きにしていいぞ」
「かしこまりました」
フッ、とその場から消える。
消えると表現はしたが、当然俺は見える。身体の周囲に風を纏って加速しているみたいだ。音が聞こえないから忍の技術か風で音でも消してんのか?
のんびり歩いていると、ドレイクの叫び声が聞こえてきた事で俺も雷を身体に纏って高速移動を始めた。これ、風と違ってバッチバチに音出るからな。
アマネの向かった方に進むとドレイクがいた。その周囲をアマネが風を纏ったまま短刀を2本持っていた。短刀にも風を纏わせて斬れ味を上げているっぽいが、固い鱗に阻まれているようだった。
俺も腰から剣を取る。自分で言うのもなんだが俺の剣は変だ。
片刃の片手剣だが、鍔の所に機械的なギミックがあり刀身を折りたためるようになっている。これのお陰片手剣の内側に入り込まれても優位に戦えるし、メリケンサックみたいに使うことが出来る。……まあ、耐久性に難があって最初の頃は何度も壊して怒られたが、今では壊れる事はない。
「おーい!アホトカゲー!」
ドレイクの目の前に立って大声を出すとこっちを向く。
「ゴアァア!」
早く動くアマネよりも俺を優先したみたいで大顎を開けて噛み付いてきた。
「ラァ!」
下顎の下から折り畳んだ剣をアッパーのように振り上げた。かちあげられた下顎はそのまま上に上がり、上顎とぶつかってガチン!と大きな音を鳴らして上を向く。
切れ込みは入ったが流石に1発じゃ斬れねぇな。しかし、俺の狙いはその奥の喉だ。
逆鱗もあるそこは他の部位よりは柔らかい。そこへ一歩踏み込み、拳を振りかぶるとボクシングのストレートを打つ時のように体を連動させて喉へと突き刺さる。
引き抜いて後ろへ下がれば血が吹き出し、呼吸が出来なくなって、体が痙攣していた。
「コッ、カ──!?」
「ハァァ!!」
好機と見たアマネがドレイクの眼球に深々と短刀を突き刺し、そのまま引き抜いて俺の隣へと降り立った。
「──!?」
最早声を上げる事も無く、その場でもがくしかなかった。
「どーよ、俺。中々やるもんだろ?」
流石に即席で連携とまでは出来なかったが。悪くないんじゃねぇの?
「そう……ですね。正直、私1人では鱗を抜くのにかなり時間がかかったと思います」
「だろ〜?」
鼻高々と胸を張る。
「ですが」
「ん?」
「もう少し考えたいんです。明日まで待って頂く事は出来ませんか?」
懇願するように頭を下げて言う。
いや、俺だってそんな鬼じゃないんだが???いくら人相がNTR竿役だとしてもそこまで酷い?
……帰ったら鏡見よ。
少し凹みながらドレイクに魔力ビーコンを打ち込む。
これで回収班が俺の魔力を辿ってドレイクの死体を簡単に見つけられる。
「よし、帰るぞ」
「はい」
生真面目なのか、じっくり悩みながらついてくる。
ならば俺もネットリと見させてもらおうとアマネを見ているとなにかが飛んでくるのを感じで身体を曲げて避けるとアマネになにかが貼り付く。
「なっ──」
そのままとてつもない力でアマネが引っ張られていき、森の中へと消えていった。
急いで後を追いかけると──
「おっと、こりゃあちょっと面倒だ」
巨大な蜘蛛の巣にアマネが捕らえられていて、その近くでこれまた巨大な蜘蛛がギチギチと鳴いていた。