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16話:プライドバトル

 



 さて、早速転がったはいいものの……


「前が見えねぇ」


 でけぇよ。俺の夢がデカ過ぎんだろ……うっひょう! 最高の眺めだ。俺はここに住所を移すぜ!! 顔が見えないのは残念だが、このやわやわな太ももと目の前を覆い尽くす程のでけぇパイが──


「はぁい、じゃあミルクあげるからお口あーんしてねぇ〜」


「あー……!!!」


 言われた通りに顎が外れんばかりに口を大きく開ける。ここだ。俺の口はここだぞ!!

 そして哺乳瓶の先が口へと近付き……ば、馬鹿な……!?


「上手に咥えれて偉いね〜」


 下乳が……顔に……!?

 思わぬ事態に思考が止まる。馬鹿な、こんな、こんな事が許されてもいいのか!?

 しかし許されているのが現状。うへへ、これが俺の求めていたものかっ!!

 ビキニのような服の上に薄いエプロンをつけているからこれほぼ生だよ! 後頭部には生の太もも。顔には生のおっぱい。そして口には恐らく今日採れたての生ミルク!

 ボガールめ、中々やる……! 毎日嫁さんにブチギレられている男は違うな! ……なんで離婚してねぇんだろ?


「難しい事考えちゃ、だーめ」


「はーい!」


 オレ、リコン、ワカラナイ。

 いや、しかし、ミルク美味ぇな。なんだこれ。え、美味……牛獣人のお乳ってこんなに美味ぇの? そりゃあこんだけ盛り上がるだろうよ。……これでバター作って肉焼いてみてぇな。

 さて、クロムはどうなったかと横目で見てみる。


「なっ──!?」


「あ、あわわわ……!?」


「可愛い子ねぇ」


「珍しく初心な子。お姉さんイタズラしちゃおうかな?」


 2人に挟まれて……!? くっ、俺は驕っていたようだ。同じスタートラインに立っていたはずなのに、クロムは俺の数歩先をいってやがる……!!


「他の子も見ちゃだめ〜」


「むぎゃっ」


 ココナさんがより前傾姿勢になって視界が潰される。

 飲んでいるミルク以外にミルクっぽい匂いがする。それがなんとも落ち着く。

 もう一度なんとか周囲に目を向けると、おっさん以外にも女性も何人かいた。やはり癒しを求めてきてんのかな。しかし、おっさんと違い大人しいな。

 そう思っていると、かなりの悲壮感を感じる鳴き声が聞こえた。


「今度はテンタクルスに胸と股触られたぁ……」


「大丈夫だった?怪我してない?」


「うん……なんとかしたよ……」


「えらいえらい、いつも頑張ってるのママはわかってますからね〜」


「ま、ママァ……!」


 あ、あれはまさか……!? 『不通』のエレノアか!?

『絶頂のゼニス』内で絶対に犯される事のない女性キャラであり、章が進む度に話しかけると『○○に犯されかけたけど、なんとかなってよかった……』みたいな事をいうNPCだ。

 しかもクロムの成長とともにエレノアも成長していっているから、どんどん級位も上がっていき、最終的には1級まで上り詰める作中最強のキャラと噂される女だ。そんな絶対に犯されるだろって状況から何故か犯されずに戻ってくる所からファンの間では『不通』の異名が付けられた。

 まさかこんな所で見ることになるとは……


「またよそ見〜」


「あ、いや、ごめん」


「赤ちゃんなんだからぁ、ばぶばぶ言わなきゃだよ〜」


「ぇあ……ば──」


 自身が赤ちゃんへと戻っていくような感覚すらある。なるほど、これがおっさん共がおぎゃおぎゃばぶばぶ言っている理由か。

 だがな、俺がそう簡単にバブバブする訳ないだろうがっ!いい大人の、2週目のこの俺がッ!

 気合いで口を閉ざす。

 なにも特殊な魔法が使われている訳じゃない。ここにいる女達のママ力にばぶばぶ言わされているだけなら耐える事は簡単だ。


「もしかしてママじゃ嫌だったかなぁ……くすん」


「!?」


 こんな事で泣くのかと狼狽える。


「じゃあもう容赦しないからねぇ……」


「んぶっ──!?」


 顔に感じる圧が増した。


「もうばぶばふするまで出してあげないよ〜」


 上等だ……受けてたってやろうじゃねぇか! 誰に喧嘩売ったかわからせてやる!

 それから熾烈な戦いが続いた、おっぱいを通して脳に響く甘い囁き、どこまでも労わり甘やかす撫でテク、こちらがいらないと言っても押し付けられる哺乳瓶。

 それら全てに耐え、遂に──


「あら〜、もう時間が来ちゃった」


「俺の……勝ちだァ!」


 おっぱいから解放され膝枕から立ち上がると堂々と勝ち名乗りと共に指を天高く上げた。


「わ〜、すごいすご〜い。今まで耐えれた人いなかったのに耐えちゃうなんて、私もまだまだかも〜」


「いや、危ない場面は何度もあった。いい戦いだったぜ」


「うんうん、私もたくさん練習するからまた来てね〜」


 そして満足してクロムとボガールを連れて外へ出る。

 ふ、勝利の後の日差しが俺を祝福してやがるぜ。


「あの……俺達休みに来たんですよね?」


「あ? ああ、そうだな」


「じゃあなんでお前は戦ってたんだよ……!もっとばぶれよ!」


「うるせぇ! んなもん俺のプライドが許せるもんかよ!」


「プライドなんか捨てちまえよ!!」


「そうね。プライドは捨てた方が懸命よね? あ・な・た?」


「ひゅっ……!」


 ボガールの後ろには嫁さんであるメナが青筋を立てて立っていた。その両隣にはアマネとサラが俺にジットリとした目を向けていた。


「主様! なぜこの様な……その、助平な所にいるのですか! 今日はクロムと休養を取ると聞いていたのに!」


「むう……私ももっと胸が大きければ……」


 2人がなにやら不満気な顔をする。

 アマネは兎も角、サラまでそんな顔するなんて意外だ。もしかして、俺って結構好感度稼げてたりすんのかな?


「聞いていますか!?」


「むー……!」


「あー、わかったわかった。聞いてやるからギルド行こうぜ。酒飲みてぇ」


 勝利の美酒を飲みに行きてぇ。

 いつもの4人でギルドへと向かった。

 余談だが、クロムはライムにオギャっていた事をからかわれていた。




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