15話:キツいおっさんのマーチ
「お、そうだ。お前らオムツは持ってきてるのか?」
「……??????」
こいつは何を言っているんだ?
「オムツ……?」
「おいおい、持って来てねぇのかよ。じゃあ受付で買えるから──」
「いらねぇ!」
「つまんねぇな。じゃあクロムは──」
「結構です……」
「おーいおいおい……なんつーこった。じゃあ俺だけ着替えてくるから待ってろよ」
「……」
思いっきり顔を顰めた。
「なんて顔してやがるんだ。これから大量に見るってのに。まあ、待ってろよ!」
仕方なく待っているとやってきた。
「……あぁ」
「……あはは」
「待たせたな!」
なんだって俺はこんなもんを……つーかお前腹出たな。
「なぁ、もういいから。行こうぜ」
「しょうがねぇな……クロム、腹くくれよ」
「大人の世界……!」
「ぜってぇ違ぇから、これダメな大人だから」
ボガールの後ろをついていき、一室へと入ると──
「ほぎゃあ!」
「おぎゃばぶぅ!」
「だあだぁ!」
……はっ、いかん。気絶していた。
「うわぁ……」
おっさん共がオムツを履いて哺乳瓶からミルクを飲まされているのを見て、なんとか前向きだったクロムも引いていた。
「ここのミルクはな。牛獣人さんの実際のミルクを使っている本格派なんだよ」
「ああ……そう……」
「うわ……凄い……」
クロムが顔を赤らめて哺乳瓶とそれを持つ牛獣人の子に目を向ける。
汚ぇ野郎共の声さえしなけりゃ俺だって喜んでたよクソが。
「あ! ボガールさん! また来てくれたんですね!」
「お〜! ラージアちゃ〜ん!」
可愛らしい声と共に暴力的なバストを携えた牛獣人がやってきた。
ほお……こりゃあまた……
「この子は俺のお気に入りでな。ラージアちゃんってんだ。そんじゃ俺はこの子とオギャるから、お前らも楽しめよー!」
そう言うとボガールはラージアちゃんとやらと手を繋いで奥へと行った。
この世界にもオギャるって言葉あったんだな……
「……? あっ!? あいつ、俺らになんも教えずに行きやがった……!」
あまりにもナチュラルに行くもんだから気付かなかった……! あの野郎……!
「あ、あのぉ……俺、どうしたら……」
「俺にもわかんねぇよ……とりあえず、女の子に話しかけて後は流れに身を任せるぞ。ここじゃ俺も7級と同じだ。健闘を祈るぜ」
「……はい!」
クロムを二手に別れる。しかし、俺も多少はこういった店を知っている。前世と違い、基本的にこういう店で働こうとする子はそういう事が好きな子が多い。だから性には積極的な子が多いから顔が見える上でそんな性格だから失敗するなんて事はほぼ無い。
つまり、顔と体で決めていいって訳。気に入った顔と体の女の子とっ捕まえてオギャらせてもらおうじゃあねぇかよ!
早速視線を巡らせる。どれどれ、流石に話題になった店だけあって可愛い子が多いな。
おっ、あのもみあげを編み込んでいるロングの牛獣人の子、可愛いな。決まりだ。
「すんませーん。良いっすか?」
「はぁ〜い。どうぞ〜」
目を細めて笑う。ふぅむ、可愛い。緩めの声が癒されそうだ。
「ココナです〜」
「ゼニスです」
「はぁい、知ってますよ〜。有名ですからー」
冒険者が多くいるだろうから知っていてもおかしくはないか。
……いやぁ〜こんな所でも知られてるなんてなぁ〜! 参っちまうなぁおい。よっしゃ、いっちょこれからも頑張って冒険者すっか〜〜〜!
「ははは、ありがとうございます」
「ではこちらへどうぞ〜」
ココナさんが正座をして膝を叩く。膝枕か……良いじゃねぇの。
俺はその膝へと飛び込むように転がった。