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11話:持久戦と絶望

 




「はぁああ!」


「ギギャッ」


 自分を鼓舞するように大声を出しながら目の前のゴブリンに斬りかかる。

 俺はやれる!サラが諦めてないんだ。俺だって諦めるもんか!

 ゴブリンは転がるように避けて、追撃しようとすると他のゴブリンが飛びかかってきた。


「危ない!『ウッドランス』!」


「カッ──!?」


 飛びかかってきたゴブリンの真下から木の槍が飛び出して貫いた。


「さ、サンキュ!」


「ギギャオ!」


「ギャー!」


 サラの方が危険だと判断したゴブリンがサラの方へと走り出した。


「このっ……こっちだっての!」


 殴り付けるとジロリとこっちを向いた。


「クロムッ! くっ……『スプラッシュ』!」


「「ギャギャア!!」」


 今度はさっきと違って2体。俺の持っている盾は体に合わせた小さいのだから防御は無理。ならっ!


「おおおおお!!」


 横に向かって転がって避ける!泥臭くたって勝てれば良いんだ!


「だ、大丈夫!?」


「なんとか──サラッ!!」


「え──ぃっ!?」


 いつの間にかサラの後ろにいたゴブリンがサラの後頭部へと持っていた棍棒を振り下ろしていた。

 殴られた事で倒れ込んでしまったサラにゴブリン達が群がろうとする。


「やめろおおおお!!」


 盾を構えて突進して押し飛ばすとサラの手を掴んで立ち上がらせる。


「大丈夫か!?」


「う、うん、ちょっとくらくらするだけだから大丈夫……まだ、やれるよ!」


「……わかった!」


 でも、このまま囲まれてたんじゃ、また今みたいにやられるかもしれない。

 なんとか切り抜ける方法は……!


「! サラ、あっちだ!あそこに囲いの穴がある。一旦あっちに抜け出して囲いから出よう!」


「ほんとだ……!わかった!『フラッシュ』!」


「「「ギャアアア!?」」」


 サラの魔法で光を出すと、目を抑えた。


「今だよ!」


「ああ!」


 サラのフラッシュはまだそんなに強い光は出せない。すぐに動き出すはずだ。それまで兎に角逃げよう。出来れば街の方へ逃げたいけど、方向もわからない。コンパスはまだゴブリン達を指しているから使えそうにない。


「ギャギャア!」


「くそっ! もうか!?」


「でも1体だけ!」


「それならっ! くぉぉおおっ!」


 体当たりてま押し飛ばして転倒させると、ゴブリンに跨って剣を逆手に持って顔に突き刺した。

 ……これなら一撃で倒せるし。いけるかもしれない!


「このまま──」


「「「ギャギャギィ!」」」


「……無理そうだね」


「でも一方向からならいける。俺が守るから、攻撃は頼んだ!」


「任せて!」


「来い! ゴブリン!」


 大声を出してゴブリンを挑発する。すると、すぐにこっちを向いた。やっぱり頭は悪いな。


「『アクアスラッシュ』!」


「「ゲッ!?」」


 サラの出した水の刃が2体同時に斬り裂く。


「ギャオ!」


「くっ……おおお!」


 俺に向かって振り下ろされた棍棒を盾で受けて、そのまま押し返してやると体勢を崩す。


「ここだ!」


 生き物の柔らかい所は……喉!

 剣をゴブリンの喉元へ向けて突き出すと喉を貫き、そのまま死んだ。


「よしっ!」


「ギャア!」


「ギャオ!」


「くぅっ! がっ!?」


 1体目の攻撃を凌いだと思えば横からやってきた2体目に殴られる。

 痛い……けど、まだまだ!


「ギィ!アゥギャオ!」


「ギャウ!」


「ギギャア!」


「っ! こいつら……!」


「学んでる……!?」


 俺の前で3体のゴブリンが俺を囲うように広がった。


「『ウ、ウッドランス』!」


「グギャッ!」


 サラが1体倒してくれたけど、すぐに次のゴブリンがやってきた。


「ギャア!」


「くそっ!」


「アギャウ!」


「っつ……!」


「アオー!」


「クロム! っ邪魔しないで……!」


 ゴブリンが飛び上がり、落ちる時の勢いを乗せた一撃が俺の頭に当たった。


「ぅあっ──」


「ギギャア!」


 ふらついてしまい隙を晒した俺の足を殴られてその場で膝を着くと、ゴブリン達が俺に一斉に飛びかかる。


「や、やめっ、ごっ……!? ァッ!?」


 目の前が歪む。頭が、腹が、腕が、足が痛い。全身をゴブリンが殴り付けてくる。


「ご、ゴブリン! こっち!」


 サラの声でピタリと痛みが止まる。

 なにをしたんだとサラの方を見た。


「な、にを……!?」


 サラが掲げた左手には、恐らくサラのパンツであったものが握られていた。


「えい!」


 そのパンツを投げると木の枝に引っ掛かった。


「ギャオー!」


「ギャギィ!」


「アギャア!」


 我先にとゴブリン達がパンツへと向かっていく。


「クロムッ! 大丈夫!?」


 泣きそうな顔のサラがやってきて抱き起こされる。


「お、前……なんで……」


「これが……1番良いと思ったから。それよりも早く逃げな──」


 ポーションを飲み、サラの肩を借りて立ち上がると、ズズン、と今までにない音がした。


「何……? 今の……」


「……なにか来るぞ」


 足音のような主な大きくなっていき、姿が見えてきた。

 その体躯は俺の数倍であり、それに見合った大きさの棍棒を手に握り締めていた。体色はゴブリンと同じ深い緑だが、鼻は高くなく、耳も丸い。そして、ゴブリンとは比べ物にならない威圧感を持つモンスター──


「ゴァァアアア!!」


 ホブゴブリンだ。





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