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第5回小説家になろうラジオ大賞byごはん

最後のクエストを「神様」から受注しました。



 ピコンッ




『クエストを「村人B」から受注しました。』



「ワン!」



 銀色の大きな体にもっふもふの尻尾シッポゆららめかせ、我輩わがはいは今日もご主人と一緒に受注されたクエストをこなしていく。


 薬草集めにモンスター狩り。

 街に戻って来たのは、三度の夜をえた山々や大草原に朝の光が城壁をらす時間。


 この世界はグラフィックが群を抜いて綺麗だと、いつかご主人が言っていたっけ。




銀次ぎんじのおかげで大収穫だよ。いつもありがと〜」


「ワン」



 冒険者ギルドにてクエスト完了手続きを行う。

 満面の笑みでワシャワシャと我輩の顔を混ぜるご主人はとても楽しそうだ。




 クエストをこなし、時にイベントで刺激を受け。

 ボス戦に苦労しつつ仲間達と泣き言を叫びながら戦線を駆け回り。

 ダンジョンでレアアイテムをゲットして、うるさいくらい一喜一憂いっきいちゆうしたり。


 マイホームの模様替えをまったりしながら、ナデナデされる時間が一番好きだった。



 シーンと静まり返る室内。

 あんなに騒がしかった声が、仲間達が、今は誰も近くにいない。


 一人、また一人と減っていったプレイヤー達。


 ご主人も「また遊ぼうね」と言ったっきり、ここ数ヶ月ゲームにログインしていない。


 マイホームのベッドでご主人の寝顔をながめ、何で起きてくれないのかを考える。


 学習機能はあれど、ゲームAIエーアイの我輩には人間の考える事はいまだにわからない。


 わからない事を考えても仕方ない。でも、ご主人の寝顔を見るのは何故なぜかやめられないし、声も聴きたいし、でて欲しいと思う気持ちは確かにある。


 捨てられたのかと思った。

 思ったけれど、ご主人にかぎってソレはない。



 あのちょっと抜けているご主人の相棒は、我輩しかつとまらないという自信もある。




 ── 頼むから。




『1時間後にこのサーバーは凍結とうけつします。』



 毎日なんて贅沢ぜいたくな事言わないから、頼むから最後に一回だけでも帰って来てよ。




 ホログラムがくずれ、世界が美しく崩壊ほうかいする中。







 ピコンッ



『最後のクエストを「運営」から受注しました。』



 久しぶりのクエスト音声が流れた。


 真っ白に視界が染まり。







 目を覚ましたのはご主人じゃなくて、我輩の方だった。



「銀次、おはよう。遅くなってごめんね」


「キャン?」



 いつもより甲高かんだかい鳴き声に、ピコピコと動く尻尾。

 ご主人の腕の中にスッポリおさまる体。


 アイテムボックスもひらけない、小さいのに重力が重たく感じる不便(きわ)まりない世界だけど。



 最後のクエストは、ご主人にめぐえた事でとっくにクリア出来ていた。




『どうか、幸せにね。』



 

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