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狸の箪笥
狸の箪笥
夫が漁に行っている間に男を取る。昔はどこの漁村でもやっていたことだ。
寒いと体が強ばる。正子は手をすり合わせ、囲炉裏に火をやった。
自在鉤の横木は裂けこの家も裂ける日が近い。
間男を待っているとガラス戸が開いた。
「初めてなの?」
夫は潮の香りがする。塩むすびを持たせたがどこで食べてるのやら。
嘘の喘ぎ声を上げていると、横からも湿っぽい声がする。
あの人は激しいから。
間男が何も言わず帰って行くと正子はまだ若い体に体が火照った。
囲炉裏に手を当てていると指だけが冷たい。
茶箪笥に溜めてある金はもう捕らぬ狸の皮算用ではない。船の修繕費に使える。
夜がガラス戸を叩く。すきま風は田中さん家から吹いてくる。
「夜はやってないんですよ」
狸のお面を被った人間。
狸に見えてきた。
夢の入口に立っているような気がした。言葉は憐れ。
潮の香りがした。
正子は初めて上になった。
「あなた」
「正子ォ」
木目が狸に見える和箪笥が見ている。
「笑ってるからでしょ」
すぐに果てた。
正子は塩むすびを炊いた。
もうすぐお祭りの季節だ。
砂が干く音がした。




