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別の世界ではただの日常です

割引配達員

作者: 茅野榛人

 今日の学校の休み時間に、友人とこんな会話をした。

「なんか最近流行ってる誰でも配達員になれるやつあるじゃん。それね、昨日僕使ったんだけど、ちょっと変わった配達員が来たのよ。僕ね、現金払いで1880円分の注文をしたのよ。そして注文の品が届いてお支払い金額を確認した時に『1000円丁度ですね』って言われたのよ。あれ?なんか安くねって思って確認したら、やっぱり1880円なわけよ。で、間違えてますよって言ったらその配達員なんて言ったと思う?『あ、僕、割引配達員やってるんです、現金決済の方のみに、勝手にお支払い金額を割引しているんです』って言ってきたのよ。だから僕、880円得しちゃったのよ!」

 僕はこの何気ない会話にいつもとは違う、何かものすごい興味を感じた。

 しかし僕はまだデリバリーアプリを使ったことがないため遭遇のしようがなかったが、次第に一度会ってみたいという気持ちが強くなり、親に事情を説明して、人生初のデリバリーアプリデビューを果たした。

 使い方を理解して、いよいよ注文の時がやってきた。

 僕は現金決済で2190円分の注文をした。

 そして待つこと30分、家のインターホンが鳴った。

「こんばんは、ご注文の品をお届けに参りました」

 ここが重要だ。何円と言われるか。

「お代の方が、1000円丁度ですね」

 割引配達員だ!

 僕は興奮を抑えて注文の品を受け取り、聞きたかったことを恐る恐る聞いた。

「あの、なんで割引しようと思ったんですか?」

「いや、自慢みたいになっちゃうんですけど、僕ちょっとお金を貯めすぎまして、何か使い道は無いかと考えて、行きついたところがこれだったんです」

「結構お優しい方なんですね」

「とんでもない、私がただ勝手にやってることですから、別に罪悪感を感じる必要もないんですよ」

 聞きたいことが聞けて満足した僕は、その後家族で注文した品を美味しく味わった。

 お腹いっぱいになり、もやもやしていたことも解決した。

 いい気分になったついでに全然開いてなかったSNSを見てると、こんなトレンドが載っていた。

『#割引してくれ』

 僕は割引という言葉に釣られ、そのトレンドをチェックした。そこでは友達や僕が利用したデリバリーアプリの配達員によるツイートが反響を呼んでいた。

『やられました。とある方の家にデリバリーサービスの配達を行ったのですが、お金を受け取ろうとした時、割引してくれと1000円だけを渡され、2190円受け取るところを、1000円しか受け取れませんでした。昨日SNSで似たようなことが載っていたので、模倣したのでしょう』

 そしてそのツイートには2枚の画像も載っていた。1枚目はスマホに2190円と表示された画面と1000円札のツーショットで、2枚目は自分の家だった。

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