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普通の高校生の俺は、鬼に連れて行かれました。  作者: イッチ
選ばれる者たち
2/2

1話 人間


 俺は藤原(ふじわら)匠海(たくみ)。なーんにもない普通の人だ。

 陽キャと陰キャの中間みたいなものだ。成績はまあまあいい感じで、無難に高校生活を過ごしていたのだが、こんな俺にも春が来た。だけど…


「私と付き合ってよ、匠海くん!」


 半年ほど前に、近場の駅で知り合った莉桜那(りおな)という人から告白されていたのだが、結構悪い噂が絶えない。浮気…イジメ…。でも彼女の美貌は確かだった。美しい茶色が光る黒髪のボブヘア、程よく足が細く、全身が美しさを演出していた。友達とは本当に仲が良く、いい印象もあった。でもなぜこんな俺に惚れたのか。


「ね?付き合うでしょ??」

「えと……」


 告白自体があまりにも強引で、ネクタイを引っ張られ顔を近づけられた。


 でも何かがおかしいように感じた。莉桜那は思い切りがいい人だが、こんな緊張する場面ではこんな姿を見たことがなかった。


「嘘コクですか?」

「…………はぁ??なわけないじゃん!ンッ──」


 あまりにも突然で、目を開けるとキレイで艶のある色白な肌、熱い吐息、香水のいい香りが襲ってきた。

 ──その瞬間から俺は心が奪われた。


「本当に好きだよ?」

「わかった。付き合おう」


 今日、僕は世界で最も愛するべき人ができた。




 でもそれには裏があることを知らなかったのだ。これからの絶望を───






「ねね!お守り買お!!」

「いいね!」


 今日はデートだった。付き合って初めての週末、デート。訪れたのは神社だった。

 すると、突然手を引っ張られて樹木が生い茂った森の方へと連れ去られた。






(どれだけ、寝てただろう………。目の前が真っ暗だ。目を覚ませ!……)


 なんとかして重い瞼を上げると、そこは金色で装飾された赤に染められた部屋だった。目の前にはズドンと座り、重い空気を放つ小柄な男があぐらをかいて座っていた。

 そして、俺が目が覚めたことに気付いたのか、こっちを見た。


「よくやったよ、我が女房」

「私の美貌を使えば誰でも連れてこれますわ。閻魔帝王様、いや、私の旦那様」


 閻魔帝王は、全体的に黒い重めの服装で、帝王らしい風格を演出していた。


(制服を来てる女の人………莉桜那じゃないか…? でも、閻魔帝王?とやらを旦那様って……。それに連れ去るって!?俺を!!?)


 俺は体を動かそうとしたが動けなかった。


「動こうとするな。これからお前たちは我々のふるいにかけられてもらう。」


 どすの利いた声で俺に話す。


(…?)


 俺は困惑しかなかった。

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