───話 ある世界で、神と崇められし者
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彼は世界が生まれた時から存在していた。
世界が生まれた時、その“始まりの波動”によって、『卵』が誕生した。その卵が生まれてすぐ、孵化した。生まれてきたのが、彼だ。
◇
長き時を生きた。
初めの頃の世界は、自分一人だけしかいない、孤独な世界だった。だから、まず下僕となる配下を生み出した。その数、12体。その12体は特に強く、今でも彼の配下の中でトップを争う程の上位陣がそろっているのだった。
そして、その種族は『鬼』だった。
それを見て、自分が鬼なのだと理解した。
「面白いね」と思った彼は、どんどん配下を生み出していった。
その世界は、鬼で溢れ出す。その鬼達の唯一の王───神こそが、彼であった。
神と崇められた彼は、世界を支配した唯一王となったが、たまに邪魔が入った。
『天使』や『悪魔』、『精霊』と呼ばれる、異界からやって来た種族である。
これらの種族は、別次元世界への進出を夢見る奴らなのだ。つまり、鬼が住まうこの世界を支配しに来たということである。
だが、彼らにも鬼を狙う理由があった。鬼は生まれながらに強く、世界のバランスの崩壊の可能性が100%に近かったからだ。それほどまでに、鬼の力は巨大なものだった。だから鬼を狙う。
それは、彼にとって忌々しい出来事であった。鬼の上下関係が出来始めて、文明が築かれようとしていた時に攻めてきたのだから。
この世界には、存在力というものがある。鬼は、この世界に存在がに完璧に定着したが、別次元の世界から来た者達は、すぐには世界に定着出来ないのだ。存在がどんどん定着していくにつれて、自身の力が上がっていくという効果があるのだ。
なので、圧倒的に鬼の方が有利。
彼は、配下の鬼達に、
「全力を出していい。今まで力の開放を止めてもらってたが、もうその必要は無い! 邪魔者を全力で排除せよ!」
と命令した。
これは、一方的な蹂躙だった。
『天使』、『悪魔』、『精霊』をもの凄い勢いで排除していった。
ただ、ここで彼があることに興味を持った。
「強い奴ら、雌だけを連れて来い。」
そう、新たな下僕をツクルということだ。
強い天使と鬼が交尾する。すると、天使と鬼が混ざった種族になるのでは? と、彼は考えたのだ。
早速、試してみた。天使長の一番の部下の“雌”を生け捕りすることを、『虚鬼』という最強の鬼に命令した。
虚鬼は、迅速に生け捕りにして、彼に差し出した。そして、交尾する───
◆
結果は、成功。
『天鬼』と呼ばれる新種族の誕生であった。
彼は、その天使に自分『鬼の因子』の一部を付与した。そして、その天使は『天邪鬼』となった。それと引き換えに、彼が『天の因子』の一部を奪い取り、天使と似た体質になる。
彼は、力のためなら何だってした。
◆
そして、彼は『別次元世界』に目をつけた。無差別に誰かをこの世界に連れてきて、新たな種族を生み出す。そんなことを繰り返していた。
そして、その世界は鬼で溢れることになる。
その世界の名は───鬼界───
その鬼界に、鬼によって連れて行かれた、ある一人の少年がいる。その一人の少年が、鬼界の歴史を大きく変えることとなる。
その、少年の物語だ───