Lightning Hornet(3)
今回は新キャラが大勢出ます。
《創暦1249年 6月12日 旧カシーディ王国領内 旧商業都市エイウル郊外》
ケントが部隊指揮官となる事で漸く部隊として成り立ったライトニング・ホーネット隊。
隊員総数六人、装備も骨董品ばかりだが腕だけは自身のある個性豊かな兵士達。
ゴブリンの男、マキ―・デシオ。
武器はPPS-43。
戦闘車両に対する対抗策としてRPG-30短距離対戦車擲弾発射器を装備。
エルフの男、リャークルス・エナン。
SKSを装備している。
簡易的な魔術を行使する事が出来、治癒術式によりその場での負傷の治療も可能。
単眼族の女、クェイル・ユーラ。
SMLEの使い手で本隊では二人しかいない狙撃手というハッキリとした役職を持つ兵士だ。
リザードマンの男、オロー・フーネイ。
援護兵の役職を持つ兵士で主武装はRP-46。
そして犬獣人の女のイコ・ハンツヤフ。
主武装にM1カービンを、それに加えて歩兵支援用のM224 60mm軽迫撃砲を背中に背負っている。
人数が少ないだけでなく中々に濃い面子だった為すぐに顔と名前を覚えることが出来たが彼ら六人は互いにロクな自己紹介を交わす事も無く初戦闘の日がやってきた。
イスルカから現状の説明があった。
敵は米軍機甲部隊.
UMBTが四両にUTSFVが三両。
つい一時間前に戦団の領域外であるエイウルに侵入。
目的はその先に潜むDNLF残党の掃討で間違いないとの事だ。
だが、一つだけ理解できない事があった。
「イスルカ、この貧乏戦団には何㎞も先の、それも山を越えた先にいる敵の機甲部隊の正確な位置と規模を特定できる程の優秀な索敵装備は無い筈だ。適当言ってんじゃねえだろうな」
説明を聞き終わったケントは机の上に地図が広げられたテントの中でイスルカに対して問い質した。
だが彼女の表情はまるで自分の発言が当たり前だと言っているかのようだった。
「適当?馬鹿を言え、私の告げる事は全て真実である。私がいると言えばそこに奴らは絶対にいるのだ」
「………どういう事だ」
「ならばここで試してやろう」
そう言ってイスルカはおもむろに懐に右手を突っ込みそこから何かを取り出した。
服の中から出てきたのは拳銃、S&WM10。
ただのM10ではなくどこかの高級将校が持っていそうな派手な刻印が施されており、グリップは木製ではなく絹のような真っ白の樹脂製に変わっていた。
何をする気かと様子を見るケントの前で、彼女はシリンダー内の弾から一発だけ抜き取りシリンダーを回し、戻した。
紛れも無い、ロシアンルーレットの動作だった。
そしてその銃口をケントの眉間に向ける。
「てめえ!何を…!?」
「案ずるな、お前は死なん」
イスルカは迷わず引き金を引いた。
思わず身構えるケントだったが、銃声が鳴る事は無かった。
M10の撃鉄は偶然か必然か、空の薬室を叩いていたのだ。
固まるケントにイスルカが揶揄うように笑いかけた。
「言ったであろう、お前は死なんと。私の告げる事に偽りは有り得ぬ」
「あんた…一体…?」
「これは幸運でも奇跡でもない。引き金を引く前から決まっていた確定事項なのだ。私はそれを事前に知っていただけの事――」
「失礼ですが閣下、我々もそろそろ出ねば同胞が肉塊にされてしまうでしょう」
話を遮って割り込んで来たゴブリン、マキ―をイスルカは一瞬不機嫌な表情で睨んだがすぐに「そうか、ではさっさと行け」と言い放ちそのまま何処かへと去ってしまった。
既に出発準備を整えていたライトニング・ホーネット隊は基地の門の前へ騎乗した状態で並ぶ。
レイジング・ホーネット隊の装甲車、三両のハンヴィーも兵員を全員載せて待機している。
現地で鹵獲され改造されたハンヴィーは天井を取っ払われ乗員を余分に乗せられるようになっており武装は車体中央にDShK、助手席にPKMを備え付けている。
本来なら米軍の装備が欲しかった所だが彼らは車載機銃などは車両が行動不能になると自分達で早々に処分してしまうので中々手に入らなかった。
車両本体が状態良好で手に入っただけでも幸運な物である。
因みに騎乗経験の無いケントは、副隊長であるイコの馬に乗っていた。
イコの舌打ちを聞き流しながら彼女の体にしっかりと掴まる。
元々ケントに良い感情は抱いてなかった事は言われなくとも分かっていたが、まさか彼女が副隊長で自分の部下になるとは思いもよらなかった
GSSでの経験を買われて指揮を執る事になったとはいえ、根本の能力では部下の方が遥かに上だろう。
それでもケントを指揮官として選んだのは彼らの働き蜂としての生き方故なのかもしれない。
「では、行くぞ」
「さて、駿馬と装甲車で戦車相手にどこまでやれるか見物だな」
先にケント達ライトニングホーネット隊が出発した。
それに続きレイジングホーネット隊もエンジン音を響かせながら基地を出た。
駿馬の激しい息遣いと共に蹄が地面を抉り、軽快な音を鳴らす。
その後すぐに全速力で走る駿馬は山を、車両部隊は迂回路を目指し別れた。
次回は戦闘シーンを書きたいと考えていますがプロットも無しに書いてる身の為どうなるか分かりません。