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雷蜂  作者: FREEdrich
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最後の命令2

小説のストックが出来る人って羨ましいですよね。

私は早く投稿したい欲が出るので、ストックなんてとても無理です。

《統一暦1349年 3月7日 自由ヤーニカ軍団総司令部》


自由ヤーニカ軍団。

そう名乗る彼らはこの城塞都市ヤーニカを統治し、魔物や他国の軍隊などの脅威から市民を守る役目を持っている。


軍団総司令部はヤーニカの最中央に位置し、防衛隊やその他の遠征隊などの部隊を統括している。

つまり現在のケントは総司令部への長距離遠征任務の手土産だった。


総司令部に連れ込まれたケントは厳重な監視の下、精密検査を受け訳も分からず病室のような個室に入れられそこで一晩を過ごす事になった。







「あの日から、俺の人生滅茶苦茶だな……」


その日の深夜、なかなか寝付けなかったケントはぼんやりと今までの事を振り返った。


車列奇襲作戦の終いに謎の特殊部隊に撃たれて、気が付けばDNLFの残党に拾われてた上に20年もの時が経っていた。


20年という年月でどれほどの変化がこのツェルドと元の世界に起きたのかはまだ分からないが、今に至るまで目に映る物耳に入る物全てが未知に溢れていた。


帰る場所であるGSSも無くなり、帰る手段も思いつかない彼は軽く溜息をつき天井を見上げた。

天井にあるLEDライトを眺めながら自分の左目に触れる。


嘗て左目があったそこには包帯が巻かれ、完全に覆い隠されていた。

右目だけの視界にはまだ完全に慣れた訳ではないが、それでも日常生活には支障無い。


いや、例え支障があろうとやっていかなければならないのだ。

それが死に損なった自分という名の雑兵に与えられた任務。


GSSでも古参だったデイヴィットはイラクやアフガンにシリア、リビアなどの数々の戦場で数え切れない程の仲間を失って来た。

それでもあの日まで一瞬の気の狂いも起こさず、最期まで仲間の為に命を賭して戦う事を選んだ。


だが今の俺は何だ?


たかが目玉一つ失っただけでくたばるのか?


手は動く、引き金はまだ引ける。


脚だってまだ走れる。


戦い方だって忘れた訳じゃない。


俺の脳内には今だって多くの聖戦士気取りや革命家気取りのテロリスト共をこの手で撃ち殺してきた記憶が残っている。


同時に、同じ数だけ同僚のオペレータや現地の友軍兵士が殺されていく様も見てきた。


出血多量で生を懇願しながらゆっくりと死んだ奴。

頭にライフル弾を食らってスイカみたいに割れて即死した奴。


敵の砲撃で千切れかけの下半身と腸を引き摺りながら必死で助けを求めながら呻き声を上げ、最終的に俺が止めを刺してやった奴。


投降して敵に捕まり生きたまま焼かれ、戦車に轢き潰され、全身の皮を削ぎ落され、四肢や指を切り落とされ、小銃や重機関銃、果てには対空機関砲の的にされ。


そうして死んでいった様をカメラで撮られプロパガンダの為にネットに流された奴。


今思えばロクな死に方が出来た奴なんて両手の指で数えられるくらいだ。


そして、俺は今まだ生きている。



「………眼球一個無くした位じゃ労災は降りねえか……ったく、とんだブラック企業に就職しちまったもんだな」


独り言をブツブツと呟きながら天井を見上げていた右目を閉じた。


「“戦って死ぬな、生きて戦い続けろ”か、社是にしちゃ随分と無茶を言うな……」


デイヴィットがシリアで言った言葉を思い出しながら彼は静かに眠りについた。


――――――――





3月8日の朝、部屋の扉をノックする音で目を覚ました。

上裸で寝ていた為急いで上の野戦服を着て扉の方へと向かった。


「今開けるよ…ってアンタか」


「お前に会いたがっている方がいる。来い」


見慣れた灰色の毛並みの犬獣人に連れられ本部の施設内を歩く。

道中でパトロール中の兵士を何度か見かけたが彼らの装備は厳重そのものと言ってよかった。


AKシリーズだけでなくカスタムされたFN FALにHK33、G36にM16など西側の武装も多く見られた。

武装以外の装備でも無線機やプレートキャリアにチェストリグなどの装具も少し古いが西側製がそれなりに充実しているようだった。


「総司令部の防衛部隊はある程度装備も優遇される。城壁側の守備隊はまだこれ以下の骨董品ばかりだ」


犬獣人…道中でセイーア・オゥルスと名乗った彼もFA-MASなんてものを持っている辺り遠征部隊もそれなりに重要視されているのだろう、とケントは考えた。


暫く歩いた後、二人はある部屋に辿り着く。

他の部屋とは違って明らかに雰囲気の違う扉をセイーアがノックした。


「セイーア・オゥルス大尉、入室します」


「来たか、入れ」


少し遅れて扉の向こう側から女の声が聞こえるとセイーアは「失礼します」と一言言って中へと入った。

ケントも彼に続き歩みを進める。


「……ッ!?」


扉が開いた先にいる者の姿を見て、ケントの体が一瞬強張る。

亜人族が皆特異な身体的特徴を持っている事は最初から分かりきっていたが目の前にいる()()は今まで見てきたものとは明らかに格が違った。


「イラル総司令、件の者を連れて参りました」


「ほう、此奴が…」


そこにいたのは、恐らく半獣人。

ただし、()()()()を生やした狐の半獣人であった。


部屋の中央にある大きな革製の椅子に腰を下ろしているが、余りの質量の大きさに尾が下に収まらず殆ど飛び出してしまっている。


最早背もたれなど必要ないだろうという程の質量だった。」


テレビやネットでしか見た事の無いような煌びやかな着物に身を包んだ彼女は、ケントの緊張に満ちた表情を見つめる。


「さて、互いに名も知らぬまま話を進める訳にもいくまい」


彼女は口元を隠していた扇子を閉じた。


「妾の名はイラル・クァルストゥ。DNLF崩壊時の階級は中将で、今は見ての通りこの自由ヤーニカ軍団の総司令官を務めておる」


彼女の背後の()()が、自己紹介を言い終えたのと合わせて僅かに揺れ動いた。

いいですよね、狐っ娘。

亜人好きなので勿論出しますよ。

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