サイド:ルリハの備忘録
間話を挟みます。
そもそも間にあるから間話なのでは?
つまり、間話を挟むとは
頭痛が痛いと同じ?
或いは永遠の生を、又は断続的に生きる方法を持つ。
それが神がいつまでも存在できる理由。世界を生み出し、果てまで見守る。わたしたちは、決して絶対の存在ではなく、また全てを知る存在ではないのだ。
◇
はぁ、と息を吐きながら間に合ったことに感謝する。いやぁ、あんなに褒められるのは久々だなぁ。ヒサメ姐はあまり褒めてくれないし、こまちちゃんはわたしの手際を評価こそすれ、何回も褒めてくれない。あわりちゃんは癒しだわぁ。
「マスター、お使い済ませたよ!」
元気にリリカが、扉を開ける。
「ありがとぉ。そこに置いといて、わたしは少し寝るから」
リリカは、満面の笑みで頷いて、
「はい、マスター。おやすみなさい! うおおー!」
と、声を上げながらリリカは外に出て行った。
「元気だねー。平和な事はいいことさぁ」
と言ってわたしは寝室で横になる。
◆
懐かしい夢を見る。夢だと思ったのはきっと——。星々が輝き、天を埋めている。地は、ひたすらに暗く、闇を貫く星明かりだけが頼りだ。夢の中のわたしは踊る。踊って、駆けて、宙をひらひらと舞う。
外界の敵を掃討する為に、相手を見ながら足を動かして、腕を振るって目の前の全てを切り落としていく。舞って、舞って、千の万の那由多に届く線を閃かせながら敵をひたすらに切り落としていく。
相手の手を、足をすり抜けながら斬りつけていく。
刃の長さは少し頼りないが、自分の愛刀を振り回し、蹂躙する。
「っ、どうしてこんなに!」
息はまだ上がらないが、キリがない。そもそもわたしは広域を殲滅することに長けてないのだ。
「堕ちた馬鹿者どもめ。こんなになるぐらいならさっさとほっぽりだして他のやつにでも任せればよかったのに」
怒り、哀しみながら、それでもなお剣を振るう。
「こまちちゃん、現状報告!」
ザザーと、耳につけた通信機から音が漏れる。
[ルリハお姉ちゃん! 今は一族を率いて各所に派遣しているけど、何とか持ってるよ!]
ちっ、と心で舌打ちをする。出来れば撃ち漏らさないでいきたかったが、流石に数が多過ぎてそうもいかない。そもそも一族の者たちは少数だ。対処できることにも限度がある。
「わかった。こちらを一刻も早く殲滅するから」
[うん、気をつけてね!]
通信が切れる。まあ、こまちちゃんなら大丈夫だろう。最悪、ヒサメ姐が眷属を使って守らせるだろうし。一番の問題は…………。
「さぁ、何ラウンドでも相手になるよ!」
気合を入れて、戦いに集中する。
◆
腕を振るい、ここに居る最後の敵を殲滅する。
「ふう、ここでひと段落か」
警戒をしながら、張り詰めた気を抜く。あれからどれくらい経ったろうか。神衣も草臥れているが、まだわたし自身に余裕がある。今のうちに地球に帰ろう。
そう思い、早足で駆ける。
地球に着いた頃に見た光景は————。
◆
むう、と唸りながら、わたしは起き上がる。
一体何の夢を見たんだっけ? と思いながら寝ぼけた思考をはっきりさせる。
ふと、窓辺を見ると花が飾られていた。綺麗な群青のネモフィラ。ふふ、と微笑みちょこんと触れると、ゆらゆらと揺れている。窓の外を見ていると、美しい花畑が広がっていた。
◇
さて、気分転換も出来た。そう言えばいつの間にわたしの家の周りは花畑になったのだろう?
これも地下で研究をする弊害か、と納得する。
よく見ると、ピンクの三つ編みがひょこひょこと揺れている。
「そこで何してるの?」
「あっ、マスター! 花の水遣りを済ませたからみてまわってたさね!」
なんか、最近この子の言語が怪しい気がするが個性だと思っておこう。
「これ全部リリカがやったの?」
素直に聞くと、リリカは首をぶんぶん振り、
「あわり姐と一緒にやったのよ!」
そうなのか。というか、あわり姐ねぇ、何かあったのだろうか。まあ、姉妹仲良くする事はいいことだ。
「へぇー、良かったね」
ポッケに入れていた手をリリカの髪に乗せて撫でてやる。
「えへへ」
満更でもなさそうだ。もっと精神年齢を高くするべきだっただろうか? いや、まあ面白いし、いいだろう。彼女に足りないのは経験なのだから。
「この花畑も綺麗だし、もしかしたらリリカには園芸の才能があるかもね」
本当にこの花畑はすごいと思う。この暖かさは、他にはなかなか無い。
「うん! でも、園芸の本をあわり姐と見ただけだから。もっと綺麗に出来たらいいな」
これで十分だと思うが、向上心がすごいな。
「そうか。楽しみにしてるよ!」
にこりと微笑むと、リリカも笑って。
和やかな時間が続く。
◇
はっ、妹の美しい姿が。
ヒサメは、仮眠から目覚める。ふと、妹の『ルリハお姉ちゃんは、毎日が楽しそう』という言葉を思い出す。
本当に楽しんでくれてるのなら何より。可愛盛りのこまちちゃんも、最近は楽しめてるようだ。
「ふふ、」
と笑みが溢れる。妹たちのこの時間を守れるのなら姉冥利に尽きるという者だろう。なお、親バカたちは加減を覚えてほしいが。
さて、気を張り直して仕事をする。時間の遅延ぐらいなら寝てても出来るが今やってる事は手作業でないと意味がないので、書類を整理しながら確認する。
本当に、私たち姉妹が来てから様々なことがあった。このレベルを毎度のように解決しながら手持ち無沙汰でいれた点に関しては、素直に親バカたちを尊敬している。
「もう、悲しむ妹たちを見たくありませんから」
私は、戦闘特化でないので戦力になれない。あれから色々と試してみたが今以上の強化は望めないだろう。
「この人は、まあまあですね。こっちの人も」
神の戦いについて行けるものなど、片手で数えられるぐらいが普通の世界だ。この世界は、結構異端なので強い人はポンポン生まれるが、精々下級神ぐらいの実力。
偶に、イレギュラーが生まれたり、天賦の才を持つものが越えるぐらいだ。
「これはもう、あちらの研究に任せるしかないかもしれませんね」
いつも頼ってしまう姉の不甲斐なさを感じながら、神の仕事を消化していく。
◇
番外編
やあ、僕だよ。え、知らないって?
hahaha
マジだ、名前、名乗ってねえ!
えっと、ドーモ、あわりの兄です。
あっ、お兄様と呼ばれなくなった方です。
最近、妹に避けられてる気がします。
えっ、もとから? そ、そんなバカな。
と、とりあえずあれからのことを報告しましょう。
茉穂とは、しっかり話し合って、互いの気持ちをしっかり告白しました。
え、惚気はいらないって? いや聞いてくださよ。ま、まあ新学期から怪我が治って動けるので恋人とデートし放題。
う、うるさい? ごめんなさい。
そういえば、聴いてくださいよ! なんと妹は全国のテストで一位を取ったんですよ!
いやあ、嬉しいですね。何やら飛び級の話も上がっているようです。凄いですね。
やはり、妹には感謝しても仕切れません。妹のお陰で、茉穂と仲直りできたんですから。
約束で、誰かを助けるときは彼女持ちですと名乗りなさいと言われたときは恥ずかしかったなぁ。
茉穂のほうは頷くまで目を離さないから。
すごく嬉しかったです。
また惚気だって? 確かにそうですね。
あと、それは貴方を信頼してないからじゃないか?
そそ、そんなバカなことあるはずないじゃないですかあー。いやだなぁー。
他の女性ですか? 興味ないですけど。
は? 妹に手を出すつもりなんて無いですよ。
そもそも————。まあ、とりあえず入学式が楽しみです。
何歳かって?
そりゃあ、十五歳ですよ?
あっ、名前名乗るの忘れ————。
最後の人誰でしょうかね
なんか、書いてくと陽気な人になりました。