3話 戦端
公孝はその様子を見て口元を歪めて言った。
「なんと友達思いで、お優しいことで。だがなリュミエール。そう言う優しさは絶対的強者にのみ赦されるんだ。君がわたしと戦う。その間彼女を誰が守る? 神か? 天使か? それとも勇者かな? 残念ながらだれも成美君を守ってはくれない。そこの娘を始末するように命じたのは、他ならぬ神なのだから」
くっくっ、と邪悪な笑みをもらす公孝にリュミエールは憤った。
「お前一人如き! 一瞬で伸してやる!」
そう言いながらリュミエールは右腕に魔力を込める。最早呪文の詠唱さえ不要なほどに極め切った重力呪文を行使するために。公孝はまっすぐに抜き身の日本刀を構え、上に跳躍する。渋谷上空はいつの間にか雨雲に包まれ、その雨雲から巨大な雷鳴が轟いた。雷撃は上に跳躍した公孝の日本刀に直撃する。公孝は雷撃を刀に溜め、十字路の片隅に眠る伊達成美を見据えて叫んだ。
「神羅舞心流奥義、破天落竜雷牙!」
落雷のスピードそのままに成美に向かって落ちる公孝。狙いはあくまでも彼女。リュミエールではない。リュミエールは右のこぶしを無造作に降った。横なぎの重力波が公孝を襲う。
「わたしの重力が、下にしか働かないと思わないことね!」
今度は右手を上に振るリュミエール。公孝は見る見るうちに渋谷上空まで飛ばされる。
身を捩って重力から逃れようとするが、そこにリュミエールが並びかける。
「グラビティー・ストライク!」
リュミエールは重力場を最大出力で展開する。極超音速のスピードで渋谷上空を飛ばされ、渋谷109に公孝は激突した。