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2話 神羅

 そういいながら黒い喪服に赤いワイシャツの男が十字路の角から顔を出す。男は水がしたたり落ちる日本刀を持ち、現れた。男はそこはかとなく不敵で、不屈で、不遜で、不吉だった。リュミエールはその佇まいから男をフェイゲンバウム正教が放った刺客だと判断する。だが、それは憶断だった。この男こそ世界に五人しかいないとされるサタン級魔導災害指定魔術師、最後にして最愛にして最悪の一人、神衣公孝ことルシファー・ダインだった。公孝は語る。

「リュミエール、君に用はない。俺としてはね、平穏に事を済ませたい。そこにいる伊達成美を、始末させてくれ。始末。末の始まり。日本語は詩的で素敵だ。だが実際にはようはその娘を殺すということだ。どうだろうか?」

 ひかりはこの男からの提案に質問で返した。

「成美ちゃんを? なぜ?」

 公孝は答える。

「そこの伊達成美は、その頭上に『憎悪』の『原罪宝冠』を頂く神の敵、人類の敵。だから、事を起こされる前に、その子には死んで頂いて、憎悪の原罪宝冠を天使の十二軍団に管理させる。それが目的だ。原罪宝冠は知っているな?」

「上位の魔術師が得ると言われる十三の罪の刻印でしょ? 成美ちゃんは魔術師じゃないし、あり得ないわ」

「交渉決裂かね? これは。君がどんなにその娘を大切にしても、いずれベルゼブブの目に止まり、憎悪の原罪宝冠を奪われて殺される。そうなる前にイエスは手を打った。フェイゲンバウムでは無く、ナザレのイエスのほうがだ。必要悪免罪符をミカエルから発布されている。見るかい?」

 そういうと公孝は右手をかざした。そこには赤い十字架と、バラ。そして神代文字で『わたしは罪を見なかった』と書かれた魔法の文様があった。

「免罪符がなんだっていうのよ! 成美ちゃんには手を出させない。そこで死になさい! カエルのように!」

 リュミエールの目が赤く輝き、強烈な重力が公孝を襲う。膝を降り突っ伏すかに見えた公孝は、明らかに自分の意志で手をつき、土下座して言った。

「神羅舞心流の怨、方々よ、ご照覧あれ。われはヤルダバオート家舞心流、最終伝承者ルシファー・ダイン。縁あるが故、怨あるが故、我、汝、リュミエール・バルビエを誅罰せん! ご覚悟を」

 リュミエールは直接は知らないが、この奇妙な口上を用いる魔術の一族を知っていた。神羅舞心流。しかしその一族はアメリカ帝政合衆国と敵対し、一族は全て、UEACHLMAC、通称ウーシャルマックの特殊魔導親衛隊に抹殺されて滅んだはずだった。

「神羅舞心流がなんで」

「舞心流の歴史は七十六億年。この星よりも古い。赤城家や神代家は本家筋ではない」

 リュミエール・バルビエは隣の成美を見やり、呪文を唱える。

「成美ちゃん、ごめんね。flagunul-renadigal」

 途端に成美は昏倒し、意識を失った。

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