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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

全ては幼女になる~チートスキル幼女化で怖いものだらけの異世界を無双します

【三題噺】お題「鯖」「カマキリ」「花嫁」

決まったお題を3つ使用し5000字以内でという縛りで書いた短編になります。



 それはいつもと変わらない朝だった。


「いつまで寝てるのよ! さっさと起きなさい!」


「うううっ……。何するんだよ……。今日は日曜だっていうのに……」


 無理やり布団を剥ぎ取られ、凍りつくような朝の空気に晒された。

 和泉響華。僕の幼馴染で同い年。

 家が隣同士なので生まれた時からの付き合いになる。

 しかも、幼稚園も小学校も中学も高校もずっと同じ学校で一緒のクラスなのだ。


 日曜日くらいは一人にさせてほしい。

 そんな僕の気持ちなど響華には関係ないのだろう。

 寝転がっている僕の上で仁王立ちをしながら響華は言った。


「陽佑、どうせ暇なんでしょ。ちょっと付き合ってよ」


「暇じゃないよ。朝起きたらログボの回収をしてイベントの周回をするっていう大事な仕事があるんだから」


「じゃあ早く着替えて。一緒に買い物に行くわよ!」


「話聞いてる? 僕の意思は?」


「私の買い物に付き合う事の方が大事でしょ。3分で支度して! 逆らったらカマキリロックの刑だからね!」


 響華はそう言って部屋を出て行った。

 文句は沢山あるものの、カマキリロックの刑が怖いので仕方なく言う事を聞く事にした。


「遅いわよ! 5分も経ってるじゃない! 2分遅刻!」


「そんな……。寝起きから5分って十分頑張った方だろ」


「口答えしない! さあ行くわよ!」


 いつもこんな感じだ。強引すぎる。

 強引なだけならまだいい。

 こうやって引っ張り回すだけでなく、気の弱い僕が怖がるのを面白がっている節があるのだ。

 例えば、映画を観に行こうと言っては、強引にホラー映画に連れて行く。

 嫌だって言っているにもかかわらず無理やりだ。

 文句は何度も言っている。だが、返ってくる答えはこうだ。


『勘違いしないでよね! 陽佑の悲鳴を聞かないと映画を観た気がしないだけなんだから』


 なんて酷い理由だろうか。自分が楽しむためなら付き合わされる僕の気持ちなんてどうでもいいのだ。



「で、買い物って今日は何を買いに行くんだよ?」


「スーパーでサバ缶がお一人様10個限りのセールをやってるから、それを買いによ」


「サバ缶!? 僕は鯖の缶詰なんかを買うために日曜の朝から叩き起こされたのか!?」


「鯖の缶詰なんかとは何よ! 美味しいでしょ、サバ缶!」


「そりゃあ美味しいかもしれないけど、女子高生が日曜の朝からサバ缶を買いに行くのはおかしいだろ。それに二人で行って10個以上買うつもりなのかよ」


「何言ってるのよ。二人で20個買うに決まってるでしょう。ムダ口叩いてないで急ぐわよ。売り切れちゃったら陽佑のせいだからね!」


 理不尽だ……。

 とはいえ、無事にスーパーでサバ缶20個は買う事ができた。


 その帰り道に事件は起こった。

 いや、正確に言うと事件ではなく事故か……。


 響華が道端に転がっていた石に躓いてバランスを崩し、サバ缶が1個コロコロと転がっていった。

 慌てた響華はそのサバ缶を追いかける。


 なんてベタな展開だろう。

 そこに一台のトラックが突っ込んできたのだ。

 

 反射的に身体が動いた。僕は響華を突き飛ばしていた。


 ◆


 気がつくと僕は真白く果てなく続く地面に、真っ青な空だけの奇妙な空間にいた。

 そして、上空から一人の白い服を纏った女性が舞い降りてきた。


「やっと目覚めましたねヨースケ。意識は大丈夫ですか? 自分が誰だかわかりますか?」


「ええと。僕は確かトラックに轢かれて……。これってやっぱり僕は死んでしまったって事ですよね」


「ええ。理解が早くて助かります。自分が死んだという事をなかなか認めてくれない人も多いですからね」


「という事は、あなたは女神様ですか? 僕はこの後どうなるんでしょうか?」


「そう。実はあなたにお願いがあるのです。ある世界に転生をして救ってもらえないでしょうか?」


「なるほど。そういう事ですか……。わかりました。いいですよ」


「えっ!? やけにあっさりしていますね。元の世界に未練とか、私に何か質問とかないんですか!?」


「そうですね。転生したらやっぱり特典として何かすごい能力とかチートステータスとかが欲しいんですけど、そういうのって貰えるんですか?」


「ステータスは初期から最高レベルの設定にしますし、特別に一つだけ願いを叶えてあげるという特典もありますが、他に私に訊きたいことがありますよね?」


「他に訊きたいこと?」


「ほら、あなたはどうしてトラックに轢かれたんですか? その原因をよく思い出してください」


「原因ってサバ缶でしたっけ?」


「そうですが、そうではなく……」


「そうだ……。響華は? 響華はどうなったんですか?」


「ああやっと思い出しましたね。彼女でしたら元気にしていますよ」


「そうか……。良かった……」


「良くないわよ! 何で言われるまで私の事を訊かないのよ!! 普通一番最初に確かめるでしょっ!!!!」


「うわあああああああああっ!」


 急に背後から聞き慣れた声で怒鳴られ、僕は驚きすぎて叫び声を上げながら尻餅をついてしまった。

 見上げた視線の先にいたのは……


「響華!? どうして響華がここにいるんだ!?」


「どうしてって、死んだからに決まってるじゃない」


「でもさっき女神様が元気にしてるって……」


「ご覧の通りすごく元気にしているでしょう? お亡くなりにはなっていますけど」


「えええ……。という事は僕らは二人ともトラックに轢かれて死んじゃったって事……?」


「ほんとバカよねあんた。助けられないなら放っておけばいいのに自分まで死んじゃってどうするのよ」


「バカはないだろ。せめて助けようとした心意気は汲んでくれよ」


「そうですねー。ヨースケさんがキョーカさんを突き飛ばしたりしなければ、二人してトラックの下敷きになる事もなかったんですけどねー」


「えっ? どういう事ですか!?」


「トラックもだいぶ減速していましたからね。普通にはねられていればキョーカさんは打撲程度で済んだんですよ。それが、二人が縺れて地面に倒れこんでしまったものですから、トラックのタイヤで二人まとめてグチャッと一つの肉塊になってしまいましたからねー」


「うぇっ……。想像させないでくださいよ……。そんな凄惨な死に方だったんですか」


「何よ情けないわね。何でそんなに嫌そうな顔してるのよ。」


「いや、そっちこそ何でちょっとニヤけてるんだよ。スプラッタ映画が好きなのは知ってるけど、自分たちがそうなったのを想像して喜んでるのはさすがに引く」


「に、ニヤけてないもん! それより陽佑、あんた今の話を聞いて何か私に言わないといけない事があるんじゃない?」


「……そうだね。ごめん響華。助けられなかっただけならまだしも、僕のせいで死んでしまったって事だもんな。謝って許してもらえるような事じゃないけど……」


「陽佑のせいとか、そこまでは言ってないでしょ。私が言いたいのはアレよ。責任を取りなさいって事よ」


「責任を取れって言われても一体どうすればいいのか……」


「だから、責任って言ったら決まってるでしょ。わ、私と結婚しなさい!」


「結婚!? 何言ってるんだ? 僕たちもう死んでるっていうのに」


「女神様の話を聞いたでしょ。これから私たちは二人で異世界に転生するのよ。転生先で責任を取ればいいじゃない」


「転生先で結婚なんて出来るのか? そもそも16歳だから響華はともかく僕は結婚できる年齢じゃないし」


「ヨースケさんが起きる前にキョーカさんには話したんですけど、転生先の世界では男女ともに15歳から結婚できますので大丈夫ですよ」


「そうなんですか? いや、でもなあ……」


「何よ! 私の人生を台無しにしておいて責任取れないって言うの?」


「わ、わかったよ! それで響華の気が済むならそうするよ」


 半分脅迫に近いけど、僕に責任があるのは間違いないし仕方がない。


「話はまとまりましたか? それではこれからの話の続きをしましょう。転生するに当たって、叶えて欲しい願いを一つずつ言ってください。私に出来る範囲で叶えてあげます。特殊スキルでも極振りステータスでも何でもいいですよ」


「私はやっぱり魔法ね! 私、小さい頃からずっと魔法少女に憧れてたのよ!」


「いや、魔法少女って。16歳にもなって魔法少女は無理があるんじゃないか?」


「は? 何か文句ある?」


「……ごめん。文句はないです」


「まあまあ。わかりました。それでは響華さんはあらゆる属性の魔法を使えるようにしてあげましょう。ヨースケさんは何がいいですか?」


「え? 僕ですか? どうしよう……」


「早くしなさいよ! 全く優柔不断なんだから」


 そんな言い方しなくても。これから結婚しようという相手がこんな調子だと先が思いやられるな……。

 そうだ! こうしよう。


「女神様。僕はこの怖がりな性格を治したいです!」


「何よその使えない願いは! もっと冒険に役立つスキルとかにしなさいよ!」


「そんなに怒鳴らなくても。怖いって……」


「怖いって何よ!」


「うーん。人の性格を矯正するというのは女神的には禁忌なんですよね」


「どうしてですか?」


「人格を歪めてしまってはわざわざ異世界の人間を転生させる意味が無くなってしまいますから。禁止されているんです。……まあでも分かりました。なるべくヨースケさんの意思を汲み取った上で、特別なスキルを与えましょう。話が長くなってしまいましたが、もう時間です。それでは二人とも頑張ってくださいね」


 女神がそう言って手を上空にかざした瞬間、空が開き、僕らはその穴に吸い込まれていった。



 「なによこれぇえええええ!!」


 耳をつん裂くような甲高い声に驚いて、僕は目を覚ました。


 「うわぁあああああ、って、え!?」


 僕の目の前にいたのは小さな女の子だった。

 何だろう。どこか懐かしい見覚えのある顔だけど。


「なんでヨースケはふつーなのに、わたしだけ小さくなってるの!?」


「響華!? 響華なのか? なんか凄く若返ってるけど」


『あーあーもしもし。聞こえますかー?』


「女神様!? 何か頭の中に直接声が響いてくる!?」


「わたしだけ小さくなるなんて聞いてないわ! 説明しなさいよ、っていうか元に戻してよ!」


『落ち着いてくださいキョーカさん。私はあなたをちゃんと元の16歳の身体で転生させましたよ』


「これのどこが16歳よ!」


『そうですね。その原因を説明しましょう。ヨースケさん、ステータスと唱えてスキルを確認してみていただけますか?』


「あっ、はい。ステータス!」


 僕がそう唱えると、目の前にゲームのようなステータス画面が現れた。スキルの欄を確認すると、そこに書かれていたのは……。



スキル 幼女化ピュアライズ


 術者が恐怖を感じる対象を幼女にする

 対象レベル1 

 有効範囲 半径100m


 レベル1:少女を幼女に変える

 レベル2:成人女性を幼女に変える

 レベル3:少年を幼女に変える

 レベル4:おじさんを幼女に変える

 レベル5:全てを幼女に変える

 レベル6:世界が幼女になる



「……なんですかこれは?」


『ほら、ヨースケさん。怖がりを治したいって言ってたじゃないですか? 性格の矯正はできないので、それなら怖い相手を怖くないように変えるスキルをつければいいと思って』


「バカじゃないの! それでなんでわたしが幼女にならなきゃいけないのよ!」


『それは、ヨースケさんがキョーカさんを怖いと思っているからですね』


「は? なに言ってるの? わたし怖くないでしょ。こわくないわよね?」


「確かに……。普段だったらこうやって凄まれるとめちゃくちゃ怖いけど、幼女に言われても全然怖くない」


「ふざけんな! ふだんからこわくないでしょ! このロリコン!」


「ロリコンって何だよ! 人聞きの悪い。でも有効範囲100mって書いてあるぞ。僕から離れれば元の姿に戻るんじゃないか?」


『仰るとおり。二人が離れれば元に戻りますよ。幼女の姿が嫌だというなら、お二人で別々に行動するしかないですね』


「いやよ! 結婚したばっかりなのに、なんでいきなり別れないといけないのよ!」


「あ、その約束覚えてたんだ。でもさすがに幼女と結婚は問題あるだろ。こっちの世界の法律でも結婚は15歳以上って言ってたし」


『あ、大事な事を言い忘れていましたが、こちらの世界ではロリ婚は即、死罪ですので気をつけてくださいね』


「えっ!? 響華、やっぱり別れて行動しよう。死刑は嫌だ!」


「別れるなんて絶対にイヤ!」


 異世界転生特典でイージーモードになるはずだったのに、僕だけいきなりハードモードなんですが……。

 この力が後に最強のチートスキルになるなんて、この時の僕はまだ知る由もなかった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 範囲100メートル全て(世界)が幼女になる、って…… いや、怖いもの、だから世界全て恐れるとかじゃなきゃ発動しないか。 ……いや、過剰反応する可能性も……? 範囲広がりそう? [一言…
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