博物館
そろそろ日が傾き始めた頃。
途中に少々事故はあったが、シェパードは今日の目的地である街にたどり着いた。
今日はここで一泊し、明日首都へ向けて出発する予定である。
「ようこそ、旅の人。今時馬とは珍しい」
街の入り口にずっと立っている男が話しかけて来た。
「これしかおらんかったでな。ところで、お前さんは?」
「俺はこの街の警備をしつつ、来訪者への案内を請け負ってるんだ。やっぱり爺さんも、今やってる博物館が目当てかい?」
「博物館? 何の事じゃ?」
「そうか知らなかったのか。この街の外れにでっかい屋敷があるんだが、そこの主が期間限定で屋敷の一部を解放して、博物館を開いてるんだ」
「ほぅ。で、何を出しとるんじゃ?」
「近年目覚ましい活躍をしている、今の国家錬金術師達の事だ。これまでの功績や、公開が許されている情報などがまとめて展示されているんだ」
「錬金術師、とな」
「今から行けばまだ間に合うとは思うけど、明日ゆっくり見に行ってみたらどうかな」
「ありがとう、良い話が聞けた」
「お役に立てて何よりだ。良い旅を」
その後街の中に入ったシェパードは考えた末、今日博物館に立ち寄り、明日予定通り出発する事にした。
本来予定に無かった場所だが、元々この街で一泊する予定だった事と、まだ時間と体力に余裕がある事から、今日の内なら計画に支障は無いと判断してだった。
それに、実際に会う前に息子の事をもう少し知っておくのも良い、と思ったのもある。
「ここじゃな」
街の至る所に案内板が立っていたため、博物館へは容易にたどり着いた。
自由解放されている館内に入ると、なるほど博物館らしい様々な展示が、所狭しと並べられていた。
「ふむふむ、そうじゃったのか……」
そもそもシェパードは、錬金術師と言う職業がどのようなものかすら、ろくに理解していなかったのだ。
それは、一般人にとっては魔法とも呼べるような、世界の真理を逆手に取る職業だった。異なる世界では科学と呼ばれる領分である。
「しかし、具体的に何をやってるかは分からんのぅ」
一般向けの展示物のはずだが、やけに専門用語が多く、読解はできなかった。
諦めて先に進むと、次は現在活動中の国家錬金術師達それぞれの紹介がされていた。
「ほう、これが息子か……」
最近の物と思われる肖像画なども飾られており、詳細は不明だがやはり首都のどこかに研究所があるらしい。
そうして展示物を眺めていると……
「全員動くな! ここは我々が占拠した」
きな臭い台詞を吐く集団が、一斉に雪崩れ込んで来た。