弱者の在り方
シェパードは壁の上の村人に言われた通り、村の反対側まで壁沿いに進み、目標である次の街道に入ろうとしたその時だった。
「何じゃ?」
突然、空から大量の矢が降って来た。
「おおぉぉお!」
次々と屋根に穴が空き、中の肉や外で健気に走る猪が矢まみれになっていく。
やがて車は完全に破壊され、猪も動かなくなってしまった。
「何が起こったんじゃ一体……」
不思議な事に、外に放り出されたシェパード本人はなぜか無傷だった。
周囲を見渡すと、村の壁の上で大勢の人達が弓を構えていた。すべて例外無くこちらを狙っている。
「悪いな爺さん、この村に近付く奴は必ず殺す決まりなんだ。運が悪かったと思って、大人しく死んでくれ」
「なぜそんな決まりがあるんじゃ?」
「村の存続の為だよ。さして強くない俺達が生き残るには、常に殺られる前に殺るしか無いんだ」
「ふむ、そうか……致し方あるまい。ならせめて、こちらも生きる為に抵抗させてもらうぞい」
「撃てぇぇぇ!」
降り注ぐ矢を腕で弾きながらシェパードは壁に肉薄すると、壁を支える柱に拳を叩き込んだ。
ベキッ!
柱にひびが入り、やがてゆっくり傾いていく。もちろん柱に支えられていた壁も崩れ落ち始める。
「壁が崩れるぞ、みんな降りろ!」
その指示も空しく、壁の上にいた者達は全て、あえなく壁と運命を共にした。
最終的には、一繋がりだった事が災いし、村を取り囲む壁は連鎖的に全壊した。
「俺達を、どうするつもりですか?」
ここは村の中央。
生き残った(攻撃に参加しなかった)村人達全員が集められ、シェパードと対峙している。
最初に道案内をしてくれた男が、代表として話をする事になった。
「そうじゃな。ワシを攻撃してきた戦力は壊滅したようじゃし、これ以上何かするつもりは無いが……」
「移動手段や物資が必要なら、好きに持って行って下さい。壁も自衛能力も失った以上、どうせ俺達は間もなく死に絶えるでしょうから」
「では好きにさせてもらおう。それよりひとつ、聞きたい事があるんじゃ」
「何ですか?」
「お前さん達は、何故そこまでして生き続ける事にこだわるのじゃ?」
「……生きる事に理由が必要ですか? 俺達は目的があるから生きてるんじゃない。ただ生き続け、未来を子に引き継ぐ、それこそを目的にしているんです。生きていく事が当たり前であるあなたには、理解できないのでしょうけど」
「ふむ、そんなものか」
「それだけですか?」
「そうじゃな。では行くとしよう」
馬車一揃いとそれに積めるだけの食糧をもらい、シェパードは滅びの宿命が待つ村を後にした。