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そうだ、息子に会いに行こう。  作者: 氷上人鳥
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馬車……?

 ここから首都へは、馬車を使っても二日はかかる。食堂を出た後、シェパードは準備のため一度家に戻り、所持金や道具を確認した。


「まぁええか。金さえあれば旅先でどうにかできるじゃろう」


 そう言って持てるだけの金だけ持って、老人は息子に会うため家を出た。


 村にある馬車の停留所に着くと、そこには不思議な光景が広がっていた。


「おや? 馬がおらんのぅ」


 そして馬の代わりに、なぜか猪が車に繋がれていた。

 切符売場で話を聞いてみる。


「そうなんですよ。大変異以後、速度、持久力、丈夫さ共に馬より優れた猪が発見されましてね。今では(こちら)の方が主流なんですよ」


 との事だった。


「特に丈夫さは、今や交通には必須ですからね。馬なんてもう使い物になりません」


 これも時代の流れかと思いつつ、首都への中継地点となる街までの切符を購入。出発まですぐだったので、そのまま乗り込んだ。


 出発前に聞いた話の真相は、出発後すぐに知れた。

 猪は安定した速度で街道を走って行く……道中にいる様々なものを弾き飛ばしながら。


「これはこれは、なかなか壮観じゃのぅ」


 大変異以降、凶暴化した野性動物や異形化した元人間などが、道行く人を襲う事例が多数発生していた。

 馬の強度ではそれらの輩にあっさり止められるのだろうが、猪は逆にどんどん撥ね飛ばしていく。シェパードは最前席でその光景を眺めていた。

 少々騒音が激しいが、移動手段としては快適ではある。


「なっ!」


 しばらくすると、猪車は突然急停止した。

 外を見てみると、猪が人間らしき何者かに受け止められていた。その他に、数人が猪車をとり囲んでいた。


「へっへっへ。金目の物を全部置いてくなら、命だけは助けてやるぜ」


 もはや説明不要な賊台詞が飛び出した。

 次の瞬間、御者は一目散に逃げ出した。


「みんなこっちだ、早く逃げろ」


 さらに乗客の一人、体格の良い男が他の乗客達を誘導し、車の後部から脱出させていた。


「急げ! 爺さん」


 シェパードも指示に従い下車しようとするが、最前席にいたのもあって自分が最後だった。


「てめぇら手慣れ過ぎだろ! さすがにほぼ全員逃がしちまうとは思わなかったぜ」


 そのせいで二人だけは逃げ損ねてしまった。


「せめててめぇらだけは逃がさねぇぜ。さぁ、金目の物を……って、残ったのは傭兵にじじぃだけか。ツイてねぇ」


「……仕方無い。爺さんは中にいてくれ、俺が何とかする」


 おとなしく従うシェパードの目の前で、男が賊達に向かって行った。

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