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そうだ、息子に会いに行こう。  作者: 氷上人鳥
2/12

ところで息子は……

 息子の元へ行くと決めたシェパードだったが、ひとつ問題があった。


「そう言えばわし、息子(シュナウザー)の居場所を知らんのぅ」


 彼がこの家を出て行ったのはもう何十年も前。昔は錬金術師なる職に就いていると聞いたが、今もそうであるとは限らない。


「ここでこうしてても始まらん。村にでも出て聞いてみるか」


 シェパードは思考を切り上げると、いつぶりかの村に赴いた。


「おぉ、シェパード爺さんじゃねぇか。随分顔を見なかったが、どうしたんだ?」


 村に出て最初に入ったのは、昔からの顔なじみが営む食堂だった。


「とうとう(あいつ)が逝ってしもうてな」


「そうか。大変だったな……」


 今はまだ日が昇って間もなく、客はまだいない。


「この際じゃから、息子の所にでも行ってみようかと思うての」


「お前さんの息子って言えば、あの国家錬金術師のシュナウザー博士だろ? どうだろうなぁ」


「どういう事じゃ?」


 思わせぶりな言葉もそうだが、自分の息子が有名人っぽい事に、シェパードは違和感を覚えた。


「シュナウザー博士と言えば、今やこの国の最重要人物だ。どこで仕事しているかはもちろん、全ての情報が国家機密並ときた。父親であるお前さんでさえ、会わせてもらえるかどうか」


「そうじゃったのか、まだ錬金術師なるものをやってたんじゃな」


 実の父親は、その辺の食堂のオヤジより息子の事を知らなかった。


「絶対無理ってわけでも無いだろうが、あまり期待しない方が良いかもな」


「まぁええ、とりあえず行ってみるわい。とは言え、どこにおるのか」


「おそらく首都のどこかだとは思うが」


「首都か。確か馬車を乗り継いで行くんじゃったか……すまんのぅ、世話になった」


 そう言って席を立とうとすると、食堂のオヤジに呼び止められた。


「せっかくだし、何か食ってかねぇか?」


「おぉ、そうじゃな。じゃあ……ここからここまでまとめて頼む」


「おい」


「大丈夫じゃ、金ならある」


「そうじゃなくて。そんなに食えんのか?」


「最近何だか体の調子が良くてのぅ。そんでもって食欲もすっかり戻ったんじゃ」


「戻ったって量じゃねぇぞ……まぁいい、頼んだ以上はちゃんと食えよ」


 しばらくして次々と運ばれて来た料理を、シェパードは次々と平らげていった。

 そして最後には、空になった食器だけが積まれていた。


「ふぅ、食った食った。お代は置いとくぞい」


「……嘘だろ」


 謎の胃袋の容量を見せつけた老人は、今度こそ食堂を後にした。

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