表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/80

ステージへ

 

 私がバックコーラスをする歌は、冬にリハーサルで歌った『雨そして花と華』と、東城卓人が作詞作曲した新曲『君に会えたから』だった。


『雨そして花と華』はリハーサルでも歌っているので、どんな感じで歌えばいいのかわかっていたが、『君に会えたから』はリハでは合わせずに、現場で始めて合わせる。


 須藤はあのリハーサルの後も、別に機会を設けてグループの歌の指導をしてくれたと、林田さんに聞いた。表向きの理由は『プラス plus』を気に入ったから、だった。


 本当は今回のコンサートの演出にかむことで、バックコーラスの人事を自分が采配できるように持って行ったのだろう。



 私をステージに立たせるために。



 スタッフさんにステージ衣装とメイクの最終チェックをしてもらって、ステージ袖に控える。

 会場はものすごい大声援に包まれていたが、歌に焦点を合わせた私の耳にはまるでイヤホンから聞こえる音のように、クリアーに音が響いていた。


「あと、5分で出番だから。」


 完全にステージモードの須藤が私に話しかけてきた。


「了解。」


 私はイヤホンとマイクを調節していた。


「ありがとうね、KANA歌ってくれて。」

 須藤がまっすぐに私の前に立ち、そういいながら微笑んだ。


患者(クライアント)の誕生祭だから。」

「KANAらしく、好きに歌っちゃっていいから。」


「須藤、KANA3001がでているというアナウンスやクレジットは、なしだよ。」


 そう答えて、私はまたステージに集中する。


 もともとステージで歌うのが好きだ。


 CDとか配信とか動画投稿アプリとか、いろいろな形で、音楽を広めることができるだろう。そしてそれはたくさんの人に音楽を届けることができるだろう。

 でもその場でしか聞けない生歌には、その時の空間、風、温度、湿度、そして聞いてくれる観客、いろいろなものを巻き込んで一つに作られていく。


 今は編集でズレた音を直したり、エフェクトでエコーやビブラートをかけてパッケージとして完成された歌を作りだすことができる。そのほうが耳障りはいいかもしれない。




 安定感のある歌声だからこそできるステージでの生歌。




 それが私の歌の特徴だからこそ、須藤は私をステージに立たせたいのだ。


「KANAさん、そろそろです。」

 ステージの照明が一度落ちて暗くなって、そのタイミングでステージにでる。


 会場は『プラス plus』のファンの熱気が満ちてい圧力のようにステージに押し寄せてくる。



 そして照明がステージを照らして、新しい衣装に着替えた『プラス plus』のメンバーがゆっくりと立ち上がる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ