バースデーケーキ
誕生祭も終盤になり、トークタイムが続く。ゆきのもしっかり声が出ていて、安心できる。
ライブ中盤に、突然曲調が変わってステージの照明が一瞬落とされる。
「誕生日、おめでとう!!!。」
誕生日の歌とともに、舞台袖から大きなデコレーションケーキが運ばれてくる。生クリームに苺がたくさんのった、華やかなデコレーションケーキ。
観客席から一斉におめでとうコールとともに、ゆきのはキャンドルを吹き消す。
さなとまほが、生クリームと苺ののったケーキをゆきのに食べさせた。
ゆきのは、美味しい!とジェスチャーで観客全体にアピールする。
「だいじょうぶ、なんですよね。」
「何が?。」
不意な武藤先生の言葉に、真意が分からなかった。食事の直後に歌うとうまく歌えない、しかしステージの演出として仕方がないところもある。
いつもそう指導しているのに、ケーキを食べるのはよろしくないが、イベントとしては仕方がない。
すると武藤先生はケーキを指さし
「・・・アレルギー。」
「ああ・・・いちごにはRAST(血液でのアレルギー検査)で反応なかったし、念のため負荷試験で食べてもらって大丈夫だったから、許可したの。」
ゆきのの受診とは別にマネージャーから相談があり、ケーキの作成には注意した。ケーキ屋さんにもアレルゲンが混入しないように、説明してケーキを作ってもらった。隠し味にも注意した。
勿論、人間のやることだから、どこかでアレルゲンが混入する可能性はあり、最悪の事態に備えて、 いつでも使用できるようにアドレナリン注射液自己注射は持参してある。
ケーキの演出の後はしばらくメンバー間でのトークが入る。トークを見守ったが、ゆきのさんの発声には異常はないようだった。緊張感がほぐれていく。
この後に最後の曲にバックコーラスとして入るために舞台裏にまわることになっていた。
「KANAさんそろそろです。」
気が付くとスタッフがすぐそばまで迎えに来ていた。昔、フェスの裏方にいて、一緒に働いたことのあるスタッフだったと思う。
「了解。」
私は静かに席をたつ。
「新川先生、頑張って下さい!。応援します。」
「楽しみですー。」
武藤先生と野村さんもささやき声で私を励ましてくれた。その声援に送り出され、私はステージ裏に向かった。




