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ステージ裏で

 誕生祭は野外ホールで、午後3時から夕方にかけて行われることになっていた。

 朝からさわやかに晴れていて、湿度も低かったので熱中症になる人も少ないだろう心地の良い天候だった。


 コンサートに向かっているであろう観客は、圧倒的に男性が多かった。年齢層は幅広く、『プラス plus』の人気を感じることができた。


 チケット確認の後に、関係者用の出入り口に回された。


「新川先生、待っていたよ。」


 関係者席の入り口のすぐ先で須藤が待っていた。新川先生と呼び掛けてきたのは、私がKANAと気が付かれないようにするためだろう。武藤先生と野中さんを連れて、そのまま裏のスタッフ控室にいったん入る。


「須藤、紹介するね。今日はクリニックの武藤先生と野中さんと一緒に来ました。」


「こんにちは、ボーカルトレーナーの須藤です。」


 須藤は武藤先生と野中さんに名刺を渡した。私自身は須藤の名刺をもらったことはなかった。須藤が名刺を持っていたのが意外だった。


「ああ、これ?KANAには渡してなかったよね。」


 須藤は私にも名刺をくれた。

「この前、急にリハに入ったりしたでしょ、交渉事には名刺あったほうが便利かなと思って。」


 ちくりと私に言う。私はそれを笑って受け流した。


 事情を知らない武藤先生と野中さんは控室の光景を興味深そうに見ていた。


「結構、荷物が多いんですね。」


 野中さんの言葉に


「ああ、ここはスタッフの控室だから、『プラス plus』の部屋はもっと女子力があるわよ。」


 須藤は舞台用に体にフィットした黒のパンツとシャツワンピースに着替えた。きっちり化粧をした須藤は只者でない感が体からにじみ出ていた。


「KANAの衣装もこの中にあるから、上着の下着替えといて・・・通気性いい素材だから暑くないと思うよ。」


 もう衣装準備してあるのか、やる気だなあ・・・。


「了解。」


 衣装に着替えるためパーテーションで区切られた着替えスペースで着替える。

 着替え終わって、戻る時に、楽屋の端に設置してある軽食スペースが目に入ってきた。そこには休憩中に食べるサンドイッチと差し入れのシュークリームが置いてあった。アイスコーヒーと紅茶と書かれたピッチャーが添えてあった。


「念のためだけど、『プラス plus』の差し入れや食事ってどうなっている。」


 私の確認にはすぐ須藤が答えた。


「私、チェック入れたから大丈夫。」


 周りのスタッフもうんうんと頷く。誕生会を成功させるためにスタッフが一丸となっている。

 あれ、よく見ると・・・


「だから、KANAは思うように歌って。」


 KANA3001時代にお世話になったスタッフさんがいた。これは須藤が声をかけたのか、偶然かその場では測りかねた。



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