【閑話】 まほの場合
バックコーラスの一人による個別指導が始まった。
さなが須藤先生に教えてもらえることが決まって、すごく喜んでいた。私もほっとした。
ゆきのが須藤先生のボーカルトレーニングに通うようになって、さなは心穏やかでない感じだった。さなは向上心の塊で、努力家タイプだ。天性のアイドルといえるゆきのとは違う。
さなこそ教わるべきだと私は思っていたが、それは私が口を出せる話でもない。
「まほさん、始めましょう。」
始めは何気ない発声練習で無難に終えた。
「今日の新曲歌ってみて。」
「はい、全パート歌っていいですか?。」
曲の準備の間に、奥で指導を受けているリリアが目に入る。いつも斜めに構えているリリアが・・・焦っているのか、珍しく前のめりに話を聞いていた。
前奏のあいだに、須藤先生におしえてもらっているさなが、一番得意な曲を歌っているのが目に入ってきた
ステージの隅ではゆきのがダンスしながら歌を歌っている。
私も歌に集中しなければ。
歌が終わると、指導している先生が腕を組んで考えている。
「あの・・・どうでした。」
「・・・。まほさんは自分のポジションをどう考えている?。」
「ポジション・・・。リーダーというか。」
「まほさん周りに気を使っているけど、このグループを盛り上げようとしたら、あなたのレベルを上げないと。」
「・・・えっ、でも、みんな上手くやれるようにしたいので・・・。」
私はうろたえた。このグループで作り上げた自分の役割。グループの発展のために・・・
「まほさんはもっとアイドルとしてトレーニングしないと。」
「アイドルとして・・・?。」
私は自分のポジションを築いて、そこに安住しているように見えると言う。もっと冒険している感じ、弾けた感じがないと『プラス plus』が発展しないと言われた。
すべき、とか一番ベストとかにこだわって、管理職みたいになっていて、
「まほさん、アイドルを楽しんでいる?」
楽しむってなんだろう。




