表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/80

対応方法

 牧野マネージャーはメンバーの喉の調子が良くなるように、果物や蜂蜜などを入れたデトックスウォーターを作っていた。ネットや本も購入して、熱心に勉強していた。


「いや・・・そんな、だって喉の調子が良くなるように作っていたのに。」


 ああそうか・・・。もしかしたらマネージャーは喉の調子が良くなるように作っているデトックスウォーターを、飲んだ後に調子を崩す林田さんに、無意識に嫌悪感をもっていたのかもしれない。


「デトックスウォーターの中には何を入れていました?。」


 私はマネージャーが責められていると思わないよう、細心の注意を払いながら話しかけた。


「・・・その日によって違いましたが。リンゴの皮やオレンジ、レモンやライム、ユズなど柑橘類を入れたり、季節によってはブドウやイチゴを使っていました。」


「その日によって、レシピは異なっていたんですね。いつ、どのレシピで作ったかわかりますか?。」

「・・・それは、わかりません。」


 私はタブレットに「プラス plus」の事前に調べてまとめておいた、ブログや写真投稿アプリの画像を表示した。楽屋でとった写真にはデトックスウォーターがうつりこんでいるものもあった


「ネットの画像を拾ってみたのですが、ピントが合わなかったり、症状が出た日の画像はアップされていないので、どの成分が原因かは絞れませんでした。」


 私が画像の一覧を見せたときにマネージャはその画像を凝視していた。準備された大量の写真はまるでストーカーのやり口に見えたかもしれない。


「どうしたらいいんですか?。薬はあるのですか?」


 立ち上がって、やや興奮した様子で聞いてくる牧野マネージャーに私は落ち着いて、ゆっくりと答えた。


「果物を食べないようにすればいいんです。飲まないようにすれば大丈夫。」

「ああ・・・そうですね・・・。」


 牧野マネージャーはへなへなと力なく座って、大きく息を吐いた。


 林田さんがこちらを見て、


「アレルギーがひどくなったりはしないですか?。」


 その質問に答えるため、オーラル・アラジー・シンドロームについての資料を見せながら説明する。


「一般的には口腔や唇がピリピリしたり、腫れたりする症状がメインです。その後、皮膚症状、咽頭部の浮腫、腹痛や下痢、悪化すると血圧が下がって、意識を失うことがあるアナフィラキシーショックを起こすことがあります。・・・念のため今日はアナフィラキシーになったときに対処するための治療薬、アドレナリン注射液自己注射キット製剤を処方しますね。」


 アナフィラキシーショックについてパンフレットを使って、マネージャーと林田さんに説明した。二人とも半信半疑だったが、徐々に症状が悪化しているようだったので、ショックを起こしていないものの、アナフィラキシーになっている可能性は高いと判断しての説明だった。


 アナフィラキシーを起こした時に有効なエピペンを処方し、田島さんに自己注射の指導をお願いした。役に立つときが来ないといいと思うが、緊急時に備えることに意義がある。


「日常生活においては、食事の時に生の果物の接種に注意してください。熱が通っていれば問題がないことがほとんどです。皮膚を通じてアレルギー物質を取り込むことがアレルギーを悪化させるので、化粧品の成分にも注意が必要です。」

 林田さんは、はい!はい!と熱心に聞いていたが、マネージャーは心ここにあらずという感じで椅子に座っていた。

 診察が終了し、二人は外に出た。


「すみません。いいですか。」


 すぐにドアをノックしてマネージャーが入ってきた。


「はい、何か?」


 牧野マネージャーは椅子に座らずに私に話しかけてきた


「自分が良かれと思ってやってきたことが、原因だったなんて・・・。」


 私は椅子を回して、正面からマネージャーを見つめ、そして


「だから、林田さんが具合悪くなるとイライラしていたんですよね。」

「え?」


 動揺するマネージャーに声を続けた。


「これだけ自分が気を配ているのに、体調が悪くなる林田さんにイライラしていたんですね。」


 マネージャーは瞬きせず、目を大きく見開いて、それを私は黙って見つめていた。幾ばくかの沈黙の後に、


「・・・そうだったかもしれません。先生に気が付いていただいて、本当に良かったです。」


 マネージャーは二回頭を下げてそれから部屋から退出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ