診断名は
林田さんの再診日はリハーサルの翌週の金曜日午前中だった。貧血の改善を見るため先に採血し、結果を待ってもらった。牧野マネージャーは、他の現場のヘルプに入っていたようで、診察の少し前に到着した。
「お待たせしました。」
林田さんを診察室に呼び込んだ時には午前10時半を過ぎていた。
「よろしくお願いします。・・・新川先生、この前はお世話になりました。」
「こちらこそ、お騒がせしました。」
林田さんはいたずらっぽい笑顔で話しかけてきた。
診察介助についていた看護師の田島さんは、少し不思議そうな顔をしていた。牧野マネージャーは前回の診察中のやり取りのことと思ったのか、特に表情を変えずに、林田さんの後ろに立っていた。
あのリハーサルのバックコーラスの一人が私だったとは考えてもいないだろう。
「その後は体調はいかがですか?。」
「特に異常ないです。調子悪くならずに、先週末のイベントも問題なく出演できました。」
その言葉にゆっくりと頷いてから、一通りの身体診察をして、検査結果の説明を開始した。
「貧血も改善されて、血液中の鉄分も正常化しました。」
データを見せながら説明すると、林田さんとマネージャーはその説明を頷きながら聞いていた。
「ところで。」
私は一呼吸間をおいて、林田さんとマネージャーに向き合い、にっこりと微笑みながら
「林田さんの症状の原因が分かりました。」
えっ、
と林田さんとマネージャーが小さく声を上げた。
「・・・病気が分かったんですか。」
林田さんの言葉にかぶるように
「病気だったんですか?。」
と、マネージャーが私に聞いてきた。
私はゆっくり話し出した。
「ええ。まだ、最終診断ではありませんが、林田さんの症状はオーラル・アラジー・シンドロームによるものだと思います。」
私のその言葉に林田さんはきょとんとしていた。マネージャーがも分からない・・・という顔をして、
「オーラル・アラジー・・・とは、なんですか?」
「つまり、食物アレルギーの一種です。」
診断までにずいぶん時間がかかり、申し訳ないです。




