一緒に食事を(武藤視点)
「武藤先生も帰る?」
カンファレンスが終わり、クリニックの入っているビルの外に出ると、ちょうど新川先生と帰るタイミングが重なった。
「・・・ええ、あがります。」
「カンファレンス、時間かかったね。」
新川先生は寒そうに白い息を吐きながら、ストールを巻いていた。
「さっきのカンファレンスでの林田さんの話・・・原因は確信があるんですか?。」
そう話す僕の息も白い。立ち話をするには2月の夜の屋外は寒かった。
僕の言葉に、新川先生は意外そうな顔をして振り返った。
「え?・・・多分ね。確かめないといけないことがまだ残ってはいるけど。」
言いながら新川先生は、はっと僕を見て少し大きな声で誘ってきた。
「ねえ、食事に行きたいところがあるんだけど、付き合って!。」
新川先生に食事に誘われることなどない、と思っていた。
それは、自分に対する好意のあるなしとは別の問題だった。新川先生はほとんど食事をしない人だったからだ。今までも食事に何度か誘ったことはあったが断られていたし、歓迎会などで一緒になった時もほとんど食事をしていた印象がない。
だから今日のように突然、新川先生に誘われて、彼女の運転で食事に行くなど、想定外だった。
新川先生の車は、彼女の印象に不釣り合いな黒いワゴン車で、後ろには救急患者に対応ができる装備がそろっていた。車いすや最低限の輸液セットなどが用意されていた。内側からカーテンが閉まるので車の中で応急処置ができるようになっていた。
ムーディーとは言えない、簡素にかたづいた車の中は、背の高い自分でもゆったりと乗ることができた。
「何を食べに行くんですか?。」
「焼肉だけど・・・武藤先生食べられるよね。」
「・・・新川先生が焼肉?。」
「まあ、たまにはね。」
ふふふと新川先生は笑った。
携帯で店の電話番号を調べて、ナビに入力した後に車は出発した。
運転中の車内には聞いたことがないKANAの曲がかかっていたが、未発表音源なのかもしれない。もう何度も車の中で歌っているのか、新川先生は運転しながら、時々口ずさんでいた。
「ここよ。」
30分ほど走った後に車が止まったのは、東京のはずれにある焼肉店の駐車場だった。
「本当に焼肉店なんですね。」
車を降りながら、新川先生に確認するように話しかけた。ものすごく高級店とか、何か特殊な志向があるお店かと思ったが、ごく普通の町の焼肉店だった。
「私一人だと入りにくくて、武藤先生に一緒に来てもらったのよ。」
新川先生はあまりご飯食べない人設定。




