カンファレンスで
翌週の月曜日の抄読会の当番は武藤先生だった。
当初、週一回の勤務で抄読会をやってもらうのは申し訳ないと葉山先生は無理強いしないようにしていたが、武藤先生は軽くこなしていた。テーマは最新の音響分析の論文で、野中さんが目をキラキラさせて聞いていた。私も知らないことがたくさんあったので勉強になった。
症例のカンファレンスでは、葉山先生の患者の末期癌の大御所歌手の治療方針決定に時間を費やした。葉山先生とも付き合いが長い彼は、看護師の寺野さんがお気に入りで、いくらでもお金を積むから、彼女をプライベート・ナースとして雇いたいと言われてしまったため、当院だけでは、どうにもならなくなってしまったからだった。
ある程度話がまとまると、葉山先生から、
「すまないね、時間が押してしまったね・・・。新川先生の症例はなにかある?」
葉山先生も疲れているように見えて、申し訳なかったが、私は、準備していた林田さんのプレゼンテーションを開始した。
「こちらをご覧ください。」
カンファレンスルームの電気を消して、3Dプロジェクターの映像を見やすいように調節した。
院内スタジオで録画した林田さんの画像が3D再構成されて、カンファレンスルーム内に映し出される。まるでCGのキャラクターが手前に表示されたように、360度回転したり、口元をアップにして観察することもできる。
「うーん、やっぱり歌い方は及第点よね。問題ないと思う。」
小早川先生は、林田さんの3Dをアップにしたりいろんな方向にぐるぐる回して、全方向から眺めることで、問題がないのか確認していた。葉山先生も同意している。
「・・・やっぱりかわいい。」
野中さんのつぶやいきは私の耳にも聞こえてきたが、あえて聞こえなかったことにした。
さらに、先日のリハーサルに潜入した結果、練習方法にも問題がなかったことをプレゼンした。もちろん、自分がバックコーラスで参加したことは触れていない。あくまで設営のスタッフに紛れて、潜入したことにした。動画もところどころ隠し撮りしたのだが、肖像権の問題と、私自身がステージに立っているのはさすがに皆に見せられないため、そのことには触れなった。
リハーサルに潜入する件を伝えてあった葉山先生が、肘掛けに肘を置き、頰づえつくように斜めに座り、2-3回大きなため息をついていたのは多分気のせいだろう。
「林田さんの症状の原因は、まだつかめていないんだね。」
葉山先生が確認のように話始めたが、
「いえ・・・。原因はわかりました。」
私が遮るように話し始めると、えっ?と葉山先生は声を上げた。
そして、カンファレンスルームにいたスタッフもいっせいに私を見た。
私はプロジェクターの接続を切り替えて、リハーサルで撮ってきた写真を映し出した。
「原因はこれだと思います。その根拠は・・・。」




