楽屋で見たもの
林田さんは、普通に話ができていたし、今も普通に話ができているので、調子を崩さずにいられたのだろう。
私たちが楽屋に入ってた時は、まだメンバーは誰も着替えておらず、ステージで練習していたとき衣装のままだった。
髪の毛をとかしたり、メイク崩れを直したあとはあった。リリアは化粧を直したのか、メイクの感じがリハーサルの時と変わっていた。
それぞれのスマホが無造作にテーブルの上にあったが、どれも待機画面で通知が来ていなかったから、リハーサルの後、一度はチェックしているのだろう。
部屋の中央のテーブルには、休憩中に配ったペットボトルの水と、配られなかったスポーツ飲料、ポットに入ったホットコーヒーとテーブルの隅にレモンとオレンジと苺の入ったデトックスウォーターが置いてあった。飲み物を入れたばかりなのか、マグカップからは湯気が上がっていた。
差し入れを開けたと思われる有名ブランドのチョコレートとクッキーがテーブルの上に置いてあった。少し手を付けた様子はあったが、ほとんどがまだ残っていた。
特に問題ない、アイドルの楽屋だった。
そして、今日は林田さんは体調を崩さなかった。
「・・・ありがとうございました。」
「じゃあ、次回合えた時の成長を楽しみにしているから!!」
須藤のセルフトレーニングのレクチャーが終了したため、部屋を後にすることになった。
須藤の楽屋に帰ると、入り口のドアの前で私服に着替えたMARINAさんが須藤と私を待っていた。
「今日はありがとう。」
MARINAさんは須藤にハグしてきた。
「こちらこそ、ありがとう。」
須藤が返すと、
「メンバーも勉強になったし・・・なにより、KANAに会えて良かったよ。」
私にも勢いよくハグしてきて、そのままの勢いで一緒に楽屋の中に入った。
荷物をかたづけつつ、昔懐かしい話や次にプライベートで会う約束をしていたが、その途中で
MARINAさんが
「そう言えば・・・。」
声のトーンをおとして。
「さっき、何か気が付いたことがないかって言われて、考えたんだけど。ゆきのが、声が出なくなるとね。」
「声が出なくなると・・・?。」
須藤は補足するように聞き返した。
「牧野マネジャーがすごく不機嫌になるのよね。」
「・・・不機嫌?。」
私はつい、疑問形で返事をした。
心配するとか、困ってしまう、とかなら分かるが不機嫌になるというのは・・・?初診の時に病院で感じた違和感を思い出す。・・・違和感。
「体調悪いのに不機嫌になるなんて、あのマネージャー最低だね。」
須藤も腕を組んで、怒ったように話す。
「マネージャー的には体調良くなるようにオリジナルのドリンク作ったりとか、食べ物差し入れしたりとかいろいろしているから、それなのに、体調が悪くなるのはおかしいという理論?みたいな。」
MARINAさんはまくしたてるように話した。
「いろいろ思い返していたら、ゆきのがかわいそうに思えてきて・・・。KANA、原因を見つけて何とかしてあげてね。」
「MARINAさん、次に会う時には解決しているようにします。任せて。」
私は微笑んで頷いた。
読んでいただき、本当にありがとうございます。




