楽屋でのアドバイス(ゆきの視点)
「お疲れ。」
ドアが開くと、須藤先生とバックコーラスの黒パーカーの人・・・新川先生が立っていた。須藤先生と新川先生はゆっくり楽屋の中に入ってきた。慌ててみんな椅子から立ち上がった。
「須藤先生、今日はありがとうございました。」
さなは勢いよく須藤先生にお礼を言った。須藤先生はにっこりと微笑んで、
「本番、楽しみにしています。」
そう言いながら、須藤先生はメンバー全体をみた。その後、部屋の中を見渡し、テーブルの上のお菓子や飲み物を見た。一瞬メンバー内に妙な緊張感が走る。これ食べて大丈夫だったろうか?
「リハーサル終わったから、水以外も取っていいよ、食事は体をつくる基本だから、お菓子だけではなく、適切な栄養をとってね。」
「わかりました!。」
メンバー全員がほっとするように、須藤先生にお礼を言った。その後にみんな須藤先生にいろいろ話しかけ始めた。
私はつい、バックコーラスに扮した新川先生を見てしまう。パーカーで微妙に顔が隠れているところが神秘的で、かえって目立っているようにも感じた。姿勢がいいからだろうか、芸能人の変装のような華やかさがあった。
新川先生は目立っていないと思っているのなら、それは教えてあげたほうがいいのかなあと思っていると、一瞬目が合った須藤先生が、”そうだよね、新川先生に気が付くよね・・・”
と言わんばかりに大きく瞬きした。
その後須藤先生と新川先生がテーブルの上の飲み物やお菓子を見ているのを感じて、まほは何か飲みますかと質問したが、須藤先生は飲んできたから大丈夫と言い、
「時間がある時に、本番のステージを見に来るから、今日学んだこと、忘れないようにしてね。」
メンバー個人個人に声をかけた。
その時、さなが須藤先生に近づくように一歩前に出て、
「先生・・・。私にもボーカルトレーニングをお願いできないでしょうか?。」
と話しかけた。
『私にも』というのはゆきのだけではなく、という意味が含まれているのだろう。さなは悪気はないのだろうが、私は気まずく感じた。
須藤先生はゆっくりとメンバーを見渡して、
「事務所と相談するけど、個別でのボーカルトレーニングは難しいかもしれない。でもまた、リハかライブ本番前にまたくるつもりだから、その時またトレーニングしましょう。」
そして、一人でもできる歌のトレーニング方法を教えてくれた。
読んでいただき、ありがとうございます。つたない小説ですが、お気に入り登録などしていただけますと、大変ありがたいです。




