ボーカルトレーニングも一緒に
「ダンスは練習してきた?。今日は全員で合わせるよ!。」
ダンストレーナーのMARINA先生の声にメンバーの緊張感が高まる。新曲はいつもよりもダンスは抑えめで、一部で本格的なバックコーラスがかぶるバラードだった。しかし間奏部分は、ソロのダンスが交代で入ってくる、個人の見せ場も多い曲だった。
ダンスは1週間前にも一日中、スタジオにこもって全体練習をしたので、かなり踊れるようになっていた。
「みんな分かっていると思うけど、今回のステージは歌に重点をおいています。今日はライブ会場を借りて、本番に近い環境で練習します。」
MARINA先生は皆を見渡して、一呼吸おいてから、
「そして、今日は特別にボーカルトレーナーの須藤先生が、歌を見てくれます。」
MARINA先生の言葉にメンバー全員がざわつく。ボーカルトレーナーにグループ全体での歌を指導してもらったことは今までなかった。
ゆきのも、前回のボイストレーニングの時には須藤先生は何も言っていなかったので、驚いた。ただ、ライブや収録の都合で、新川先生のところを受診してから、須藤先生のトレーニングを受けていなかったから、その間に決まったのだろうと考えた。
「須藤先生って、ゆきのが教えてもらっている先生でしょう?。今日来るって知ってた?。」
いつの間にか隣に立っていたさなが、テンション高くゆきのに話しかけてきた。
「私も、今日須藤先生来るって知らなかった。前回のトレーニングの日に仕事が入ってお休みしたから・・・。」
「じゃあ、その代わりに来てくれたのかな、すごい・・・。」
さなはメンバーの中で最も歌が上手で、歌うことに力を入れている。以前からギターを習い、自作の歌も(売り出してはいないが)作成している。彼女はアイドルは通過点であり、目標はソロデビューすることだと、オーディションの時に正直に会社に伝えていた。
ゆきのだけ須藤先生にボイストレーニングしてもらっていることを、すごくうらやましいと思い、なんで私は教えてもらえないの?とマネージャーに詰め寄っていたことがあったくらいだった。
アイドルで人気がでるのは、ルックスや雰囲気の良さが重要で、歌がうまいだけではセンターになれない。それをさな自身はよく分かっていて、そのために歌の練習はメンバーの中で誰よりも熱心だった。この夏には別名義で、アニメの声優とその主題歌を出すことになっている。
自分の目標を一歩ずつ進めているさなにとっては、ゆきのが須藤先生のボイストレーニングを受けていることは、納得いかないところもあるようだった。それは嫉妬しているというより、むしろただひたすらに自分の歌を上手くしたいと思っているからなのだろう。
そんな中、リリアだけが巻き髪を手に巻いて、あまり興味がないように壁際にたたずんでいた。
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