リハーサル
ゆきの視点・・・というか三人称ですね。読みにくいでしょうか?
2月の半ばの木曜日は、朝からみぞれ交じりの雪が降っていた。
16時から都内のライブハウスで『プラス Plus』 は初の全国ツアーに向けて歌とダンスのリハーサルを予定していた。林田優希望こと『ゆきの』は時間より少し早めに会場に入って、リハ会場に向かった。
ライブは地方都市のライブハウスを5か所回り、約1時間の予定だった。規模は小さいがが、『プラス plus』初の全国ツアーなので力が入っている。
今回の全国ツアーは新曲の『雨そして花と華』の披露も兼ねていた。『プラス Plus』には珍しい、バラードメインの曲だった。
入りの時はひんやりしていた会場も、スタッフが入りライトが付くと、暖かくなってくる。
「ゆきの、調子はどう?。」
プラス Plusのリーダーのまほが、ウオーミングアップの準備運動がわりの柔軟体操をするゆきのに声をかけてきた。まほは、はきはきした姉御肌の女子でだ。今日はリハだからか、きれいな黒髪を一つにまとめていた。
「新曲の動画、何回も見て、しっかり練習したから、いつでも踊れるよ。」
ゆきのは1コーラス分のソロパートの振り付けを披露した。
「いやいや・・・そうじゃなくて。」
まほは手を振って、ゆきのに近づき耳元でささやくように尋ねた。
「喉の調子はどうなの?」
メンバーの中で、いち早くゆきのの体調不良に気が付いたのはまほだった。
その後も、ステージ中の体調不調が繰り返されたため、リーダーであるまほは、かなり心配していた。
まほは、このグループの人気の中心はゆきのであり、その人気がグループを支えていることを、誰より良く分かっていた。それゆえに、気になってしまう。いくつかの病院にかかったが原因不明で、マネージャーは精神的なものを疑い始めていた。
まほも心配しつつ、若干のいら立ちを感じてしまうことがあった。ゆきのを心配しているのと同時に、それ以上にグループの将来を心配していて、そんな自分の冷たさに居心地の悪さを覚えていらだってしまう。普段のゆきのが元気そのものであることも、よりいらだちをつのらせてしまうのだろう。
ライブハウス内はウオーミングアップの曲が流れていて、メンバーやスタッフは自分自身の仕事の確認や準備で、二人の会話を気にするものはいない。
「病院で、検査中だよ。・・・今日は調子もいいし、大丈夫。」
ゆきのは小さくガッツポーズをとる。しかし、まほは
「この前の食事会の後も、おかしくなかった?。」
その言葉にびっくりして、ゆきのはすぐに返事ができなかった。
「・・・なんで・・・。」
「急に、口数が少なくなったから・・・。」
ゆりのはなんと言ったらいいのか、すぐには分からなかったが、それでも、嘘をついても仕方がないと思い、正直に話した。
「食べてたら、なんだか苦しくなって・・・。」
「やっぱり。そうだと思った。言ってくれれば良かったのに。」
まほは知っている。ゆきのは周りに気を使う子なのだ。
「ちゃんと病院で話して、原因を調べているから。」
「・・・分かった。何かあったら、言って。」
とゆきのをまっすぐ見ながら伝える。
普段のゆきのは至って元気なのだ。そして、まほにはない、まぶしいアイドルのオーラがある。何よりそれをまほ自身は分かっている。
まほは、ゆきのから距離をとって、少し離れて自分自身も準備運動を続行した。
そんなまほに見えないように、ゆきのは小さくため息をついて、気分を入れ替えて準備運動を再開する。
さなはマイペースに歌を歌いながら、ゆっくりとダンスを合わせていた。
少し遅れて、モデルの仕事が終わったリリアが入ってくる。リハ用のラフな格好に着替えているが、モデル用のメイクをしたリリアは女性受けする美しさがあり、見慣れてはいるはずの女性スタッフ何人かが、つい目でその姿を追っていた。
「はぁい、みんな注目!。」
ウオーミングアップの時間が終わり、ダンス講師のMARINA先生から集合がかかった。
読んでいただき、ありがとうございます。




