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林田さんの症例検討

「つまり、ステージの途中から発声が悪くなるんだね。・・・新川先生はどんな鑑別疾患を考えている?。」


 葉山院長は、私に質問しながら、自ら鑑別診断を考えているのだろうと思われた。


「単純に、歌いすぎて声が出なくなったのではないようです。声がかすれるのではなく、声が出なくなると表現していました。」


 私はカルテに目を通しながら答えた。


「音響分析と音声機能検査は異常なかったですぅ。」

野中さんが補足してくれた。


 グループの音楽活動については、田島さんが用意してくれた資料を配ってくれた。


 小早川先生からも質問がくる。

「咳が出るとか、息苦しいとか、随伴症状(一緒にともなった症状)はなかったの?」


 小早川先生の質問はもっともだ。私もそれについては確認している。


「咳、息切れは始めはなかったそうですが、3回目以降は出る時があるそうです。気分が悪くなって、ステージから降りたあと、横になった時もあったようです。」

 私はVHIとV-RQOLの結果を提示した。

「VHIは19点とやや上昇がありました。普段は何ともないしそうですが、”誰も私の声の問題をわかってくれない” ”声のせいで日常生活や社会生活が制限されています”に点が高かったですね。V-RQOLは少し点数が高めでした。仕事に影響が出ているのがわかりますね。」


 小早川先生の質問に答え終わると、葉山先生からも質問される。


「歌い方に、無理があるとか・・・無理な発声による声帯の不安定さはないのかな。」


「歌唱法の問題・・・ではないかということですね?。」

 用意しておいたタブレットを立ち上げながら


「実際に目の前で歌ってもらったわけではないので歌い方に無理があるかはわかりませんが、ネットで動画を確認した印象では、」

 私は用意していたタブレット端末からプロジェクターを通して、ライブの画像を映し出す。


 用意した動画は、激しいダンスと長めに歌が続く曲だが、林田さんの音域とあっていて、声のかすれや裏返りもないなかった。生演奏と歌のわずかなズレから、口パクでないことがわかる。


「・・・特に問題ないかと思います。」

サビの高音域まで確認した後で映像を停止した。


 小早川先生はうーんとため息をつきながら

「まあまあ、合格点の歌い方よね。発声にも無理はないし。そもそもグループでパートごとに歌っているから、短時間の歌唱の繰り返しだし、そんなに負担がかかるとは思えないわね。」


 そこに、いつの間にか処置から戻ってきていた武藤先生が、私の椅子の背もたれに手をかけて発言する。


「やっぱり、クライアントが実際に歌っているところを見るのが一番ですよね?。」



読んでいただきありがとうございます。

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