表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/80

予定変更

私、某アプリでKANA301として歌っています。KANA3001のほうがずっと私よりも上手です。

 

 KANAが帰ってから、軽くピアノの上の埃をはらい、楽譜を順番に片付けた。

タブレット端末で予定表のtodoを確認し、予定を完了させた。


「今日の授業は終わり!。」


 もともと予定になっていたボイトレが1件キャンセルになっていた。地方でライブがあり、帰りの飛行機が候で飛行機が飛ばなかったためのキャンセルだった。

「ええと・・・東城くんのキャンセルした分を明日に振り替えて・・・。」


 明日の予定を確認して、キャンセルになった分の振り替えなどの処理を行う。来週のKANAの予定は講演会があるとかで延期となったため、その処理も行う。



 東城卓人は私が教えている中でも今最も旬なアーティストと言える。


 もともとボカロで曲を作っていて、大学生の時にバンドデビュー。今はソロでSingerをやっている。作詞作曲の才能が高く、最近はソングライターとしての仕事が多い。

 歌声もとてもきれいなのだが、声量があるタイプではないため、ライブよりは録音した音源を調節して曲として作り上げたほうが安定して聴けるタイプだった。東城くんはライブを大切にしていたので、それをすごく気にしていた。

 ボイトレに通い始めたときに言っていた。


「憧れている・・・というか尊敬している歌手がいて、そこに近づきたいです。」


「もちろんよ、頑張りましょう。ただ、自分なりの良さを理解して歌っていくのも重要だと思うし、そこを伸ばしたいとも思っているわ。」


「自分のことも、分かってます。理想に少しでも近づきたいだけです。」


 東城くんの憧れの歌手がKANA3001だと気が付いたのは、偶然だった。レッスンが終わった後、帰りの準備をして雑談をしている時にKANAから電話がかかってきた。


「どうしたの、KANA。電話なんて珍しいね。」

 急患が出たためボイトレに来れなくなくなったそうで、メッセージは送ったのだが、私はボイトレ中で出られなかった。直前のキャンセルだったため、念のため電話で連絡してきたそうだ。

電話を切った後に東城くんが呆然と私を見ていた。


「ごめんね。話の途中で電話に出て。」

「いいえ、・・・今のKANA3001ですか?。」


同じ事務所でない限りは、よほどのことがない限り、生徒の情報を漏らすことはない。


「え?。」

「電話から聞こえた声がKANAさんだったから。以前フェスで一緒になったことがあるんです。」


 東城くんは私が否定も肯定もしていないのにその時の思い出をどんどん話してきた。


その時に、東城くんの憧れの歌手がKANA3001と気が付いたのだ。


 東城くんがあまりにKANAを褒めるから、KANA3001ファンの私は話をして、盛り上がってしまった。でも、KANAが医師をしてることや、いつボイトレに来ているかはもちろん伝えなかったけど。

 KANAの歌がこのままで終わるのはもったいない、東城くんに作ってもらえないか、頼んでみたいと思った。

 しかし、もう表舞台にはたたないというKANAに提案しても、笑ってごまかされるだけだった。


 今、新川かなではボーカルドクターとして輝いているもの。彼女の医師としての優秀さは私が一番分かっている。ボーカルトレーナーとして、そして彼女のファンとして。



 この時の私は、もうすぐ自分がKANAがステージで歌う姿を見ることになろうとは思ってもいなかった。



東城くんは今回のシリーズではほとんど出てこないのですが、のちにKANAと東城くんのラブストーリーを書く予定です。ネタバレ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ