☆72話 ハーフのブロンド美女幼馴染、優勝と罰ゲーム
※2022/6/26文末に北坂向日葵(制服姿)のイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
その場にいる誰もが、ひーちゃんが家に入って来たのに気付かなかった。
自身がただ者でないのを、皆に一瞬で理解させたひーちゃんは、静かに立ち上がった。
白のセットアップと黒キャミソールの、クール系コーデがナイスなボディーにとてもマッチしている。
で、すっかり注目の的になりながらも、その立ち姿は堂々としたものだった。
「ちわ。ワタシ、洋チンの許嫁の北坂向日葵、15歳だよん」
自己紹介に全くもって相応しくない、爆弾発言を軽々しく投下。
言ってやったりなドヤを決めてるけど、何故今言ってしまったんだろうか。
言わずとも注目の的は僕に移り、それぞれが思いの丈を口々にした。
「アン……洋くーん……私、許嫁の件、初めて聞いたのだけど~?」
「お前マジなのか? 夢なら早く覚めた方がいいぞ」
「洋……幸せになるんだぞ……」
「良かったじゃありませんか。おめでとうございます」
幼馴染事情を把握している愛実さん以外は、許嫁というパワーワードに夢中みたいだ。
ただ、どう返せばいいか戸惑ってる僕に対し、ひーちゃんはマイペースに話し掛けてきた。
「なぁなぁ洋チン。これからゲームすんでしょ? ワタシも混ぜてけろ」
「け、けろ? あ、うん。いいけど……チーム戦はどうしようかな」
「ノープロブレムさ。ワタシは1人チームでオッケオッケ―。んじゃ、ワタシはキョッパ大統領~」
当たり前のように、僕の懐に座って体を預けてきたひーちゃん。
妖艶なフローラルな香りと、女の子の柔らかさが伝わり、思わずドキドキしてしまう。
「ほら、皆も早くコントローラー持ちなされ。せっかく洋チンが考えたレクリエーションを楽しまないとだよん」
「そ、そうだな! 皆、向日葵ちゃんの言う通り、今は楽しもう!」
愛実さんの言葉に無言で頷く皆さんは、静かにコントローラーを持った。
何とも言えない空気の中、パーティーゲームを再開。
チーム戦ってのもあって、ミニゲームはタッグチームコレクションになった。
「そだそだ。こんな大人数だし罰ゲーム有りにすんぞ。とりま、最終結果がケツなチームって事でいいか?」
どのくらいの罰ゲームかは不明だけれど、ただただゲームをするだけじゃ、パッとしないから丁度いいのかも。
「ナイスだよん、ロリ巨乳ちゃん」
「ロリ巨乳言うな。来亥六華だ。そんで呼び捨ての六華でいい」
「じゃあ間を取って、ロ六華だねん」
「……反論したところで敵わなそうだから、それでいい」
なんてことだ、あの来亥さんが言葉負けしてしまった。
僅か数回の会話だけで、このような結果になるとは、僕でさえ想像つかなかった。
やはりひーちゃんを含んだ、僕の幼馴染達は普通ではない。
異様な空気感が漂う中、愛実さんがビシッと綺麗な姿勢で、挙手をしていた。
「はい! 罰ゲームもあるなら優勝チームも開催者から何かご褒美があるといいと思います!」
「え。ちょ、ちょっと愛実さん?」
確かに理屈は分からなくもないけど、開催者からのご褒美って事は僕からになる。
ご褒美と言っても、一体何をあげたりすればいいか、全く見当もつかない。
だからここは、他の皆さんの意見も聞き入れて、どうするかを決めた方が良さそうだ。
「洋からのご褒美か……ふふ、これはやりがいがありそうだな」
「洋くんと一緒のチームの私も、勿論ご褒美貰えるんだよね? わぁー楽しみ♪」
「まぁ、どうせ積木様ですので、いいのではないのでしょか」
「だな。って事で積木、金目のもの用意しとけ」
「流石にそれは嫌です」
意見を取り入れるどころか、勝手に賛同されていた。
ビリになれば罰ゲーム、優勝すれば僕からご褒美。
レクリエーションのスパイスとしては、ある意味最適なのかもしれない。
♦♦♦♦♦
まず始めのミニゲームは2人で協力し、山積みの材料から建造物を一から建て、制限時間内に多く建てたチームが勝利するゲームだ。
持ちキャラの頭上にランダムに出る、四種のボタンを押すだけのシンプル操作。
きっと峰子さん達もすぐに把握できる易しいミニゲームだ。
で、ポイントになるのは素早い正確なボタン入力。
押すボタンをミスれば軽くロスになり、挽回するのが中々に難しくなる。
ただ、時折投げ込まれる栄養ドリンクを、瞬時にボタン入力でキャッチできれば、ボーナスとして今建てている途中の建造物を、一気に完成させられる。
これらを踏まえた上で、一度デモプレイする事に。
峰子さん達には操作に慣れて貰わないとだ。
「じゃあ始めますよ」
「あぁ頼む」
デモプレイを開始し、多少ぎこちないも徐々に操作感に慣れ始めた、峰子さん達。
呑み込みが早いのもあってか、デモプレイを終える事には、すっかり慣れ切っていた。
「なるほど……こんな感じなんだな。把握した」
「流石姉様! 凄しゅぎて……脳みそがとろけりゅ~」
1人でびくびくと震える蘭華さんは、とりあえず放って置いて、これで本番は大丈夫そうだ。
一方、CPUとチームを組んでいるひーちゃんは、デモプレイの結果がいまいちだった。
本番で本気を出すのだろかと、若干気に掛けながら本番スタート。
「わぁー♪ 洋くんボタン押すの速―い♪」
「渚ちゃんも正確で上手だよ」
「ふふ♪ ありがと♪」
従姉キャラ設定通りなのか、素で楽しんでいるのか。
僕にはあまり区別はつかないけど、渚さんがとにかく楽しそうで良かった。
で、他の皆もわいわいと会話しながら、楽しんでいるようだ。
「み、峰子師匠! ほんとにゲームと無縁だったのか?!」
「あぁ。やれたとしてもトランプとかのアナログゲームだけだ」
「ま、マジか……こっちが追いつくので必死なんだけど! ひぃー!」
「ふふ、頑張れ愛実」
あの僅かな時間で立場が逆転してるけど、2人はプレイに夢中みたい。
この調子なら他のミニゲームも、存分に楽しんでくれそうだ。
「おいおい。私の速度についてくるなんて、やるじゃねぇか蘭華」
「まだ手慣らし程度ですが、次のゲームにはマシになってる筈ですわ、六華様」
「ふっ、お前と峰子には素質がある。今度私の家に遊びに来て、ゲーム合宿すんぞ」
あの毒舌性格の来亥さんが、自らお泊りに誘うなんて、意外過ぎて驚いた。
ある意味2人の波長が合うのかと、これからも仲良くして欲しいなと思う。
「合宿ですか……はっ! つまり姉様と必然的に一緒の寝床でランデブーってことですね!」
「お、おぅ」
「是非とも参加させて頂きます! ん~! 今からとてもワクワクムラムラです!」
本当に蘭華さんは峰子さんが関連すると、我を見失って自分の世界に行ってしまう。
とりあえず操作自体は怠っていない様子だし、そのまま放って置く方がいいかな。
そして最後に、ひーちゃんはというと、鼻歌を奏でながらコントローラを操作していた。
「ふにゃにゃにゃ~ふーにゃにゃ~♪」
さっきのデモプレイは、いまいちな結果だったけど今はどうかな。
「……ん?」
完成した建造物の数字を見て、一瞬見間違いかなと目を擦って再確認。
けれど、異様な数字と無駄のないプレイは変わらなかった。
あの来亥さんチームをかなりの数字で引き離し、今まで見たことのない速さで動くキャラクターに、僕は自然と嫌な予感がした。
結果的にはひーちゃんが圧勝し、来亥さんも動揺していた。
「な、何だコイツ……化け物過ぎる……」
「ロ六華ちゃん、そいつは誉め言葉だぜ。へへ」
♦♦♦♦♦
その後も全てのミニゲームで大差をつけ、優勝を飾ったひーちゃん。
勿論、一勝も出来なかった僕らはビリ。
つまり全員罰ゲームということになった。
「んじゃま、罰ゲームとして、洋チン以外には眠って貰うよん」
そう言った直後、ひーちゃんが視界から消え、愛実さん達が次々に脱力していた。
眠っているというより、気を失っている方が正しい。
たった数秒で僕以外を気を失わせたひーちゃんに、込み上げる恐怖を覚え、体が竦んだ。
未だに姿や気配がなく、自然と息が乱れる中、背後からギュッと抱き着かれた。
「ひゃ?!」
「これで10分間は2人きりだねん。スンスン……あー……体が熱くなる雄の香り……スンスンスン」
「ちょ、ちょっとひーちゃん!? か、嗅ぎ過ぎじゃない?」
「これがご褒美だから、洋チンは無抵抗でよろ」
更に密着をして、匂いをずっと嗅いでいるひーちゃん。
僕はそれよりも、とても大きな2つの柔らかなものが、背中に広がっていることに、意識が向いてそれどころじゃなかった。
だから逸早く助けて貰えるよう、必死に皆さんに声を掛けて起こし続けた。




