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積木君は詰んでいる  作者: とある農村の村人
4章 ゲームのオフ会
22/147

22話 最高の連係プレイ、酔う姉

 ゲームスタートから早10分、蜃気楼が解除され、次なる悪天候の雷雨が発生。

 宣戦布告を受け、ジャガジャガとモチモチが別行動を始めたけど、その成果は怒涛過ぎて目まぐるしかった。

 今回僕らも含めた総プレイヤー数80人、その総プレイヤーカウントが現在進行形で激減中なんだ。

 ざっとだけど減少数は40人、つまり10分間で半数まで減ったことになる。


《宣言通り、5チーム程倒したわ♪》

《有言実行だな! ジャガジャガ!》

《モチモチはライフ1削りだけで済んでいるのか。ジャガジャガは無傷か》

《エグイね!》


 日本ランキング上位のジャガジャガ、それに引きを取らないモチモチの2人がいれば、僕らに敵なしだ。



 雷雨は雨による視界不良に加え、ランダムで雷がフィールドに降り注ぐ。

 フィールドダメージでもある雷をもろに食らえば、ライフが1つ削られる仕様だ。

 しかも高確率で数秒間麻痺状態になる、最悪な悪天候でもある。


 基本として雷雨は屋内で過ごすのが鉄則だけど、大多数が同じことを考えるので、屋内での戦闘が後立たない。

 なので雷雨はプレイヤーが大幅に減ったりする。


 そして必ず屋内から逃げ出すプレイヤーが出る。

 だから建物の出入り口で待ち伏せし、一気に止めを刺す策もある。


 だが、それではせっかくのサバブラの良さを生かしきれず、非常に勿体ないんだ。


《雷雨ならレイブンがエンチャできるな!》

《そのつもりだ》


 サバブラのいい点その2。

 フィールドダメージを上手く利用すると、武器にエンチャントすることができる。


 武器によってエンチャの有無があり、何も知らず見様見真似で試しても大半は、ダメージを食らうだけになる。

 エンチャは属性によって効果が異なり、様々な攻略が広がったりする。


 古の戦士スタイルの古代槍は、雷属性のエンチャが可能で、今まさに絶好の機会。

 雷の落ちるタイミングで古代槍を突き立て、避雷針にすれば雷は古代槍へ落ち、コントローラーが強めに振動するぐらい、凄まじい雷光の光景が画面に広がる。


《雷槍の完成だ》

《レイブン君! 南西の少し遠くにある屋内に、大人数が接戦中だよ!》

《連中にぶちかましてやれ!》


 雷属性のエンチャは初めに接触した場所を起点に、広範囲で雷が拡散する。

 食らえばライフ1削りができる、かなりの強エンチャントだ。


 目標の屋内へと狙いを定め、まっすぐ雷槍の投擲。

 見事に屋内で雷が拡散。

 2チーム分のプレイヤーが減り、生き残りは空が止めを刺し続けた。

 接戦中だったからプレイヤーが全体的に程よくダメージを食らい、雷槍で多くのプレイヤーを仕留められたんだ。


《あらあら♪ やりますねレイブンさん♪》

《マロンのフォローがあったからだ》

《えへへ~♪》


 現実での空が体を揺らして喜んでるけど、髪が顔に当たって擽ったい。


《負けられないぜ! 奥義! 野蛮大行進!》

 

 それからというと、かなりのプレイヤーが僕らの手によって減らされ、残り数チームだけに。

 フィールド縮小もどんどんプレイヤーを追い詰め、プレイヤーが衝突しやすくなってる。

 ここからは一気に攻め込んで勝利を頂こう。


《奥義♪ フェロモンダンス♪》


 早速ジャガジャガが奥義で足止めして、数人を同時にとどめを刺した。

 流石としか言いようがない。


 未だにジャガジャガのライフは3つ。

 つまりノーダメージでここまでやってきている。

 日本ランキング上位者の実力は確かなものだと、他のプレイヤーは実感した筈だ。


 制限時間も迫ってるし、いよいよ大詰めと言ったところだ。


 今、僕の目の前には暗黒騎士スタイルのプレイヤーが立ち塞がってる。

 相当な手慣れなのが身構えでハッキリ分かる。

 けど、奥義を使えば倒せる。


《奥義、古の咆哮》


 コントローラーが大きく震える咆哮エフェクト。

 赤い空気を纏った古の戦士に、10秒間の無敵時間が生まれた。

 効果時間が切れない内に速攻で動き出し、暗黒騎士との距離詰めと同時に、古盾を投げ先制攻撃。

 暗黒騎士が古盾をはじき返すか、回避するかを先に見定めて、一気に追い打ちだ。


 古盾を防ごうとする暗黒騎士を見て、古代槍を間髪入れずに投擲。

 防いだ古盾が視界の妨げになったのもあって、投擲された古代槍は防げず、ライフの1削りに成功。

 そして反撃される前に範囲攻撃の大斧回転切りを食らわせた。


 どうやらライフ1だったらしく、暗黒騎士を倒す事ができた。


《奥義! ハートブレイク!》


 空の奥義が、僕の背後に迫ったプレイヤーを射抜き、間一髪のところで助けられた。

 消音アイテム使用だったから全く気付かなかった。

 助けてくれたお礼に、現実で頭を撫でてあげたら、物凄くクネクネして喜んでくれた。




 ゲームも終盤になり、僕達4人と盗賊スタイルのプレイヤー1人だけになった。 

 4対1なら誰がどう見ても圧倒的に優勢なのだけど、時間切れまで盗賊が逃げまくってるんだ。


 生き延びても高ポイントを獲得出来るから、盗賊は時間切れを狙ってる筈なんだ。

 でも、そういったゲームを好まないモチモチとジャガジャガが、黙っていない。


 盗賊は華麗に逃げられている、と思ってそうだけど、実際は僕らの誘導で詰み場へ向かってる。



 残り時間数十秒になり、袋の鼠となった盗賊は奥義のステルスを発動。

 元々スピードタイプの盗賊が透明化すれば、範囲攻撃だろうと当たる可能性は低い。

 けど、思わぬ攻撃がくれば、話が変わる。


 今こうして盗賊を探る振りをして攻撃する僕らの中に、モチモチはいない。


 現在の悪天候は暴風。

 常時移動する幾つもの竜巻が発生し、飲まれるとライフが1削れて、更には吹き飛ばされる仕様だ。

 モチモチはこの竜巻を利用し、ダメージ覚悟で竜巻に飲まれ、吹き飛ばされる場所を、盗賊の頭上へと目指していた。


 盗賊の奥義ステルスは一分間透明化できるもの。

 が、プレイヤーの攻撃などに接触すると、強制的に解除されてしまう弱点があるんだ。


《真打のご登場じゃぁああ!》


 予期せぬモチモチの頭上からの攻撃は、必ず風圧が生まれる。

 そして近場にいた盗賊は風圧を貰い、ステルスが強制解除され姿を見せる。

 

 その隙を逃さず、空が盗賊にとどめを刺し、時間切れになる前にゲームが終了した。

 今回もチームの連係プレイが最高に決まった。


《しゃあああ! 今日も絶好調だぜ!》

《この調子で次も行ってみましょう♪》


 モチモチとジャガジャガも、うずうずと次の試合に目を光らせている。


 オンライン広場で2戦目に向け準備をしていると、現実で小さな唸り声が耳に入り、僕らは手を止めた。


「うぅ……」

「あ、姉さん大丈夫?」


 目まぐるしいプレイ画面だったから、グロッキーになってしまったみたい。

 とりあえずソファーまで運んで、横に寝かせた。


「お姉ちゃん? 苦手なのに無理して見なくてもいいんだよ?」

「そ、そうもいかないわ……洋と空の楽しんでいる姿が……なによりも楽しくて、嬉しいのよ……」


 やっぱり姉さんは姉弟思いの良い姉だ。

 とりあえず姉さんの体調が良くなるまで、ゲームは一旦中止だね。


《モチモチ、ジャガジャガ。次の試合はちょっと止めておく》

《私もです! ごめんなさい!》

《そうか! じゃあオレらだけで行ってくるわ!》

《待ってるわよ♪》


 有難い配慮に甘え、僕と空は姉さんが元気になるまで小休憩を挟むことにした。

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