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積木君は詰んでいる  作者: とある農村の村人
20章 3校合同林間学校 初日
118/147

118話 お預けだった水着披露、姉様が望む事、バグったトップアイドル

 レクリエーション場の渓流では、水着姿で鮎釣りを楽しむ女性陣が、鮎釣りをのどかに楽しんでた。

 美女美少女の水着姿があまりにも眼福な光景で、自然に拝んでいた。

 無上の喜びとはこの事だろう、そう自分に言い聞かせている。


 西女の生徒さんと東海高校の生徒さんの何人かも、女性陣と一緒に鮎釣りを楽しんでいる。

 コミュマスタータケトウが仲介役に買って出てるのか、既に打ち解けている雰囲気だ。


 合同班の1-Aの班や、残りの生徒は渓流の上流にいるのか、楽しげな声が聞こえてくる。

 今しかない空気感に心が沸き立ち、今すぐ混ざりに行こうとしたら、霞さんが悠々と目の前に現れ、釣りたてぴちぴちの鮎を僕に向けてきた。


「うぉ!?」

「たんまだ積木ーそのままの恰好でやるつもりかー」

「え、あ」


 何の為に水着入りの袋を持っているのか、霞さんに言われなかったら忘れるところだった。

 その程までに舞い上がってた僕に、霞さんは柔らかな笑みを零す。


「案外子供っぽいな。ほら、あっちの脱衣所で着替えて来いよー」

「あ、はい」


 足早に目と鼻の先にある脱衣所で、短パン水着と薄手のパーカーに着替えた。

 一応、夏洋の水着も用意したけど、今回の林間学校では出番はなさそうだ。


 まるで背中に羽が生えた心持ち様で、脱衣所を出て、今度こそ鮎釣りを楽しんでいる渓流にダッシュ。

 思う存分レクリエーションを堪能して、思い出の1ページを皆と作ろう。

 ワクワクが顔に出まくる中、竹塔さんが近付く僕に気付き、トテトテと出迎えてくれた。


「あ、積木君! 着替え終わったね! はい! これ積木君の釣竿ね!」

「助かります竹塔さん。そう言えば……峰子さんの姿が見当たりませんけど?」


 さっき見渡した時も、女性陣で一番目立つ峰子さんがいなかったんだ。

 竹塔さんなら知ってるだろうけど、答えてくれたのは鮎釣りを楽しんでる来亥さんだった。


「峰子なら、蘭華のヤツが茂みで盗撮してやがったから、そのお説教中だぞ」

「あ、なるほどです」


 来亥さんが指差す、渓流の向こう岸の茂みに、義刃姉妹の姿が見えた。

 傍にあるのは盗撮用の機材なのか、テレビとかで見る本格的なものばかりで、普通に引いた。


 姉妹問題は姉妹でどうにかするだろうと、見なかった事にして鮎釣りを始めようとした時。

 同じく薄手のパーカーを着た愛実さんが、赤面で僕の袖をクイクイと引っ張っていた。


「ど、どうしました?」

「あ、あんさ……前に水着見せれんかったから、今見せるわ」


 ジジジとチャックを降ろし、お預けだった水着姿がお披露目された。


「ど、どうだ……似合ってるか?」

「と、とてもお似合いで……あ」


 しっかりと女子の魅力を引き出す縦線腹筋とくびれ、細くしなやかな美脚、着飾らない控えめな胸に目を奪われる。

 が、同時に、バスを降りた時に疑問だった、愛実さんのいつもと違う点がようやく判明した。


「陸上の日焼け跡がないですね。焼いたんですか?」

「そ、そうなんだわ! 積っちに中途半端な日焼け跡姿で、水着姿を見せたくなかったんだ……」

「あ……その……ありがとうございます……」


 水着選びの際、しゅーちゃんの言っていた自然絶対領域が陸上の日焼け跡だったのか。

 時間差で理解した僕は、有難さ半分と照れ臭さ半分だった。

 愛実さんも恥ずかしいのか、赤面がさっきよりも赤らんで、もじもじも可愛らしかった。


 ただ、これ以上見るのは精神的にも持たないし、愛実さんにも悪い思いをさせてしまうから、ぎこちない動きで鮎釣りに切り替えた。


「つ、釣レルト、イイデスネ」

「だ、ダナー」

「そういやさー脱衣所であーし見ちまったんだけどよー愛実のココと、ココと、ココは焼けてねぇーぞー」

「かかかかかカスミン?! そ、それトップシークレットだから!」


 突然割り込んで来た霞さんが、自身の体でピンポイント部分3か所を指差したので、僕は開いた口が塞がらず鮎釣りをどころじゃなかった。

 今、少しでも愛実さんや他の女性陣を見たら、ピンポイント部分に目が行ってしまう。

 だから、渓流沿いに向かって、鮎釣りに没頭して心頭滅却に専念することに。


 ただ、こんなことで簡単に振り払えるものなら苦労はしない。

 暴露した霞さんも霞さんだけど、せっかく愛実さんがお披露目した水着姿を、もうそういう目線でしか見られない自分を、今すぐボコボコにしてやりたい気分だ。


♦♦♦♦♦


 1人猛反省会に浸る最中、竿に獲物が食い付き、逃さないよう一気に釣り上げた。

 かなりの大物なのか、シルエットがとても大きくて、反省会も吹き飛んだ。


「もしかしたら、ここの渓流の主だったりして……なんて……」


 独り言と一緒に釣り上げた大物と、ご対面した僕は言葉を失った。

 せめて魚が釣れたらよかったものの、大物だと高を括ったそれは、黒の紐ビキニだったんだ。


 班の女性陣でない事は、水着を選んだ僕が1番知っている。

 きっと上流で渓流遊びをしている女子の誰かので、間違いないと確信。

 最善策は女性陣の誰かにビキニを託し、返しに行って貰うのが理想系だ。


 でも、そう簡単にはいかない。


 まず第一に、何故異性の僕が誰かも分からない女性モノの水着を手にしてるのか、白い目で疑われる。

 正直に告白したところで、平和的に終わる訳がない。


 ので、僕自身がひっそりと上流へ移動して、ビキニを人目の付く場所へと置き去る事に。

 幸いにも渓流沿いには、人が隠れるのに最適な茂みがあるから、そこを通って行けば問題はない。


 けど、今は峰子さんが蘭華さんに説教中で、無暗に茂みに接近できない。

 このまま誰かも分からないビキニを持つ変態として、皆に認識されるのも時間の問題だ。


「どうした洋。皆と一緒に釣らないのか?」

「ひょお?! み、峰子さん……と、蘭華さん……」


 懐にビキニを瞬時に隠した甲斐あり、変態のレッテルを貼られる事は回避。

 蘭華さんの説教自体は終わったようだけど、蘭華さんの水着が峰子さんの色違いだった。

 峰子さん1人でも神々しいのに、同じ体型の2人が目の前にいたら、もう何でも情報を曝け出しそうな気分になる。


「今、懐に何か隠されましたよね、積木様。もしや、やましいものじゃありませんか?」

「蘭華……ブーメラン発言だぞ」

「流石姉様♪ わたくしの些細な事も、貴重な脳に記憶してくれているのですね♪ あぁ~脳がとろけてしまいます~」

「……洋、邪魔して悪かったな」

「い、いえ」


 何かを隠した事は追求されず、僕の横を通り過ぎる峰子さん達。

 これで茂みに行けると思い、静かに向かおうとしたら、峰子さんに名前を呼ばれた。


「洋」

「ひゃ、ひゃい!」

「私は洋と一緒に林間学校を楽しみたい……その、早くこっちに来てくれると嬉しい」

「いいですか積木様。姉様が望む事は絶対なのです。そう、絶対なのです。もし叶わないようならば、わたくしはどんな手段も厭わない所存です」

「な、なるべく早く向かいますんで、少々お待ちを!」


 蘭華さんの峰子さん愛は狂気そのもの。

 本気でどんな手段も厭わなさそうだから、ビキニ返却作戦を急がねば。


♦♦♦♦♦


 身を屈め茂みを通り、渓流の上流へとやって来た。

 誰もビキニを探している感じはなく、下流にいる愛実さん達と同様に楽しんでいる。

 なにか景色に物足りなさを感じるけど、とにかく騒ぎになっていない今の内に、ビキニをさりげなく置いて帰るべし。

 人が隠れるのに丁度良い岩場もある事だし、まずはそこに移動だ。


 映画の様なステルスミッションの如く、内心楽しんでいた僕に、岩場では予想だにしない出来事が待ち受けていた。


「あ、李未梨(りみり)ちゃん。流された僕の水着あっ……ひょぉおおお?!」

「っん?!」


 自分の事で精一杯、岩場なら誰もいないだろう慢心が招いた結果。

 何故か岩場に身を隠す凛道刹那さんが、上裸で現れた。


 上流の景色に物足りなさを感じたのは、凛道さんがあの場にいなかったからだと、今更気付いた。

 まだそれだけならいいものの、ガッツリと豊満な胸を全て視界に焼き付けてしまった。

 故意でないとはいえ、スクールカーストトップに君臨する凛道さんの上裸を、ガッツリ見てしまった事実は変わらない。


 きっとこの事実は瞬く間に広まり、林間学校という状況も相まって、他校にもすぐに知れ渡り、僕の高校生活は地獄になる。

 凛道さんは何も悪くない、自分が一方的に悪い。


 もう後戻りできないけれど、せめてビキニだけは渡そうとしたら、凛道さんが壊れたロボットの様な動きで、バグっていた。


「お、オワタ……ぼぼぼぼ僕のスクールライフオワタ……裸撮られる……いじめ……コワイ……人生詰んだ……あばばばばば」

「り、凛道さん?!」


 もはやビキニを受け取る事さえも出来なさそうで、急いでパーカを脱ぎ、凛道さんに羽織らせた。

 それでもバグ状態が一向に直らず、僕が無害だとすぐに伝えた。


「り、凛道さん! この事は墓場まで持って行くので、どうか正気に戻って下さい!」

「あばばばば……墓場……ぼ、僕の墓場……え? よ、弱みを握って、ぐへへな展開じゃ?」

「あ、あり得ません」

「ほ……ほわぁああああああ……良かったぁああああああ~」


 へにゃりとその場に座った凛道さんは、つぅーっと涙を流して安心し切っていた。


 高嶺の花的な印象の凛道さんだけど、実際にやり取りしていたら、どうも違うみたいだ。

 言葉遣いが非常にフランクで、僕っ子。

 感情がとても豊か、そして警戒心を微塵も感じない無防備さ。


 この事から、凛道さんがトップアイドルで高校のスクールカーストトップだと思えないのは、僕だけなのだろうか。

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