114話 おさげで隠す幼馴染、幼馴染の着衣物、思考を2度殺した水泳女子
後半戦の水着選抜はふーちゃん、ひーちゃん、来亥さん、滝さん、風渡さんの5人だ。
サイズは圧倒的な大の大台突入もあって、心構えはいつも以上だ。
早速リサーチした水着を取りに、店内を機敏に動き、目当ての水着をカゴに入れ、5人が待つ試着室前へ帰還。
ふーちゃんにはピンクのオフショルフリルビキニ。
ひーちゃんにはブラックのワンショルフレアビキニ。
来亥さんにはオレンジのフレアワンピース水着。
滝さんには黒のフリルとドットチュールの、ホルダーハイネックウェストの水着。
風渡さんには白のアメリカンスリーブビキニと、ボタニカルシアースカート。
以上のラインナップを5人へ提供させて頂いた。
それぞれ水着を受け取り、試着室で着替え開始。
再び試着室前でうろつく不審者になって、ソワソワとドキドキで待つ中、ふーちゃんがぴょこっと顔を出していた。
「よー君~♪ もうワンサイズ大きいの持って来て♪」
「う、うん」
大き目のサイズだったけど、更に上を行くとは思わなかった。
同じビキニのワンサイズ上をすぐ取りに行き、試着室で待つふーちゃんに声を掛けた。
僕はこの時、ふーちゃんが仕切りから手だけを出して、受け取るとばかり思っていた。
けど実際は、試着室の仕切りがハラリと開き、上裸のふーちゃんが嬉しそうに受け取ったんだ。
「よー君ありがとー♪ お礼のチューしてあげるね♪ むぅ〜♪」
「ちょ、ちょっとふーちゃん!? ま、前隠してよ!」
「おさげで丁度隠れてるから大丈夫だよ♪」
「た、確かに……じゃなくて! ほとんど見えちゃってるから!」
トレードマークのツインテールを、取りに行ってた30秒の短時間で、おさげにした早技にも驚くけど、おさげブラはあまりにも刺激が強過ぎる。
軽い動作で防御力を失うだろう無防備さが、異性の僕には逆に凶器だ。
しかも、それをふーちゃん自身は自覚してるようで、ニヤニヤしながら体を軽く揺らし、おさげブラを自らの手で捨てようとしてる。
「どうしたのー? よー君♪ もしかして全部見たくなっちゃった? もう……好きなだけ襲ってい」
冷静に考えれば、仕切りを戻せばいい話だった。
仕切られたのに不服だったのか、顔だけ見せたふーちゃんがジト目で、ブーブー文句を言ってる。
「ブーブーよー君のいけずぅーいつでも襲われる準備できてるのにー」
「早く着替えてね」
「はーい♪ 旦那様の言う通りにしまーす♪」
ケロっと幸せ一杯な顔で引っ込んで行ったふーちゃん。
水着自体も今度は大丈夫そうだし、1人目はこれでクリアだ。
束の間の安堵に浸る間もなく、ひーちゃんが顔を出して僕を呼んでいた。
「洋チン洋チン」
「あ、ひーちゃんもサイズ違った?」
「多分そうねん。だから脱ぐのに手間取ってるから、手を貸して欲しいのん」
「え」
ろくな返答も出来ぬまま、デジャブのように仕切りが開かれると、ビキニを半脱ぎしたひーちゃんが、妖艶な後ろ姿で振り向いていた。
半脱ぎで半分以上見えているお尻や、よくよく見ればビキニはただ手で押さえるだけで、もはやグラビアを越える光景だ。
「どうしたのねん。早く脱ぎ脱ぎして欲しいよん」
「じ、自分で脱げるでしょ! 閉めるからね!」
仕切りを閉めようとするも、細くしなやかな長脚で仕切りの取っ手を押さえられ、可憐に阻止。
器用な脚に関心するのと同時に、あと数cmで見てはいけない箇所が、こんにちはする寸前だ。
反射的に首を勢い良く背けた結果、首にかなりのダメージを負うも、見えてはいけない箇所を視界に入れられずに済んだ。
「ヘイ洋チン。こっち見ないと脱ぎ脱ぎのお手伝い出来ないよん」
「や、やらないってば!」
「じゃあ、手のように動かせる御足はお好きかねん?」
「むしろ好きだけど、今は仕切りを閉めて!」
「脱ぎ脱ぎ手伝ってくれないと嫌なのん」
「さっきからうるせぇな」
「は! く、来亥さん!」
怒り心頭の来亥さんが、救世主の如く現れてくれた。
既に水着に着替え終わっており、小柄な体に圧倒的主張をなさるお胸が、最初に目が行く。
「で? うるせぇ会話の中身からして、お前のビキニを脱がせればいいんだな」
「ま、待つのねん。洋チンにやって貰わないと意味が」
「知らん。ふん!」
「ひゃ!?」
ひーちゃんの可愛らしい声の1秒後、ポスっと僕の頭に何かが落ち、手に取ってみた。
1秒前まで半着用済みだったひーちゃんのビキニそのもので、人肌の温さを感じた。
今、ビキニが僕の手にあるという事は、ひーちゃんがすっぽんぽんではないかと、思わず視線を向けた。
が、来亥さんの手によって仕切りが丁度閉められ、安心と少しがっかりする自分がいた。
「これで解決だな。だろ、北坂」
「ふぇ……」
グイグイ系なひーちゃんをここまで弱らせる来亥さんは、やはり只者じゃない。
でも来亥さんが何故だか、じーっと僕に視線を向けてニヤニヤだ。
「な、何ですか?」
「北坂の水着をそのまま、積木が被って匂い嗅いでも、私は見なかった事にする。ただただ、幼馴染の着衣物を嗅ぐ、性癖がやべぇ奴になるだけだからさ」
「しませんって!」
何を言い出すと思えば、絶対にしてはいけない行為の誘導だとは。
基本的に悪い人じゃないけど、悪びれていない所は本当に参ってしまう。
「つまんねーな。てか前に言ったろ。今幼馴染を題材にしたラブコメを描いてるから、協力しろって」
「もっと健全な協力がいいです」
別に協力をしないとは言ってないけど、許容範囲を考慮してくれないのが、ちょっとした悩みだ。
「はいはい。次からはもっと踏み込んでくれよな」
「踏み込みませんって」
「あっそ。てか、水着のチョイスだけどよ、バチくそに気に入ったわ」
「そ、それは何よりです」
もっと毒舌感想が飛んでくると思っていたから、ちょっと拍子抜け。
そのまま着替えに戻った来亥さんと、未だに弱弱しい声を上げてるひーちゃんの2人は、クリアって事に。
で、残りは滝さんと風渡さんの2人になる。
風渡さんは何となくリアクションが想像しやすいけど、滝さんは何もかも読めない人だから、色々と緊張している。
「積木君」
「ひょわ!? た、滝さん!」
背後から無表情の滝さんがエンカウント、心臓が口から飛び出るかと思った。
そんな滝さんは水着姿で、出るところは出て引っ込むところ引っ込む、まさにクールビューティー美女姿だ。
ただ、ずっとじろじろ観察されるのは不快に思うだろうから、水着が大丈夫かを聞く事に。
「ど、どうですか? サイズとかデザインとか……」
「顔に出ないだけで、ちゃんと喜んでるわ」
「そ、そうなんですね」
「えぇ」
「……」
元々僕自身がコミュニケーションを得意としないから、滝さんに気まずい思いをさせてる。
たらりと額から汗が流れる僕とは違い、滝さんは無表情を崩さない。
「これ買ってくるわね」
「は、はい」
淡々と告げ、試着室へと着替えに戻った滝さん。
もっとコミュニケーション上手にならないといけないと、強く今後の目標を立てた直後。
背後から誰かに抱き付かれ、とても柔らかな感触が背中に押し広がって、思考が一瞬にして死んだ。
「つーみーきー! 水着これにするぜ!」
「は! か、かかか風渡さん!? ななな何でこんな事を?!」
「積木がいたから抱き付きたくなったんだ! 迷惑だったか?」
「そ、それはないですけど……はははハグは控えて貰えると、僕が死なずに済みます」
「よく分からんけど、今度から程々にするぜ!」
程々とかの問題じゃないけど、改善してくれるからいいや。
思考を回復させる中、ようやく離れてくれた風渡さんの水着姿を拝見。
水泳部に所属してるのもあって、水着との相性がとても抜群だ。
健康的で引き締まった腰や脚、水泳着の日焼け跡と白肌のコントラスト、そしてハグの感触を蘇らせる大きな胸。
一瞬蘇っただけで思考がバグり、顔が熱くなるも、すぐさま別のことを考えて正常に戻った。
そんなこんなで風渡さんの顔に視線を向け直すと、丁度ハッとしていた。
「そうだそうだ! ダチに水着見せる約束してたんだ! って事で積木! 撮って私に送ってくれ!」
「は、はい」
被写体としても映える風渡さんの容姿を、パシャリと数枚撮り、密着される距離間で確認して貰った。
「おぉ! 積木! めっちゃ撮るの上手! バッチリ過ぎるぜ!」
「あ、あの……顔と体が近いです」
「ハグじゃないから控えなくても問題ねぇだろ? ほらほら、早く送ってくれ!」
ギュッギュと更に密着する風渡さんに、僕の思考は2度目の死を迎えつつ、写真を無意識に送った。
「サンキューな積木! そんまま会計済ませて、峰子を呼んでくるぜ!」
「は、はぃ……」
水着姿のまま足早に会計に向かった風渡さんを見送り、大サイズの女性陣5人の水着選びを、無事乗り越えた事に安堵。
が、いよいよ来てしまう大トリの峰子さんに、僕は心あらずだった。




