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積木君は詰んでいる  作者: とある農村の村人
19章 詰んでいる林間学校の買い出し
114/147

114話 おさげで隠す幼馴染、幼馴染の着衣物、思考を2度殺した水泳女子

 後半戦の水着選抜はふーちゃん、ひーちゃん、来亥さん、滝さん、風渡さんの5人だ。

 サイズは圧倒的な大の大台突入もあって、心構えはいつも以上だ。


 早速リサーチした水着を取りに、店内を機敏に動き、目当ての水着をカゴに入れ、5人が待つ試着室前へ帰還。


 ふーちゃんにはピンクのオフショルフリルビキニ。

 ひーちゃんにはブラックのワンショルフレアビキニ。

 来亥さんにはオレンジのフレアワンピース水着。

 滝さんには黒のフリルとドットチュールの、ホルダーハイネックウェストの水着。

 風渡さんには白のアメリカンスリーブビキニと、ボタニカルシアースカート。


 以上のラインナップを5人へ提供させて頂いた。

 それぞれ水着を受け取り、試着室で着替え開始。

 再び試着室前でうろつく不審者になって、ソワソワとドキドキで待つ中、ふーちゃんがぴょこっと顔を出していた。


「よー君~♪ もうワンサイズ大きいの持って来て♪」

「う、うん」


 大き目のサイズだったけど、更に上を行くとは思わなかった。

 同じビキニのワンサイズ上をすぐ取りに行き、試着室で待つふーちゃんに声を掛けた。


 僕はこの時、ふーちゃんが仕切りから手だけを出して、受け取るとばかり思っていた。

 けど実際は、試着室の仕切りがハラリと開き、上裸のふーちゃんが嬉しそうに受け取ったんだ。


「よー君ありがとー♪ お礼のチューしてあげるね♪ むぅ〜♪」

「ちょ、ちょっとふーちゃん!? ま、前隠してよ!」

「おさげで丁度隠れてるから大丈夫だよ♪」

「た、確かに……じゃなくて! ほとんど見えちゃってるから!」


 トレードマークのツインテールを、取りに行ってた30秒の短時間で、おさげにした早技にも驚くけど、おさげブラはあまりにも刺激が強過ぎる。

 軽い動作で防御力を失うだろう無防備さが、異性の僕には逆に凶器だ。


 しかも、それをふーちゃん自身は自覚してるようで、ニヤニヤしながら体を軽く揺らし、おさげブラを自らの手で捨てようとしてる。


「どうしたのー? よー君♪ もしかして全部見たくなっちゃった? もう……好きなだけ襲ってい」


 冷静に考えれば、仕切りを戻せばいい話だった。

 仕切られたのに不服だったのか、顔だけ見せたふーちゃんがジト目で、ブーブー文句を言ってる。


「ブーブーよー君のいけずぅーいつでも襲われる準備できてるのにー」

「早く着替えてね」

「はーい♪ 旦那様の言う通りにしまーす♪」


 ケロっと幸せ一杯な顔で引っ込んで行ったふーちゃん。

 水着自体も今度は大丈夫そうだし、1人目はこれでクリアだ。


 束の間の安堵に浸る間もなく、ひーちゃんが顔を出して僕を呼んでいた。


「洋チン洋チン」

「あ、ひーちゃんもサイズ違った?」

「多分そうねん。だから脱ぐのに手間取ってるから、手を貸して欲しいのん」

「え」


 ろくな返答も出来ぬまま、デジャブのように仕切りが開かれると、ビキニを半脱ぎしたひーちゃんが、妖艶な後ろ姿で振り向いていた。

 半脱ぎで半分以上見えているお尻や、よくよく見ればビキニはただ手で押さえるだけで、もはやグラビアを越える光景だ。


「どうしたのねん。早く脱ぎ脱ぎして欲しいよん」

「じ、自分で脱げるでしょ! 閉めるからね!」


 仕切りを閉めようとするも、細くしなやかな長脚で仕切りの取っ手を押さえられ、可憐に阻止。

 器用な脚に関心するのと同時に、あと数cmで見てはいけない箇所が、こんにちはする寸前だ。


 反射的に首を勢い良く背けた結果、首にかなりのダメージを負うも、見えてはいけない箇所を視界に入れられずに済んだ。


「ヘイ洋チン。こっち見ないと脱ぎ脱ぎのお手伝い出来ないよん」

「や、やらないってば!」

「じゃあ、手のように動かせる御足はお好きかねん?」

「むしろ好きだけど、今は仕切りを閉めて!」

「脱ぎ脱ぎ手伝ってくれないと嫌なのん」

「さっきからうるせぇな」

「は! く、来亥さん!」


 怒り心頭の来亥さんが、救世主の如く現れてくれた。

 既に水着に着替え終わっており、小柄な体に圧倒的主張をなさるお胸が、最初に目が行く。


「で? うるせぇ会話の中身からして、お前のビキニを脱がせればいいんだな」

「ま、待つのねん。洋チンにやって貰わないと意味が」

「知らん。ふん!」

「ひゃ!?」


 ひーちゃんの可愛らしい声の1秒後、ポスっと僕の頭に何かが落ち、手に取ってみた。

 1秒前まで半着用済みだったひーちゃんのビキニそのもので、人肌の温さを感じた。


 今、ビキニが僕の手にあるという事は、ひーちゃんがすっぽんぽんではないかと、思わず視線を向けた。

 が、来亥さんの手によって仕切りが丁度閉められ、安心と少しがっかりする自分がいた。


「これで解決だな。だろ、北坂」

「ふぇ……」


 グイグイ系なひーちゃんをここまで弱らせる来亥さんは、やはり只者じゃない。

 でも来亥さんが何故だか、じーっと僕に視線を向けてニヤニヤだ。


「な、何ですか?」

「北坂の水着をそのまま、積木が被って匂い嗅いでも、私は見なかった事にする。ただただ、幼馴染の着衣物(ちゃくいぶつ)を嗅ぐ、性癖がやべぇ奴になるだけだからさ」

「しませんって!」


 何を言い出すと思えば、絶対にしてはいけない行為の誘導だとは。

 基本的に悪い人じゃないけど、悪びれていない所は本当に参ってしまう。


「つまんねーな。てか前に言ったろ。今幼馴染を題材にしたラブコメを描いてるから、協力しろって」

「もっと健全な協力がいいです」


 別に協力をしないとは言ってないけど、許容範囲を考慮してくれないのが、ちょっとした悩みだ。


「はいはい。次からはもっと踏み込んでくれよな」

「踏み込みませんって」

「あっそ。てか、水着のチョイスだけどよ、バチくそに気に入ったわ」

「そ、それは何よりです」


 もっと毒舌感想が飛んでくると思っていたから、ちょっと拍子抜け。

 そのまま着替えに戻った来亥さんと、未だに弱弱しい声を上げてるひーちゃんの2人は、クリアって事に。


 で、残りは滝さんと風渡さんの2人になる。


 風渡さんは何となくリアクションが想像しやすいけど、滝さんは何もかも読めない人だから、色々と緊張している。


「積木君」

「ひょわ!? た、滝さん!」


 背後から無表情の滝さんがエンカウント、心臓が口から飛び出るかと思った。

 そんな滝さんは水着姿で、出るところは出て引っ込むところ引っ込む、まさにクールビューティー美女姿だ。


 ただ、ずっとじろじろ観察されるのは不快に思うだろうから、水着が大丈夫かを聞く事に。


「ど、どうですか? サイズとかデザインとか……」

「顔に出ないだけで、ちゃんと喜んでるわ」

「そ、そうなんですね」

「えぇ」

「……」


 元々僕自身がコミュニケーションを得意としないから、滝さんに気まずい思いをさせてる。

 たらりと額から汗が流れる僕とは違い、滝さんは無表情を崩さない。


「これ買ってくるわね」

「は、はい」


 淡々と告げ、試着室へと着替えに戻った滝さん。

 もっとコミュニケーション上手にならないといけないと、強く今後の目標を立てた直後。

 背後から誰かに抱き付かれ、とても柔らかな感触が背中に押し広がって、思考が一瞬にして死んだ。


「つーみーきー! 水着これにするぜ!」

「は! か、かかか風渡さん!? ななな何でこんな事を?!」

「積木がいたから抱き付きたくなったんだ! 迷惑だったか?」

「そ、それはないですけど……はははハグは控えて貰えると、僕が死なずに済みます」

「よく分からんけど、今度から程々にするぜ!」


 程々とかの問題じゃないけど、改善してくれるからいいや。

 思考を回復させる中、ようやく離れてくれた風渡さんの水着姿を拝見。

 水泳部に所属してるのもあって、水着との相性がとても抜群だ。


 健康的で引き締まった腰や脚、水泳着の日焼け跡と白肌のコントラスト、そしてハグの感触を蘇らせる大きな胸。

 一瞬蘇っただけで思考がバグり、顔が熱くなるも、すぐさま別のことを考えて正常に戻った。


 そんなこんなで風渡さんの顔に視線を向け直すと、丁度ハッとしていた。


「そうだそうだ! ダチに水着見せる約束してたんだ! って事で積木! 撮って私に送ってくれ!」

「は、はい」


 被写体としても映える風渡さんの容姿を、パシャリと数枚撮り、密着される距離間で確認して貰った。


「おぉ! 積木! めっちゃ撮るの上手(うま)! バッチリ過ぎるぜ!」

「あ、あの……顔と体が近いです」

「ハグじゃないから控えなくても問題ねぇだろ? ほらほら、早く送ってくれ!」


 ギュッギュと更に密着する風渡さんに、僕の思考は2度目の死を迎えつつ、写真を無意識に送った。


「サンキューな積木! そんまま会計済ませて、峰子を呼んでくるぜ!」

「は、はぃ……」


 水着姿のまま足早に会計に向かった風渡さんを見送り、大サイズの女性陣5人の水着選びを、無事乗り越えた事に安堵。


 が、いよいよ来てしまう大トリの峰子さんに、僕は心あらずだった。

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