☆105話 女子達の自己紹介、成長が止まってしまった女子
※2023/1/13文末に滝長平のイラストを追加しました!
※2023/1/15文末に風渡ありすのイラストを追加しました!
※2023/1/19文末に竹塔瑠衣のイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
席替えによって詰み場どころでなくなったけど、時は無情にも流れ続け、天羽先生が授業を開始。
「えー席替えで少し遅れたけど、今日の1・2時間目は林間学校の班ごとに分れて、最終的な話し合いをして貰うよ」
天羽先生の言う通り、今日の1・2時間目は林間学校について話し合う時間だ。
各クラス8人からなる5班で構成され、5人しかいない男子は各班に1人ずつ入る事になっている。
僕の班はお馴染みの愛実さん達と神流崎さん、そして他3名の女子メンバーの構成だ。
まず、愛実さんの中学からの友人である、水泳部の風渡ありすさん。
アッシュブラウンの外ハネショートの猫目で、体育会系が万能な師走さんに憧れ、日々精進しているそう。
軽く着崩したワイシャツから覗くスク水は、師走さんリスペクトっぽい。
背丈は愛実さんと同じくらいだけど、横から見た圧倒的な胸囲の格差は、絶対に口にしてはいけないと決めている。
2人目は神流崎さんの友人である、服飾部の滝長平さん。
黒髪ロングの一つ結びで、ジト目と淡々とした口調が特徴的な人だ。
服飾部だからと言って、特別にファッションが奇抜的とかではなく、お手本のようにキッチリと制服を着こなしている。
僕よりも若干背が高くて、雰囲気は霞さんと結構似ているけど、胸が峰子さんの次に大きい。
そして最後は帰宅部の竹塔瑠衣さん。
秒で誰とでも仲良くなれちゃうパーフェクトコミュマスターだ。
何故に僕らの班に入っているかというと、班決めの時に竹塔さん自らが入りたいと、お願いしに来たんだ。
人数的に丁度あと1人足りなかったし、全員がウェルカムだったから、快く一緒の班になって貰った訳だ。
黒髪のぱっつんポニテがトレードマークで、クリクリした目とずっと笑顔なのがチャームポイント。
健康的な容姿で愛実さんより背丈が少し低く、若干制服を着崩した着こなしだ。
そんな僕らの班に対して、他の班もそれぞれ一か所に集まり始めている。
普段の授業とは違って、こうやって仲の良い友達とワイワイ話し合うのは、何だか特別に感じたりもする。
皆で机を合わせながら会話をしてると、天羽先生がパチンと手を叩いて、一旦クラスメイト達の注目を集めた。
「そうそう! 今から伊鼠中さんには、好きな班に入って貰」
「じゃ、積木のとこで」
「あ、うん。じゃあ、積木君の班で決まりね」
食い気味で班決めした霞さんは、既に僕の隣に席を陣取り、どこか誇らしげだ。
僕らの班だけ人数が多くなったけど、こういった行事ごとだと人が多ければ楽しみが増すものだ。
皆も同じ気持ちの中、早速竹塔さんを筆頭に自己紹介が始まっていた。
「竹塔瑠衣だよ! よろしくね霞ちゃん!」
「な、何か眩しいな、おい」
「なんだか照れちゃうなー♪ ほら、仲良しの握手握手♪」
やはりパーフェクトコミュマスターの前では、霞さんも思わず身を引いてしまうのか、なされるがままだ。
握手を満足気に済ませた竹塔さんと、スッと入れ替わる様に、今度は風渡さんの番に。
「風渡ありすだ! ありすでいいぜ! 霞!」
「が、顔面が近ぇぞ……」
「おっと悪ぃ悪ぃ! ヘヘ!」
パーソナルスペースをいとも容易く突破するのが、風渡さんのコミュニケーション法だ。
実際班決めの挨拶の際、僕にも同じように急接近してきて、正直ドキドキしたよね。
まぁ、すぐに愛実さんが風渡さんを羽交い締めにして、引き離してくれた。
ただ今回は引き離す事はせずに、微笑ましく自己紹介を眺めているだけだ。
この差は一体何なんだろうかと思っていたら、滝さんの自己紹介ターンに。
「服飾部の滝長平よ」
「淡泊かよ」
「口下手なのよ。これからよろしくね、霞ちゃん」
「お、おぅ」
相手が誰であろうと動じず、己のペースで突き進むのが滝さんだ。
それにしても滝さんの情報が、神流崎さんの友人と服飾部だけだから、未だに謎多き人物でもある。
で、僕と愛実さんの自己紹介は既に済ませているので、残りの峰子さん達だけになった。
「義刃峰子だ。よろしくな霞」
「……なぁ、お前って1人だけ大人じゃねぇ?」
「ん? 皆と同じ15歳の女子高生だぞ」
「へ、へぇ……」
霞さんが信じられないって顔で、峰子さんと握手を交わしてるけど、気持ちは分からなくもない。
年相応とは思えない発育だし、背丈も飛び抜けて大きいから、大人と間違われても致し方がないんだ。
当の本人はコンプレックスらしいけど、それがあってこその峰子さんだと皆が思っていたりする。
続いては来亥さんの番になり、コホンと軽く咳払いで喉を整えていた。
「あー来亥六華、よろ」
「……ロ六華」
「あ?」
おもむろに自分の脇腹当たりを触れた来亥さんは、自身の隠された本来のお胸を解放。
あまりものイリュージョンに、目を点にした霞さんに対し、来亥さんは満足気に胸を張ってドヤってた。
噓偽りでない事を直接確認して見ろと、来亥さんが言うもんだから、霞さんは両手でもいんもいんと揉みまわして本物を確かめてる。
「どうだ霞。ロ六華にしちゃ、凶暴なもんがあんだろ?」
「お、おぅ」
未だにもいんもいんと揉みまわし、すっかり来亥さんのお胸に夢中なようだ。
以前、制服越しにお胸を解放されたけど、ワイシャツ姿で解放された今回は、よりその大きさと柔らかさを刮目出来ている。
とは言え、何故か愛実さんが、ビシビシと僕の肩を叩きながら睨んできているから、色々と申し訳が無かった。
♦♦♦♦♦
数分後、もいんもいんを十分に触診した霞さんが手を止めたので、ようやく眼福光景が終わった。
ただ、まだ触診の感触が手に残ってるのか、手の動きが空を描いている。
で、そんなことに構わずに、神流崎さんの自己紹介が始まった。
「改めまして、1-Bの学級委員長である神流崎夕季です。堅物ぼっちの件はしばらく根に持ちますが、林間学校ではよろしくお願いします、伊鼠中さん」
「堅物委員長か」
「……神流崎でお願いします」
「堅物委員長の方がピッタリじゃねぇか」
どちらとも譲らないのか、何度も何度も同じやり取りを繰り返し、ある意味息がピッタリな光景だ。
そんな2人を他所にして、竹塔さんを筆頭に林間学校の話し合いが始まっていた。
空気的に察すると、霞さんと神流崎さんは自然と話し合いに混じって来るだろう、って感じだ。
ここは流れに乗じなければ、男1人という圧倒的に肩身狭い空気が、より一層狭まる筈だ。
2人の事は2人で解決して貰う事にして、僕は話し合いに集中する事にしよう。
まずは数あるレクリエーションの候補を絞り、最終的なレクリエーションを決めるみたいだ。
「私は渓流の鮎釣りに掴み取りがやりたーい!」
「竹つんは相変わらずアクティブだな」
「愛実ちゃんもやりたいでしょ? ね?」
「んー……顔が近ぃー」
コミュマスターは触れ合いコミュニケーションが好きなのか、愛実さんの腕に絡み付いて、頬っぺたがぷにょんと触れ合ってる。
そんな微笑ましい光景に対し、来亥さんはブツブツと呟きつつ、あれやこれやと描き殴っていた。
やはり漫画家の卵はどんな時でも情景収集に抜かりがないなと、関心の一言に尽きた。
「なぁ瑠衣。鮎釣りをやるにしても水着がいる筈だぜ?」
「そうだね! ありすちゃん! でも、スク水だと味気ないもんね!」
「せっかくの林間学校よ。新しい水着を買わないと損よ」
滝さんの言葉に背中を押されたこともあり、竹塔さんと風渡さんは新しい水着を買う事になったみたい。
峰子さんと来亥さんも、もはや胸のサイズが合わなくなってるとの事で、この機会に買い替えるそうだ。
ただ、この場にいる1人だけが遠い目をして、自身の胸をペタペタ触れ、ボソボソと呟いていた。
「ワタシ……小学高学年カラ、サイズカワラナイ……」
覇気を失った愛実さんに、なんて声を掛ければいいのか分からずにいると、峰子さんと来亥さんがフォローに回った。
「成長過程は人それぞれだ。まだまだ、愛実は成長する筈だ」
「貧乳にも少なからず需要はある。心配はいらねぇ」
「……2人に言われると、成長が奪われていく気がする」
確かに発育絶好調な峰子さんと来亥さんの2人に言われたら、自然に成長期が奪われているって感覚になっていても、おかしくはない。
すっかりナイーブになった愛実さんは、だらんと脱力して天井を見上げていた。
もし仮に風渡さん達がフォローしても、愛実さんにとっては焼け石に水だ。
かといって異性の僕が、女性の成長具合にあれやこれやとフォローするのは、それこそ切腹ものだ。
しかしコミュマスターの竹塔さんだけは違った。
「まぁまぁ愛実ちゃん! ここは1つ! 積木君に水着選んで貰っちゃいなよー!」
「え」
「積っちに……」
ゆっくりと生気を取り戻した愛実さんに、チラッと見られた。
「なぁ……水着、選んでくれるか?」
「ぇ……」
皆の無言の視線から伝わる、頷けというプレッシャーにも負け、僕は静かに頷くしかなかった。




