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第4話 これが筋肉で語るということだっ!

町に入り、戦闘もあります。

アキラの強さの本質が少し見えます。


ヒノも出番は少ないけどかわいいよ。


追記

11月21日サブタイトルに話数以外の言葉も付けました。

「いざ、入場じゃー」

早速城門に向かおうとするシュリナ。

「待て待て」

そう言ってアキラはシュリナを押しとどめる。


「通行料があるかもしれないから、お金を作っておくぞ」

「どうするのじゃ?」

「ここでしばらく待っていればいい」

「そうか、商人を見つけて、持っている物を売るのじゃな?」

「それもありだが、俺としては手短に情報も集めたいからな」


アキラは門に入っていく人をしばらく眺めていたが、大きな斧を担いだ男のいるパーティを見つけると、そこに近づいて行った。


「やあ、兄弟。俺はアキラ。なかなかいい筋肉をしているじゃないか」

と言いつつ、アキラはボディビルで言うところのダブル・バイセップスのポージングをする。


「おう、オレはガイモス。ブラザーこそ素晴らしい鍛えっぷりじゃないか」

と、ガイモスもアブドミナル・アンド・サイのポージングで応える。

とうやらこの世界でもこういったポーズは王道のようだ。


「ちょっとこの国のお金を持っていなくてな。このプロテインポーションを買ってくれないか?」

ムキッ(以下ポーズ名略)

「何?その見事な筋肉を作るのに使っているプロテインポーションか?」

モリモリッ

「そうだ、一日一本飲んでいる」

ムキムキッ

「ぜひゆずってくれ!この町ではなかなか手に入らないんだ」

モリモリモリッ

「手持ちは二十本しかないが」

ビシイ!

「十分だぜ、ブラザー。ほら代金だ」

バリイ!

「助かったぜ兄弟」

ズオオオーン!

「「はっはっはっは」」

ドドーン!


「よし、ここのお金を手に入れたぞ」

「どこからどうつっこめばいいのか、わからないのじゃ」

「とりあえず、お金と情報を手に入れたぞ」

「あやつ、信用できるかの?」

「筋肉は嘘をつかない。あるビルダーの名言だ」

「ビルダーとは何なのじゃ?」

「筋肉を魅せることに情熱をかける漢たちのことだ」

アキラはそう言って軽くポージングをきめる。


「とりあえず、俺の世界からあちらの世界に行った時に女神からもらった言語翻訳能力は、ここでも問題なく使えるようだな」

「わらわには筋肉でしゃべっているようにしか見えなかったのじゃ」

「ああ。今、この町の中に領主の軍隊が来ているから、うかつな行動をとるなよって言われたな」

「本当に筋肉でしゃべっていたのじゃと?!いや、そんなわけないのじゃ。アキラは冗談が好きなのじゃな」


シュリナはブンブンと頭を振るうとぎこちなく微笑んだ。


「それより、シュリナもここの言葉が分かるのか」

「魔族じゃからの。スキルとか無くとも、どの魔族の言葉でも、魔物の言葉でもわかるのじゃ。人間の言葉なぞ、楽勝じゃよ」

「種族特性か。だが助かる。俺が通訳しなくて済むからな」



地上の門から入ると、門番は人間だった。

アキラとシュリナを見てにっこりと微笑むと、身分証明書の提示を求めてきた。

「すまんな、他国から来たばかりで持ってないんだ」

「身分証明が無いのでしたら、通行料をいただきます」


アキラは門番にお金を払うと、シュリナと町に入っていった。


「おおっ!いい匂いがするのじゃ!」

町に入ると、シュリナはさっそくいい匂いに釣られて、屋台に引き寄せられていく。


「腹が減ってはいくさはできぬのじゃ。のうアキラ…アキラ?」


ムキッ

モリッ

ムキムキッ

ババーン!


「ありがとう、助かったよ兄弟」

「いいってことさブラザー」

「待たせたな、シュリナ」

「また、あの男としゃべっておったのか?!」

「色々聞きたいことがあったからな。ここで常識のことでも、俺たちにはわからないから、不審者扱いされても困るだろ」

「それはそうじゃが」

「それで、多少の一般常識や、この街の情報とか、冒険者ギルドの登録について聞いておいたんだ」

「なんじゃと?一分ほどしか話しておらんではないか」

「筋肉会話は、通常の会話の二十倍の情報交換ができるのだよ」

「夫が変態だったのじゃ、夫が変態だったのじゃ…」


『筋肉モリモリで、高速筋肉会話ができる旦那さんは嫌いですか?』


とシュリナに変な幻聴が聞こえる。


「嫌いではないけど、恥ずかしいからあまり人前でやらないでほしいのじゃ!」

「わかった、善処する」

「それならいいのじゃ。それよりも、あの屋台で食べたいのじゃ」

「冒険者ギルドとかの登録料は足りているから、少しここで食べていこうか。この辺りの食堂は軍人が出入りしているようだから、絡まれたくないからやめておくぞ」

「そんなことも教えてもらったのか?」

「いや、さっきから数人単位で軍服を着た奴らが店に入っていくのを見たからな。昼時だから、班ごとに分かれて食事をとっているのだろう」


アキラの目線を追うと、きれいでありながら動きやすそうな服を着た五人組が、食堂へ入っていくところだった。


「軍人にしては軽装なのじゃな。普通はこう、鎧とか着ておるのではないか?」

「腰に下げていた武器を見たか?」

「普通の剣に見えたのじゃが、ちょっと短いかの?」

「あれは魔銃剣だ。数種類の魔法を発動でき、切れ味の強化、飛び道具、回復に使用できる」

「なんと便利な!」

「さらにあの服の胸に付いた軍の紋章は、服の防御力を鋼鉄の鎧並に上げている。だから、軽くて動きやすい恰好でいいんだ」

「すごすぎるのじゃ。この世界の軍隊は進んでおるのじゃな」

「いや、ここの国の軍は特別強くて装備も上等だが、周辺国はそうでもないようだ。それでこの国はあちこちを攻めて大きくなったものの、いかんせん文官が足りずに統治がうまくいかず、これ以上外征できずにいるそうだ。そして、ここのような王都から遠い町は治安があまりよくないらしい」

「あの兵はどうしてこの町に来ているのじゃ?」

「治安維持のためとのことだか、実際は兵の息抜きをさせるためらしい」

「息抜きとは何じゃ?」

「たいして悪くない奴を取り締まって金品を巻き上げたり、酌をしろとか言って女性を無理やり連れて行くとかな」

「なんと!許せんのじゃ!」

「心配するな、シュリナはきちんと守ってやる」

「旦那様が頼もしくて良かったのじゃ」

と嬉しそうなシュリナ。


「だがの、いくらアキラでも、あんな武器を持った相手に囲まれてはただではすまぬじゃろう?」

「そういうのには慣れている。狙撃とかで遠距離から害をなそうとする相手や、隠し武器で至近距離から不意討ちしてくる相手よりはマシだな」

「さすが元勇者なのじゃ。しかし今言ったような暗殺者はどうするのじゃ?」

「今は特に敵とか居ないから大丈夫だろうがが、念のためスキルで警戒をしている」

「レベル1の索敵で、どこまでできるのじゃ?」

「いや、それではたいしたことはできない。しかし、俺にはいくつかのパッシブスキルがある」

「なんじゃと?」


アキラは条件で抽出したスキルの一部を「スキル公開」でシュリナに見せる。


スキル(『パッシブ』による抽出)

 ムキムキ(パッシブ) 狙撃警戒。不意打ち対応。

 モリモリ(パッシブ) 自己回復。時間によるステータス上昇。

 バキバキ(パッシブ) ***見せられないよ***

 ※同時使用不可


「こんなふうにだな」

「もう驚いて、あきれるのを通り越して慣れたのじゃ。それであの時の『状態 ムキムキ』は周囲を警戒しておったのじゃな」

「レベルが1になったから、安全のためには異世界に来る前の能力を使うしかなくてな」

「アキラはレベル1でもすごく強いのじゃな」

「いや、それでも決定的な攻撃力や殲滅能力が無くなってしまったからな」

「ここではそんなに無理をしなくていいのじゃ。ヒノと3人で楽しい冒険をするのじゃ」


ついつい勇者らしくあらねばと思っていたアキラにとって、救われた気のする一言だった。

だが、それを照れくさく感じたアキラは、心の中でシュリナに感謝をしておくことにした。



「さて、屋台に行くか。おっ、焼き鳥か。これはうまそうだ」

「わらわは全種類一本ずつ食べたいのじゃ」

「俺はささみと胸肉だけでいい」


『ぼくもたべたいなー』


「ん?」

「今、ヒノの声が聞こえたのじゃ」

「よし、甘いタレのかかっているつくねを余分にもらおう」


二人は焼き鳥を買ってから、人目の付かない建物の影に行くと手をつないだ。


『わーい!』

ヒノが目の前に現れる。


「おお?!」

「なんと?!」


ヒノの姿がぼんやりしているのではなく、きちんとした実体のある姿になっている。

手を伸ばしてみると、ちゃんと触れることが出来た。


「おお、ヒノに触れるのじゃ」

『めがみの、おねえさんが、まいにちすこしだけ、ものにさわれるよって』

「少しだけじゃと?」

「よし、ステータスを見てみよう」


ヒノ

 スキル 実体化 レベル1 1日3回 各10分。残9分20秒

 状態 魂牢(条件付きで一時解放)


「俺たちが手をつなぐとヒノが姿を見せ、このスキルで一時的に魂牢から解放されて実体になれるというわけか」

「すごいのじゃ!でも、10分とか短すぎるのじゃ!」

「スキルのレベルがあるから、レベルが上がれば時間が増えると思うぞ。それに実体化してしまえば、俺たちが手を繋いでなくても大丈夫みたいだな」

「それなら、がんばってレベルを上げてほしいのじゃ。わらわもアキラも、レベルが上がらないからの」


その話を聞きながら、ヒノはモグモグとつくねをたべていた。


『おいしーい!ヒノ、なにかをたべるのって、はじめてだよ!』


「そうじゃった。生まれてすぐにあんな使い方をしてしまって…すまなんだのじゃ」

『まあま、ヒノはしあわせだよ』

「ヒノおー」

ぎゅっとヒノを抱きしめるシュリナ。

その腕の中で、ヒノは透き通っていき、消えてしまった。

すぐにアキラがシュリナの手を取り、ぼんやりとした姿のヒノが現れる。


『えへへ、きえちゃったねー』

「もう、ヒノはかわいすぎるのじゃ。よし、決めたのじゃ。すぐにでもヒノを誕生させるのじゃ!」

「あわてるな。物事には順番がある。この儀式は道具と準備が必要なだけではなく、体に負担がかかる」


体から魂を取り出して1つにする儀式を、低いステータスで行っては成功率が悪く、体を壊すなどの危険も伴うのだ。


「そうじゃの。こんなちんまい体ではまだ生めそうにないの」


そしてなにやら勘違いしているシュリナ。


「レベルが上がらなくても、技を鍛えたり、体が成長することでステータスがあがる。だから、大丈夫だ」

「がんばって成長して、ぼんきゅぼんになるのじゃ」


二十歳でその体型なのだから、あと何年かかることやら。


「女性向けの筋肉のつけ方も教えられるが」

「ムキムキはいやなのじゃー!」


ぎゅっと細い体をだきしめるようにして身構えるシュリナ。


「いや、筋力は上がるが、見た目には変わらない」

「でも胸とか固くなるのじゃろ?」

「鍛える場所と程度を選べばいい。あと、腰を細くしたりもできるぞ」

「なんじゃと?」


自分の腰が筒型であることにコンプレックスがあったシュリナはすぐに食いついた。


「やりたいのじゃ!」

「わかった。これから寝る前とかの空き時間で教えよう。さて、」

「いよいよギルドに行くのじゃな」

「ああ、」


「キャーッ!」

若い女性らしい声が辺りに響く。


「悲鳴が聞こえたのじゃ」

シュリナがそう言ってアキラを見ると、アキラはすでに声のする方に向かって駆け出していた。

「待つのじゃ!わらわも、わふっ」

追いかけようとしたシュリナは急に戻ってきたアキラのお腹にぶつかり抱き止められた。


「悪い、いつものくせで一人で見に行ってしまった。シュリナも来い」

「わかったのじゃ!」

アキラが自分を守ってくれる、必要としてくれることを嬉しく思うシュリナ。


そして声がした所に行くと、折れた剣を持って地面にへたり込んでいる女騎士と、そこににじり寄る豚の頭をした魔物がいた。



「オーク、いや、ジェネラルオークじゃと?!」

「こんな町中に居るはずがない。誰かが連れてきたのか」


すると百メートル位離れた所に居る商人が、

「すまねえ、運んでいる最中の魔獣玉まじゅうぎょくを割ってちまったんだ!中に入れてあったそいつが逃げ出して、誰か助けてくれ!」

と説明する。

どうやら魔獣玉とは、モンスターを封印しておけるアイテムのようだ。


「軍人たちはどうしたのじゃ?」

「そこに」

商人が指差した先には軍人たちが積み上がっていた。


「くっ、殺されてたまるものか!」

剣を折られた女騎士は魔法を放つが、その皮膚を貫けない。


「軍人たちは気絶していいるようだから、今のうちにやるか」

「とりあえず、わらわが話しかけてみるのじゃ」

魔獣や魔物と会話ができるシュリナがジェネラルオークに話し掛けてみるが、

「うが、うがが!」

「だめじゃ!こやつは相手を殺すことしか考えておらんのじゃ」

「なら倒すしかないな」

「アキラ、大丈夫かの?」

「今の俺の攻撃力では厳しいが、せっかくだから二人で倒すか」

「わらわは何をすればいいのじゃ?」

「闇魔法の目眩ましに関するものは使えるか?」

「レベル1じゃが相手の頭の回りに黒い霧を出す『ダークミスト』が使えるのじゃ。射程は5メートルしかないのじゃが」

「十分だ。俺の後ろに隠れながら付いてきて、射程に入ったらぶちかませ」

「わかったのじゃ!」


ジェネラルオークに向かって駆け出すアキラと、すぐ後ろに付いていくシュリナ。


「今じゃ『ダークミスト』!」

射程に入り魔法を唱えたシュリナだったが、ジェネラルオークは頭を素早くふるってかわす。

ダークミストは空中で闇を撒き散らし消えた。


「しまったのじゃ!」

「いや、それでいい」

アキラはジェネラルオークが魔法をかわした動きを読んでおり、その頭に両手で取りついていた。


「はあっ!」

そして魔法をかわすために素早く動いたジェネラルオークの力を利用し、頭をひねる。

「ウガー!」

しかしそれでも太く強いジェネラルオークの首が容易く折れることはなかった、はずだった。


ゴキ


鈍い音がしてジェネラルオークの首があらぬ方向に曲がった。

白目を剥き、崩れ落ちるジェネラルオーク。


「おお!やったのじゃ!」

「よし、撤収だ」

オークから離れ、シュリナをかかえると、さっさとその場を離れるアキラ。


「お礼も聞かずに行くのかの?」

「知らない場所であまり目立つべきじゃないだろ」

「それもそうじゃな」

「しかし、やっぱりレベル1では相手の力を利用しても、まだ折るには足りなかったな」

「でも、先程は見事に首を折ったではないか」

「あれは折った訳じゃない。関節をはずしたんだ」

「なんじゃと?」

「俺は相手の体に長く触れているほど、その筋肉の付きかた、筋や関節の様子など、様々な体の情報がわかる。それでそれほど力を入れずに相手の首の関節を外す方法もわかったのさ」

「それもスキルかの?」

「いや、俺の世界でつちかった技術だ」

「すごいのじゃな。ん?ちょっと待つのじゃ」

「どうした?」

「今、アキラはわらわを抱えておるのじゃな?ということは、わ、ダメなのじゃ、わらわを放すのじゃ!」


そう言ってジタバタし始めるシュリナ。


「わらわの全てがアキラに見られてしまうのじゃ!だめなのじゃ!」

「いや、わかろうとしなければわからないから、心配するな」

「でも、わかることもできるということじゃな?」

「…誓って、シュリナのことを勝手にわかろうとはしないから」

「即答じゃないのじゃ。怪しいのじゃ」

「う、すまん」

「嘘なのじゃ。いつものお返しなのじゃ。わらわは、アキラを信じておるのじゃから」

「あ、ああ。ありがとう」



「じゃがのう。」


シュリナはウィンクをしてこう言った。


「お互いのことはは少しずつ理解していくものじゃろう?」

読んでいただきありがとうございました。


次は10月19日土曜日22時更新です。

なお、ヒノたち以外の話である「幕間」は、それまでに更新するかもしれません。

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