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第26話 神殺しの『激竜走団』と次元喰い

火炎ライジャー再び!


令和2年1月21日

誤字と言い回しを修正

アキラは最高神代理エリオスをドアの外に連れ出して治療させようとしたが、エリオスがそれを拒否する。


「だ、だめです。ここを出ては、最高神の力のほとんどが失われて、ヒノちゃんを助けられなく…なります」

「ヒノのことは何とかしてみせる。だが、今はシュリナと外で待っていてくれ」

「アキラよ。向こうは逃がしてくれる気はなさそうじゃぞ」


『激竜走団』の一人は、奇妙な形のクロスボウをこちらに向けて構えている。


「シュリナ、時間がない。手を貸せ」


アキラはシュリナの腕を掴むと、スキルを発動する。


「『筋肉大移動マッスルエントラスト』!」


ぬうっ!ぬぬぬぬっ!


見る間にシュリナが筋肉質になっていく。

逆にアキラの体がかなりしぼんでしまう。


「ななななな、なんじゃこれはっ!わらわがマッチョにっ!」

「ぎゃははは」

「なんだそりゃあ!」


『激竜走団』のメンバーも腹を抱えて笑っている。


「その力でエリオスを連れて戻れ」

「そんなことしなくても…わ、わかったのじゃ!」


シュリナはエリオスを担ぐと扉から出ようとする。


「おっと、逃がさねえぜ」


ビュン!


クロスボウの弓の音は一つ。

しかし、矢はアキラとシュリナたちの周囲に無数に浮かび、一気に向かってきた。


「バスターレオ!使わせてもらうぞ!」


前の世界で戦った相手、スライムマスターのバスターレオからもらった『スライム玉』を異次元箱から取り出すと、全ての矢がそのスライムに向けて軌道を変え、突き刺さる。


「ちっ、パーティ扱いのヘイト持ちスライムだと?」


クロスボウ使いは悔しそうに舌打ちをする。


先ほどの技は絶対防御不能のチート技であり、狙ったパーティメンバーの誰かに刺さるまで止まらない。

しかも、その命が奪われた場合は貫通して次の相手を狙う。


この50センチほどのスライムの玉は、その矢をすべて受け切ってもなお、そこに存在していた。


「だが、逃がさん」


血の滴る剣を持った男が瞬間移動でシュリナの前に現れる。


「読んでおったのじゃ!『時空裂破撃』!」


シュリナは空中に拳を突き出し、空間を振るわせ、転移した直後の男の体勢を崩させる。


「このくらいで…うぐっ!」


いつの間にか背後に回っていたアキラが男を羽交い絞めにしている。


「一瞬の隙が命取りだ。『帝王九十九折』!」


バキゴキガキ!


全身の骨という骨が折られ…次の瞬間、男は剣を横に振りぬいた。


「痛くもねえな。俺は不死身なんだよ」

「馬鹿か、アイロス!逃げられたぞ!」

「なにっ?!」


アキラは剣使いのアイロスを倒せるとわかってやったのではない。

わずかでも時間を稼ぐために、殺傷力よりも治癒時間がわずかにでも長い技を選んだのだ。


バタン。


そして扉は閉じられた。


「ちっ、神の力以外ではこちらから開かねえな。仕方ねえ。憂さ晴らしにこのしぼんだマッチョおっさんを八つ裂きにするか」

「アイロス、殺すなよ。心配して向こうから開けさせたところで、そいつらの目の前で殺せ」

「わかったぜ、ガイゼン」

「ゼンウはさっさとそのスライムを仕留めておけ!」

「わかったよ」


ガイゼンと言われた男がリーダー格らしく、その手には槍らしきものを持っている。

そして弓使いのゼンウの三人が『激竜走団』のメンバーというわけだ。


「そいつは借り物だから困るな」


素早くスライムを異次元箱に収納するアキラ。


「貴様の異次元箱は生き物も入るのか?」

「答える必要はない」


たいていの異次元箱の例にもれず、アキラの異次元箱に生物は入れられない。


しかしこのスライムは異次元箱に入れられる瞬間に『物体化』するのだ。


「しかし、あの女にてめえの筋肉ちからを分け与えて、相当弱くなったんじゃねーか?」

「アイロス、お前ひとりで十分だろ?」

「ああ、当然だ」


アキラの前に立った剣使いのアイロスは血で染まった剣を構える。


「この剣は常に血が滴っていないと不機嫌になるからよ、その体、血まみれにしてやるぜっ!」


振り下ろしてくる剣。


しかし、その剣は周囲に幻影のような剣を伴い、複数の剣撃となって襲い掛かる。

アキラはその残像を含めて全てをかわす。


「一振りごとに倍加する無限剣撃。よけきれるものかよっ!」


がしっ!


アキラは一気に踏み込みその剣の根元を掴む。


「ほおお。考えたな。だがな!」


幻影の剣はアキラに向けて刃を向ける。


「幻影の部分だけでも動くんだぜ!」


バキイ!


何かが砕けた音と共に、全ての幻影が消え去った。


「剣の柄を握りつぶしただと?」

「はあっ!」


アキラの繰り出した拳をバックステップでかわすアイロス。

その手の中の剣は砕かれたはずなのに、すでに元通りに戻っている。


「なんだコイツ?すごく強いかと思えば、今の攻撃みたいに全然大したことがなかったりする。どうなっているんだ?」

「そいつは筋肉を失ったせいで、攻撃力が下がっているんじゃないのか?」

「ゼンウの言う通りかもな。けっ、つまらん」

「じゃあ、今度は俺にやらせろ!」


ゼンウはクロスボウを構えると、今度は赤い矢をつがえた。


「苦しんでのたうち回れや!」


ビュン!


先ほどと同じように無数の矢がアキラの周囲を埋め尽くすと、一気に向かってきた。


「ぐああああっ!」


アキラの全身に矢が付き立つと、そのままアキラは倒れて動かなくなった。


「おい、ゼンウ。そいつの生命反応が無いぞ」

「ちょっと、待てよ!おい!なんだよ!腕だけで受け止めるとかできただろうよ!なんで全身で受けて死んじまうんだよ!それじゃあ面白くねえだろうが!」


この赤い矢は『炎の竜』であり、相手の体に潜り込んで高熱で体内から焼き尽くす。

だからどこで受け止めても待っているのは『死』だけである。


しかし、この性格が悪いゼンウは、それをさらに改良し、相手に『熱の耐性』を与えつつ、体を炎が蹂躙する苦しみだけを受けるようにしてあったのだ。


「待て、コイツがただ死ぬとは限らないだろ。擬態じゃないか?」

「いや、復活の予兆はないぞ」


ビキ


「ん?なんだ?」


ガラガラガラ!


アキラの上で空間が割れて、中から大量のアイテムが降り注いだ。


「死んで異次元箱が開いたのか!」

「なんて量だ!こいつ、埋まっちまいやがったぞ!」

「俺が吹き飛ばしてやる」


ガイゼンは『天撃槍』を構えると、アイテムの山めがけて振りぬいた。


がしいっ!


その穂先が何者かによって受け止められる。


「いつの間に?!」


そこに立っていたのはアキラ。

ただし、先ほどのしぼんだ体よりもさらに貧相な、いや、言うなれば細マッチョとも言うべき体形。


「あの状態から生き返っただと?」

「それならあの矢が体を駆け巡っているはずだ!」

「アイロス、ゼンウ、そいつは別人…いや、本人だと?!」


相手の魂の状況を見ることができるガイゼンは驚愕した。


さきほどのアキラの魂が、その体に移っている。


「久しぶりの機械体メタルボディだな」


アキラは変身キーをブレスに差し込む。


「『超鋼変身ギガメタルチェンジ』!!」


アキラの体が銀色に輝き、そこに現れたのは、黄色いマスクの戦士だった。


「火炎ライジャーイエロー!爆誕!」


「ヒーローだと?」

「こういう変身する奴は久しぶりだぜ!俺がやる!」

「おまえばっかじゃねーか!」


あきれながらもアイロスに任せるゼンウ。


「心配するなすぐにお前の番だ」


アキラは向かってきたアイロスに向けて、拳を繰り出す。


「『ライジャーパンチ』!」

「効かねえな!俺の無限の剣撃を…」

「『ライジャー百裂パンチ』!!」

「おぼうっ!」


剣の幻影を増やすよりも早く100もの拳に全身を打たれ、アイロスは地面に転がった。


「ざまあねえなアイロス!よし俺の…」

「『ライジャーフレイムアロー・フルボディ』!」


アキラの全身から千の炎の矢が飛び出し、その全てがゼンウを一瞬で射貫く。


「お、おぼう…」

「油断するからだ!」

「お前がな」

「あぐっ!」


ガイゼンの体もアキラの蹴りで天高く飛ばされていた。


「ふう。驚いたぜ」

「そうだな。へへへ」


無傷になって立ち上がるアイロスとゼンウ。


すたっ。


地面に降り立ったガイゼンもまったくのノーダメージだった。


「俺たちが不死身だということに気づいているのだろう?どうして必殺技を出さない?不死身を滅ぼすような技を出そうとしない?」

「お前たちにそのような技など必要ない」


そしてその戦いは長引いた。


おそらく、一年は続いただろう。


「おかしいぞ、いくらなんでもおかしい」

「ああ。いくら俺たちが不死身でも、あいつがあんなに戦えるわけがない」

「あいつも不死身だというのか?」

「いや、すでにあいつを数千回は殺している!」

「一体どうなっているんだ?!」


そして再びアキラが目の前に迫ってきた。


「どうした?俺はまだやり足りないぞ」

「くそおっ!」

「今度こそ消滅させてやる!不死身でも消滅する技でな!」

「馬鹿野郎!うかつに消滅技を使うな!そいつに利用されたらどうする!」

「まさかそれが狙いか!」







「アキラよ」

「おう、蘇生したばかりだからちょっと休ませてくれ」

「わらわはまだ理解が追い付いておらんのじゃ。いったい、どうなったのじゃ?」

「そうだな、シュリナとの『筋肉会話』では少ししか情報を伝えられなかったからな」


アキラが自分の筋肉を犠牲にしてまでシュリナをマッチョにしたのは、『激竜走団』に知られずに『筋肉会話』で頼みごとをするためだった。


『すぐに行くから女神を連れて逃げろ。こいつらに勝ってはいけない』


シュリナにはこれだけを伝えるのがやっとだったのだ。


「今、この水晶玉のようなものの中で、あいつらは戦っている」


アキラの手の上にあるのは一見普通の水晶玉。


しかし、そこにはアキラと戦う『激竜走団』の姿があった。


「俺が死に異次元箱が壊れた瞬間に発動する『次元封印術』。この世界と全く同じ世界がこの中にあり、あいつらはそこで俺の複製と戦い続ける」

「どうしてそんな面倒なことをしたのじゃ?アキラであれば勝てたのではないか?」

「こいつらは『次元喰い』の尖兵だ。自覚はないだろうがな」

「『次元喰い』じゃと?」


『次元喰い』はこの世界、いや、その世界の集まった『次元』そのものを喰らう怪物的存在だ。


世界を救う力を持ったものでも、ほぼ倒す手段はない。


「こいつらは不死身だが、何らかの手段で行動不能になると、次元喰いがそいつらごとその次元を喰らう。次元喰いはそういった『強さ』を持っている次元を喰いたいらしいからな」

「アキラはどうしてそんなに詳しいのじゃ?」

「初めてじゃないからな。あの冒険者証の『Z』の表記で言うと、三度目に世界を救ったという時になるか。あの時、俺は自分の世界を、宇宙を、そしてその次元を救った」

「想像もつかないのじゃ」


宇宙という言葉だけでも想像を超える広さだ。

それ以上のものを救うなんて、人間でできるのだろうか?


「しかしアキラよ。この中で戦いが終わったらどうなるのじゃ?あるいは、自分たちがどういう状況か気づいたら…」

「気づけない。なぜなら、この世界とまったく同じ世界がここには入っている。だから、仮に俺を倒しても、その中で別の誰かと戦うことになるだろう。だから、そうだな、百年は大丈夫だろう」

「百年経ったらどうなるのじゃ?」

「この中の世界のすべてを滅ぼしたときに、これが割れて外に出てくる」

「大変なのじゃ!」

「だから、この水晶玉を次元の外に放り出さないといけない。そうすれば、次元を超えられない尖兵は水晶玉から飛び出した瞬間に消滅する」


アキラは水晶玉を異次元箱にしまい込んだ。


「あいにく、今の俺には次元を超える手段はない。だから、どこかで頼むしかないな」

「誰にじゃ?」

「俺にこの水晶玉を託してくれた娘だ」

「娘…可愛い娘かの?」

「そうだな、可愛い娘だ」

「わらわよりか?」

「ん?比べるのは難しいな。自分の妻と娘を比較などできんだろ」

「なんじゃと?!」


やっと『娘』の意味が分かって驚くシュリナ。


「おぬし、娘がおったのか!」

「世間一般に言う娘とはちょっと違うから言わなかったが、一応娘ということになるのだろうな」

「アキラよ、その話はまたあとで詳しく教えるのじゃ…いやいや、簡潔に教えるのじゃ」

「俺の妻になったのはシュリナだけだ。娘は次元喰いと同じレベルの存在だから、まず会えない」


「「「ぶっ!」」」


向こうからやってきたマーシャとカナデとエリオスが盛大に噴出した。


「アキラ様、もしやあなた様はものすごく偉大な方なのですか?」

「カナデ、心配するな。その娘を生んだ『彼女』が特別だっただけだ」

「その『彼女』はどうしたのじゃ?」

「跡継ぎになる娘を生んで消滅した」

「そうじゃったのか…。すまぬ。要らぬことを聞いたのじゃ」

「そんなことはない。隠していた俺も悪かった。これからはきちんと教えよう」

「それで実は恋人が百人居たとか、娘が千人居たとか言うのでないのか?」


にやりとしてそういうシュリナ。


「それは無い」

「ならいいのじゃ」

「はあ、何だかすごい話だったみたいだね」

「とりあえず、最初から話そう」


あちこち壊れてしまった天界で、アキラは再び先ほどシュリナに言った説明を始めるのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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次回は1月17日金曜日18時更新です。

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