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第24話 ここから一気にラスボスまで行こうか。その前にやることがあるのじゃ。

必要なことなのでやらないとね。

3層に上がった。


ここも今までの階層同様とてつもなく広いが、熱男筋肉列車にかかれば大した広さでもない。


「アキラのおっさん、この観測データって何?」


列車やレッカイオーの操作に慣れてきたマーシャがディスプレイに上がっている『観測データ』を指差す。


「ああ、これは周辺の空間のゆがみを測定しているんだ。不意打ちに対応するだけではなく、次の層に移動したときの座標なども計測しているぞ」

「それって、もしかしてうまくやれば直接10層に行けるってこと?」

「理論上はできるかもしれないが、そもそも超空間航行できる装置は積んでいない」

「なあんだ」


アキラが宇宙に出ていた時、超空間航行装置によるワープで移動していたから、地球に戻ればそういう装置はあるのだが、異世界に転移するときには位置が離れすぎていて持ってこれなかった。


「材料と時間が有れば作れるが、どちらもないからな」

「何が必要で、どのくらい時間がかかるの?」

「この世界に有るか無いかもわからないものだ。フレイムエメラルドと単分子オイル、2倍圧縮で脆度が…」

「ちょい待ち!たくさんある?」

「50品目くらい」

「聞き間違えるといけないから、書いて」


それを聞いたアキラは操作パネルに手を滑らせる。


「これだ」

「何だ、設計図とかあるじゃん!」

「でもさっき言ったやつだけでもかなり難易度高いだろ?」

「そうだね、ボクの世界でも聞いたことが無いのもあるし。そもそもフレイムエメラルドって何?赤いエメラルドならあるけど、あれはレッドエメラルドって言うよ」

「ちょっと待て」


アキラは異次元箱から小さい金属のケースを1つ取り出した。


「これだ」


ケースを開けると、中には真っ赤な宝石があった。

その赤さはまるで赤熱した鉄の様だ。


「これ、熱出してない?」

「だから特別なケースに入れてある。おーい、カナデ」

「はい、アキラ様」

「カップに水を入れて持ってきてくれ」

「かしこまりました」


カナデは言われたとおりの物を2つ持ってくる。

1つではないのがカナデの気の付くところだ。


「いいか、見ていろ」


ケースを傾けて水の中に宝石を落とす。


シュウウウウウウウウウッ!


「うわっ!あっ!もう水が沸騰した!」

「水の量が少ないからな」

「お湯の中を見てみろ」

「宝石の色が緑になっている?」

「それがフレイムエメラルドと言われる所以ゆえんだ」


フレイムエメラルドは金属のように赤熱化している宝石で、熱を奪うとエメラルド本来の色である緑色になる。


アキラの世界の宇宙の産物で、この世界ではまだ見つかっていない。


「見ている間にお湯が沸騰して無くなっていくね。ねえ、こっちにも入れさせて」

「いいぞ」


カップが空になってまた赤色に戻ったエメラルドを、カップを傾けてもう一つのカップの水の中に入れる。


シュウウウウウウウウウッ!


「あっ、シュリナさん!」

「なに?そんな気配は?」


振り向くアキラ。

マーシャはその隙に、熱に強い触手を出してフレイムエメラルドを沸いたお湯から取り出してケースに戻す。


「これで沸いたお湯でコーヒーとか飲めるね」

「いや、それを取り出さないと…あれ?いつの間に?スプーンくらいじゃ曲がってしまうんだぞ」

「ふふふ、実家の秘伝だよ。なんてね」

「すごいな、マーシャは」

「し、信じるの?」


むしろマーシャがアキラの素直さに驚く。


「それではマーシャさん、このお湯でコーヒーを煎れてまいります」


立ち去るカナデと入れ替わりにシュリナがやってきた。


「アキラよ、何をしておるのじゃ」

「あれ?さっき来たんじゃなかったのか?」

「今来たところじゃ」

「マーシャ、シュリナが来るのが分かっていたのか?」

「う、うん、実家の秘伝で」


どんな秘伝だ。


「じゃあ、お二人でごゆっくりー」


気を利かしてマーシャはリビングに戻っていく。


操縦室にはアキラとシュリナ二人きり。


「アキラよ。もう待てないのじゃ!」


興奮気味のシュリナ。


「待て、まだだ。そんなに急いでも駄目だ」

「そんなこと言っていたら、ヒノが他の女性のお腹から生まれるかもしれないのじゃ!」

「これでも最速で移動しているから、それ以上無理は出来ないぞ」

「そっちの話ではないのじゃ!」


シュリナはアキラの腕に取りついた。


ぎゅううっ


「お、おい」

「ぬふふ。『当てているのじゃ』。言ってみたかったセリフなのじゃー」


嬉しそうに胸を押し当てているシュリナ。

借り物とはいえ『E』なのだ。


「じゃあ、なんだ?」

「旦那様は鈍感で困るのじゃ。もし天界にたどり着いてヒノとの結びつきを最高神クラスにしてもらったとしても、確率は五分という話じゃろ?」

「そうだな。だが、俺とシュリナなら」

「精神論はいいのじゃ!肉体論なのじゃ!」


何だ肉体論って。


「そもそもアキラとわらわが結婚して、妊娠したらヒノを授かれるはずなのじゃ」

「いや、それは結魂で認神され…あっ」


今更自分が以前に言っていたことの紛らわしさを思い出すアキラ。


「わらわのお腹にヒノが戻ってこられるようにしておけば確率は上がるはずなのじゃ」

「そ、それもそうだが」

「わらわの体はちんまいがもう20歳なのじゃ。それにほれ、ちゃんと胸もあるのじゃぞ」


ぷるんと胸を上下させる。


「いや、カナデやマーシャたちが」

「わらわは今、闇魔法を完璧に使えるのじゃ。だから、部屋に音や振動の漏れない魔法壁を張ることもできるのじゃ。…のう、ここまで女に言わすのかの?」


「今夜でいいのか?」

「いいのかではないのじゃ」

「今夜、俺のものになってくれ」

「わかったのじゃ。そ、それでじゃの…前払いが欲しいのじゃ?」

「こうか?」


むにゅ


「いきなり揉むでないわっ!あ、アキラ、おぬしそんなことをする男じゃったか?」

「すまん、いきなりで色々と混乱していた。許せ」

「キスに決まっておるのじゃ!今夜の手付けにキスをしてほしかったのじゃ!」


『キス?!』

きす?!』

『そういう魚もいるんだよね』

『そうですね、今夜は魚料理にしましょう』

『赤飯も炊いた方がいいかな?』

『そうですね』

「なああああっ」


カナデとマーシャの声は小声だったが、内容まで聞こえてしまい赤面するシュリナ。


「大声出したから、聞こえていたな」

「ううっ、不覚なのじゃ。恥ずかしくてリビングに戻れないのじゃ」

「それならここに居ろ。それと」


アキラがシュリナに顔を寄せてくる。


「ん、ムードが無いのはあきらめるのじゃ」


二人の唇が重なった。





「(小声で)恥ずかしいって、こっちもだよな」

「(小声で)でも、アキラ様と奥様がようやく結ばれるなんて嬉しいです」

「(小声で)寝る前にこの列車の後続車両だしておいてもらおうよ。万が一の見張りはそこでして」

「(小声で)そうですわね。ベッドはここにしかありませんもの」




そして3層のボス、4~9層のボスをなぎ倒して進み…これらはダイジェストでいこう。


「峰打ちパンチ!」

「レッカイオー峰打ち!」

「峰打ちチョップ!」

「レッカイオー峰打ち!」

「峰打ちキック!」

「レッカイオー峰打ち!」

「峰打ちコブラツイスト!」


生身で相手できる敵とレッカイオーで相手する敵が交互に出てきた結果がこうである。


「アキラのおっさん、さすがに関節技で峰打ちは無理があるよ」


どうせ無理だとわかっていても事務的につっこむマーシャ。


「それは俺も思った。『峰打ち』のスキルってすごいな」

「それでいいのかなー」



そして10層に入ったら夜になった


いや、急に真っ暗になった。


「アキラよ。さっきまで明るかったのに、どうして急に夜なのじゃ?」

「おそらく、ここは夜の階層だな。まだ時間的に夜じゃないから、ずっと真っ暗かもしれん」


真っ暗と言っても、明かりは灯せられる。しかし、その明かりがモンスターの標的にされかねない。


「ねえ、アキラのおっさん。ここまで一気に上がってきたから、休憩を兼ねてここでキャンプにしない?」

「そうだな。センサー付きの後続車両を出しておいたから、頼むぞ」

「では、マーシャさんと私はこれで失礼します」


そそくさと後続車両に移動していくカナデとマーシャ。


「いいいいよよよよよいよなのののじゃ」

「無理は…していないのだな。大丈夫だ、優しくする」

「うん、頼んだのじゃ」






翌日?っぽい。

なにしろ真っ暗。


朝かどうかもわからない。

とにかく目を覚ましたからシュリナは起きた。


「ん…良く寝たのじゃ」


シュリナの隣ではアキラが寝ている。


「夕べは色んな意味で死ぬかと思ったのじゃ。あのハンマーよりも恐ろしいと思ってしまったのじゃが、何とかなってよかったのじゃ。魔王の体の丈夫さに感謝すべきじゃの」

「すまなかったな」

「アキラ、起きたのかの?」

「ああ、おはよう」


アキラの唇にシュリナが自分の唇をそっと触れさせる。


「おはようのキスなのじゃ」

「さて、そろそろ二人を呼ぶか」


アキラが声をかけると、先頭車両に二人が戻ってきた。


「ねえ、いきなりだけど、一つだけ言っていい?」

「なんじゃ?恥ずかしいことを言うでないぞ」

「じゃあボクは言わないから、あれを見て」


マーシャが指をさした先、リビングの時計の短針は「11」を指していた。


「なんじゃ。まだ日付が変わっておらんのじゃな」

「それ、夜の11時じゃないよ」

「な?!」


二人が寝たのは夕方前である。

そしてこれは夜の11時ではなく、翌日の昼の11時だ。


「これならヒノは間違いなく戻ってこられそうだね」

「そうですわね」

「あわわわわわわ…のじゃーっ!」


わなわなと震えたあとに妙な叫び声をあげて後続車両に逃げ込んでいったシュリナ。


「それで、アキラのおっさんは疲れてないの?」

「いや、特にはな」

「アキラ様は鍛え方が違うのですわね。ふふ、これなら私も」


がんっ


カナデの頭にこぶしを落とすマーシャ。


「(小声で)今言うことじゃないだろ?もっとあとにしなよ」

「(小声で)別に第2夫人とか愛人でなくてもいいのです。奥様が妊娠中に私が処理・・させていただくような扱いで。それに、私は厳密には生物ではありませんので、妊娠しない体にもする体にもできますから」

「(小声で)そうなの?すごいな」

「(小声で)それにしてもマーシャさんはこういう話でも平気なのですね」

「(小声で)もらった知識にあったからな。勝手に覚えてるだけさ」

「(小声で)そのお母様からもらった知識って、意図的に取り出さないと見られないんじゃなかったんですか?」

「!」


「どうした、マーシャ。真っ赤だぞ」

「あああああ、アキラ、なんでもないからーっ!」


後続車両に逃げていくマーシャ。


「あれなら当分アキラ様に手は出さないですわね」

「何の話だ?」

「いえ。ところで、このあとどうされます?」

「そうだな。真っ暗でも進めるが、最悪の事態も考えないといけないな」

「最悪の事態?」


アキラはレーダーパネルを指差す。


そこには地形の画像が表示されていた。


「きちんと地形も見えますわね。これなら問題なく進めますわ」

「いや、この先の地形の色が赤で点滅しているだろ」

「はい」

「それはな、全部敵だ。それもおそらく1体の」

「えっ?!」


アキラは装備を身に着ける。


「シュリナとマーシャに伝えろ。ここは今までとはまるで違うとな」



3~9層は雑に飛ばしたんじゃない。

敵が弱すぎただけだ。


そしてアキラ達が強すぎただけだ。


でも、この10層は違う。


雑魚でも今までのボス以上の力を持っている。


果たして、無事に10層を攻略できるのか?!

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークとか感想とかいただけると嬉しいです(^ー^)♪


次回は12月27日金曜日18時更新です。

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