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第3話 シュリナのお菓子

町にたどり着いた二人は、中に入る前の準備と確認をします。

二人の関係の確認を。


追記

11月21日サブタイトルに話数以外の言葉も付けました。

山道を進み街道に出て、しばらく行くと町が見えた。

ここでアキラとシュリナがつないでいた手を放し、ヒノが姿を消した。


「どうやら町についたな。見た感じ、前に居た世界の人間の町と似ているな」

「わらわはあまり人間の町は知らないのじゃが、魔族の住む町とも似ている気がするのじゃ」

「そうなのか?」

「入口が地上と水路と城壁の上にあるのじゃ。飛ぶ魔族は城壁の上に、水棲魔族は水路沿いに移動するから、そうなっておるのじゃ」

「なるほど」

「アキラよ、おぬしは魔王城に来るまでに、あちこちの魔族の町を回ったのではないのかの?」

「ああ。だが、人間が襲っているところや、俺が近づいたと知って臨戦態勢だったところもあったから、門で受付をしている様子なんて出くわさなかったな」

「いくら魔族に理解があっても、おぬしがあんなハンマーで潰して回っていると聞いたら、臨戦態勢にもなるのじゃ」


そう言われて苦笑しながら頭をかくアキラ。


「そういえば、聖槌エクシードカリビアーンを向こうに置いてきたままだったな」

「それはお主の変形能力で変えた聖剣エクスカリバーじゃろう?なぜそんな名前にしたのじゃ?」

「聖剣エクスカリバーには意思が有った」

「うむ、それは聞いたことがあるのじゃ」

「それはまさに、聖騎士と言えるような気高さを持った剣だった」

「ふむふむ」

「しかし、ある敵はあまりにも固く強く、文字通り刃が立たなかった」

「それで大槌に変えたのじゃな」

「ああ。それが初めて聖剣を他の武器に変えた瞬間だった」

「ちなみに他の武器はどのように変えておったのじゃ?」

「ああ。槍とナイフを弓矢にして遠くの敵を倒したり、棍棒を長い鎖にして壁を登ったりするのに使ったな」

「それでその聖剣に何があったのじゃ?」

「聖剣を大槌に変えて敵を叩き潰した時、エクスカリバーはオネエになった」

「は?」




「こうなったらお前を大槌にして敵を叩き潰すしかない」

『わかった。頼むぞアキラ!』

「まかせろ!武器変形!」

『お、おおおおおおおおっ!おわわわわあーー』

「大丈夫か?エクスカリバー?もしかして痛かったか?」

『だ、大丈夫だわ』

「だわ?」

『早く、あいつを叩き潰して、ねっ!』

「あ、ああ、くらえっ!」


ドグワシャッ!!


『この感触と音。いいわあ、とれびあーーーん』

「おい、エクスカリバー、大丈夫か?とこか変なところをぶつけたのか?」

『大丈夫よ。そ・れ・よ・り、これからアタシのことは聖槌エクシードカリビアーンと呼んでちょうだい』

「は?」

「生まれ変わったアタシの力、魅せてあげるわ!」



「ということがあったのだ。それ以来、あいつは聖槌から戻るのを拒んだため、そのままの状態で敵を打ち倒してきた」

「まさか知性を持った武器を変形させると、精神まで変わってしまうとは」

「だからヒノには変形は使わないでおこうと思う」

「あたりまえじゃ!」


可愛いヒノがそんな変態になっては一大事である。


「とりあえず、それを置いてこれたのは正解じゃったの。ヒノの教育に悪いのじゃ」

「俺もそう思う。そういえば、シュリナも魔王の武器を持っていたのだろう?こちらには持ってきていないか?」

「そうじゃ、異空間箱にしまったままじゃった。異次元箱はこの世界に転移しても使えるのじゃろうか?」

「ここで使えても、転移して中身がちゃんと残っているかどうかが問題だな。よし、俺も試してみよう」


どさどさどさどさ

どさどさどさどさ


「問題なく使えるの」

「中身もそのままだったみたいだな」


アキラの異次元箱には、主に冒険に必要な予備の武器やポーション、キャンプ用具、食料、お金などを収納してあった。

一方、シュリナが持っていたのは魔王の剣以外、多くがお菓子の入った袋だった。


「だって、お菓子はあまり食べるなって、リリカが言うのじゃ!」

「出されたおやつを食べずにしまっておいたのか?」

「これはわらわが作ったのじゃ」

「そうなのか?じゃあ、ひとつもらっていいか?」

「べ、別に好きに食べればいいのじゃ」

少し赤くなって、シュリナはアキラにクッキーを差し出す。

赤い実の入った、可愛らしいハート形のクッキーだ。


「いい匂いだな…おおっ、うまい!」

「本当かの?!」

褒められて嬉しそうにするシュリナ。

「ああ、これはうまい。すごいな。これはプロレベルじゃないか?」

「わらわにかかれば、かようなお菓子くらい、楽勝なのじゃ」


ふんぞりかえるシュリナ。

それでアキラは気づいたが、シュリナもわずかに胸はあるようだ。

体を反らせばわかる程度には。


「(あんまり子ども扱いはしないでおいてやるか)」

「ん?どうかしたかの?」


反射的に目線をシュリナの胸からそらし、とっさに話を振ってごまかす。


「しかしこっそり台所でお菓子なんか作っていても、リリカっていうのにばれるたりしたんじゃないか?」

「台所?」

「違うのか?」

「これはわらわの魔法じゃ。自室で闇魔法を使ってお菓子を作ったのじゃ」

「?!」


「魅了とか毒とか、いろいろな効果のある食べ物を作る闇魔法があるのじゃよ。その配合などは自由に調整できるので、特殊な効果だけを無くせば、単においしいお菓子が出来るというわけじゃの」

「いや、それは俺の知っている闇魔法と違う。むしろ錬金術寄りだ」

「この本に書いてあったのじゃ」


異次元箱から出した書籍の表紙には

『彼の心を支配する闇魔法のお菓子~ゲヘナ・バレンタイン著~』

と書いてある。


「バレンタインとか、どう考えても愛の…」

「何か違うかの?」

「いや、間違ってはないが…」


少なくともおいしいは正義だ。間違いない。



「ともあれ、町に入るかの」

「待て、まず俺たちの関係を決めておくぞ」

「そ、そ、そ、そ、それは、ヒノもわらわたちのことをああやって言っておるから、ふう、ふうふう…」

「それなら夫婦でいいな」

「即答じゃとっ?!」

「たまにヒノも呼び出すからな。夫婦とその子供ってほうがいいだろ。実際、魔族で20歳なら、結婚していて5歳の子どもが居ることもありえるんだろ?」

「確かに魔族は12歳でも結婚できるのじゃ。わらわの体がこんなふうなのは、その、いわゆる『個体差』なのじゃが。純魔族は大人の姿になるまで成長してから、数百年成長が止まるのじゃからな。今のわらわは成長期なのじゃぞ」


必死に弁解するシュリナ。

しかしアキラは巨乳だの貧乳だので好きな人を決めることはなかった。

アキラは相手の「雰囲気」が気に入れば好きになるのだった。

そしてこうやって必死に自分のコンプレックスを弁解しているシュリナのことを、とても可愛らしいと思っていた。


「なら夫婦で問題ないな」

「良いのか?魔族の嫁じゃぞ」

「俺は元々異世界人だぞ。それにここはさらに別の世界だ」

「もしこの町が、魔族を敵と思うところだったらどうするのじゃ?」


するとアキラは異次元箱はから、魔法の兜を取り出した。


「とりあえず角はこの兜で隠しておけ。いや待て、このままではシュリナに似合わないな」


アキラは兜をこねるようにして変形させると、可愛らしい帽子を作った。

帽子には大きめの猫耳がついていて、そこに角が格納できるようになっている。


「アキラよ、おぬしは武器以外も変形できるのじゃな?」

「装備可能なものならたいていできるぞ。そうだ、これも使おう」


アキラはさらに予備で持っていた防具をいくつか取り出して、こねるように変形させ始めた。

「女性向けの動きやすい防具は、こんな感じかな」

「おお、案外アキラはセンスがあるのじゃな」

「それから、これを」


取り出したのは指輪。


「これはステータスを『偽装』できるアイテムだ。看破されても魔族と知られなくて済むし、レベル1だと侮られなくてすむ」

「わかったのじゃ。じゃが、装の指輪っていうのは、何だか嫌なのじゃ」


この関係が嘘のように感じられるから。


「違うのじゃ、そうじゃないのじゃ。ヒノのために仕方なくなのじゃ」

「ん?どうした?誰と話している?」

「何でもないのじゃが、でも指輪は嫌なのじゃ」

「わかった。じゃあ、これはペンダントにしよう」

「ありがとうなのじゃ」


偽装によって、シュリナのステータスの種族は「エルフ」になった。


魔族と同じく成人しても外見が幼いのが一般的で、シュリナくらいの見た目で結婚していても不思議ではないからだ。

とはいえ、マッチョな30過ぎのアキラに10歳にしか見えないシュリナでは親子に見られることの方が多いだろうが。


シュリナはもらった帽子をかぶり直すと、アキラの袖に取りついた。


「直接触れなければヒノはあらわれないのじゃな」

「そうみたいだな」

「くっついてもアキラが照れないのは、つまらぬのじゃ」

「照れてはないが、嬉しくはあるぞ」

「!」

真っ赤になるシュリナ。


「ずるいのじゃ!ずるいのじゃ!わらわばかり恥ずかしい思いをするのはずるいのじゃ!」

「はっはっはっ、次に期待しておくよ」

「目にもの見せてやるのじゃ」


その様子は、とても命を懸けた戦いが宿命付けられていた勇者と魔王とは思えないものであった。

読んでいただきありがとうございました。

明日は三連休連続更新最後の日です。

10月14日22時に更新いたします。

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